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前略プロフィールの思い出-女子の個人情報を根こそぎ得る

まだSNSという言葉が市民権獲得まで至らなかった頃、10代を中心に「前略プロフィール」(以下前略)というサイトが、SNSの役割を果たしていたかもしれない。

今後この先、誰にも言うことがないことを、供養がてらここに記しておく。

前略では、クラスの女子がこぞって自分のプロフィールを紹介していた。それも本名で。今ならメディア・リテラシー云々できつく指導されるはずなのだが、当時は大して大人から咎められず、個人情報ダダ漏れの状態が続いていた。

私は、さすがに個人情報を自分から漏らすのはいかがなものかと思い、前略を作っていなかった。しかし、本当はそれどころじゃなかった。というのも、女子の個人情報をかき集めることに悦びを感じ、必死だったのだ。ひたすら同級生のページ巡礼である。今から考えると、ただのキモいクソガキ だが、個人情報を垂れ流しているあいつらが悪いんだと、大義名分を作り、サーチ活動に勤しんでいた。ただ活動がキモく思えるだけで、不正アクセスでもなんでもないのである。本当にとても近しい友人数人も、同じくサーチに必死だったようで、いつ誰がどんな情報を更新したか、共有していたものだ。

前略に加え、chip!というサイト、decoo(デコーだと思っていたけど、デクーと読むっぽい)というサイト、そんな名前だったと思うけど、日記やリアルタイム(今で言うtwitterみたいなもの)も女子は頻繁に更新するので、きっちりと把握していた。また、友人リストとかいって、サイトに友達の前略と相互リンクさせていたので、芋づる式に情報を仕入れることができた。

いつ誰が誰と交際し始めた、どこにデートに行った、どの授業で誰がどんなことをしておもしろかった、休み時間に女子トイレで何を会話した、誰が部活で誰とけんかした、など、普通に生活していると知り得ないことを、いっぱい知った。

書いていて、なかなかのキモさだと思うものの、同じ経験をした男性は数多くいることと思う。エロの要素は皆無だったものの、普段知ることができないことを知るあの気持ちいい感覚を、メディア・リテラシーの重要性が以前より叫ばれるようになった今ではもう味わえないだろう。

人によっては、前略を通じて遠隔で恋人ができていた。私も前略を作れば、どこかの女の子と恋人になれたかもしれない。でも、おそらく、どこの誰ともわからない女の子に夢中になるがあまり、学業も近くにいる友達のこともないがしろにしていただろう。

さらに、こちらがたとえ未成年でも、相手も未成年であれば、その先に犯罪があったかもしれない。ヤンキー・半グレのグループなんかに絡まれる可能性もある。そう考えると、あの頃のように、相手にバレずに色々な情報を知ることに快感を得ていたあの頃が、一番無難で楽しかったのだと再確認した。

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