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短編『何も気にならなくなる薬』その153

「新聞紙」
「満員電車」
「白飯」

今回はこの三つ。
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満員電車の中、新聞紙を広げる男性。
とはいえそこは毎日の通勤から培ったのかうまい具合に折りたたんで読んでいる。
横目に入った記事の内容は「若者の白飯離れ」
〇〇離れという文句には聞き飽きた。
いわば、お笑い芸人の旬の過ぎた一発ギャグみたいなものだ。
しかし、言葉尻だけを摘み取ってその中身を見ないというのはそれこそ我々の方から離れてしまっていると言われても仕方がない。
確かに振り返ってみれば朝ご飯にパンを手にすることが多くなったのだろう。
買ってさえおけばすぐに食べられる。
パックご飯も簡単ではあるが、数分の違いがある。
朝ご飯を用意する。そうした習慣がなくなろうとしているのかもしれない。

ここで終わってしまえば私達は新聞紙という情報媒体によって思考を固められてしまう。
実際のところはどうだろう。私がそうなのであって、他の家庭では当たり前のように前の晩の夜にご飯を炊いて、朝ご飯を食べているかもしれない。
忙しいときはパン。時間のあるときはご飯。そうして使い分けている人もいるかもしれない。
疑えとまではいかないが、メディアというのは一部だ。全体ではない。それをさも世の中全体のように思わせようとするのだから情報というのは怖い。
だが、考えるきっかけにはなる。
上手に付き合いたいものだ。

美味しいご飯を食べます。