あるカーデザイナーのクルマ選び048
14th car
2011 Honda CRV
Modulo Aero 仕様 at London
グラファイトパール
リーマンショック後の影響で、ミラノのデザインスタジオを閉鎖することになり、私はイギリスのリサーチ部隊に合流し、中東やアフリカも含めた新市場の探索も含めた仕事でロンドンのオフィスで働くことになりました。
同じヨーロッパ内の引越とはいえ、家族共々の大移動には違いありませんでした。
ロンドンと言っても、私の通っていたオフィスはヒースロー空港の西のラングレー地域にあったので、ロンドンのダウンタウンからは離れていました。
住まいも子供達の学校を考慮し、ヒースロー空港の南のサリー州コバムという小さな街に一軒家を借りました。
そして、私の通勤用の車として貸与されたのがCRVでした。
イタリアで乗っていたCRVと同じ世代のマイナーチェンジ後のモデルでしたが、Moduloエアロパーツが装着され、専用色に塗装された欧州専用の特別仕様車でした。
イタリア時代と同じCRVかなと思っていたのに、私の好きな雰囲気の車が手元にやって来ましたので、とても満足でした。
ヨーロッパでのホンダの4輪車の販売シェアは微々たるものでした。
イギリスは生産拠点もあるので、少しはシェアも高かったですが、アメリカで経験したように多くのホンダ車を見かけることはなく、CRVの特別仕様車なんて、他には出会わない車でした。
イギリスはモーターウエイ(高速道路)も一般道も、結構流れているスピードは速く、高齢の御婦人でも、元気よく飛ばしていくのをよく目にしました。そして、総じて運転が上手いと思いました。
しっかり加速減速してメリハリのある運転をするので、周りで走っていても気持ちがいい感じでした。
一度、ロンドン南に位置する避暑地として有名なブライトンに向かう丘陵地の道で、ロールスロイスに乗った老夫婦に後ろから追いかけられ、道を譲った事がありました。
CRVより大きなボディのロールスの2ドアクーペ。それを操るロンドンのお金持ちと思しき老夫婦。まるで映画のワンシーンのように完璧過ぎるシチュエーション。
でも、ドライビングはキビキビ。まるで、「貧乏人は道を空けてくれたまえ」と車内では会話していたのではと思えました。
つづく