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幻術使い(詐欺、カルト)への対抗法

幻術使いとは

 詐欺師やカルトといった、他者を巧みに騙くらかして利益を得ようとする人間のことをそのように呼んでいます。またそのような規模が大きく法に抵触するようなものでなくとも、日常会話レベルでも幻術的な能力の高い人は居ます。このような連中への対抗法として、現時点で僕が考えていることを公開します。いくぞ!

幻術使いへの対抗法

その①:幻術使いは格上であると心得る

 まず、「人間の心を操るという領域において、相手は自分よりも圧倒的に格上である」と心得ることが何より大事です。よく言う「自分はあんなものに騙されないと思っている人ほど危険」という教えはまさにこのことを警告しています。そのため、本記事で「幻術使い」と呼んでいることもあまり良くないのかもしれません。「幻術なんて効かねえよ」とナメてはなりません。幻術だからこそ恐ろしい。見えていたものが見えなくなる。当然のことが当然でなくなる。相手のそのような能力への、ある種「敬意」のような気持ちを持つぐらいでちょうどいいと思います(人格と能力を切り離したうえで能力に敬意を持つ)。そのため、下に続く対抗法は、このことを忘れずに「ふむふむ、怖いねえ!」と読んでいただきたいです。

その②:手口a~かまして心を浮付かせてくる~

 幻術使いは、かましてこちらの心を浮付かせてきます。振り込め詐欺なんかでは「おたくの息子さんが事故を起こしまして」と言って、「驚き、恐怖、心配」のような感情を喚起するという形で心を浮付かせてくる。これは、「心が浮付いたとき、人間は正しい判断ができなくなる」というとても強力な法則を利用しています。自分の経験を参照してみると分かりやすいと思いますが、「先輩が、不機嫌そうにしながらおかしな要求をしてくる」といった状況で、あわあわしてつい従ってしまったことはないでしょうか?
 幻術使いはそのような人間の弱点を利用し、最終的な目的へ向かう動線の上に乗せてくるのです。心を浮付かせてくる方法ですが、他には、相手を威圧する、「損をしたくない」という感情を喚起するといったものもあります。「損をしたくない」については、「人間は報酬より損失を重く見る」という法則によるものです(損失回避の法則)。「これに乗り遅れたら後悔しますよ」といった言葉で浮付かせてくるのです。
 かまして心を浮付かせてくるというのは、幻術使いの鉄板の手口と言っていいです。実際の場面でこの辺に感付くのは少々訓練が必要かもしれませんが、慣れると「うぅん!?」という信号が体内から発せられることがあるかもしれません。「自分の心の状態をモニターする」という癖を身に付けると捗るかと思います。

その③:手口b~外部との接触を断つ~

 幻術使いが恐れていることの一つは、「外部と接触し、正気に戻られる」ことかと思います。カルトでは、濃厚な信者を育成する過程で、外部との関係を断つという手法がよく用いられます。カルトの共同生活の中へ参加させるといった強めの方法もあれば、「外部の奴らは間違ったことをあなたに吹き込むから」という理屈をつけて、家族と連絡を取らせないといったわりあい穏やかな方法もあります。振り込め詐欺なんかでは「ちょっと家族に相談してみますね」が急所だったりする。
 日常から、いろいろな人に相談をする癖をつけるのは良いことです。これは幻術使いに相対した場合に限らず、より広範囲で有効になるスタイルです。以下に紹介する本は、自殺率が全国一低い町、海部町(調査時。今は他の自治体と合併したそう)へ実地調査した結果わかったことをまとめたものです。この本の中で、海部町の教えとして「病は市に出せ」というものがあります。「病」はそのまま病気のみを指すのではなく、その人が抱えている悩み、問題の全体を指します。「市」は公の場ということです。要するに「困ったことがあったら吐き出せ、相談しろ」という意味になります。海部町は大らかな町で、町民全体に「困った人がいたら皆で助ける」「困ってる人のうわさ話をして楽しんだりしない」という健全な空気が共有されており、そのため「病は市に出せ」を安心して実践できていたそうです。

 幻術使いの話から逸れましたが、日ごろからあまり溜め込まずに周りに相談するという癖をつけると、デメリットよりメリットの方が上回るのではないかと思います。落とし穴としては、海部町で健全な空気が共有されていたということからもわかるとおり、まずい人に相談したらまずい結果も起こり得るというものがあり、これにはもちろん気を付けなければなりませんが、これに怯えすぎるとどんどん悪い結果へ進むことが多いと言えます。

その④:手口c~能動的な体験をさせる~

 教義に適う行動を、ターゲットに能動的に取らせるというのもカルトによくある手口の一つです。たとえば、それまでの人生で身に付けた常識、価値観等を大声で否定させる。教義がどのように正しいのかを作文させる。他者へ布教させる。このような行動を能動的に取らせるというのは、想像よりも大きな効果を持っています。
 若干、話として離れたものになりますが、「受動的な体験ではなく、自らの手足を動かした体験」の重大さがわかる例を紹介します。ちょっと長くなりますが、面白いので読んでみてください。貼ったリンク先で悲しいゴンドラの図も見れます。

「ゴンドラ猫」という、アメリカの心理学者・ヘルドとヘインがやった実験を紹介したいなと思います。

ちょっとかわいそうなんですけど、生まれたばかりの猫ちゃんが装置にくっつけられちゃいました。どんな装置かというと、縦縞だけの世界で、かつ2匹が点対称でくっついちゃってるんですね。

片方の猫ちゃんは自分の意思で歩くことができる。もう片方の猫ちゃんは、この片方の猫ちゃんの動きに合わせて、右に行けば同じように右に行くし、左に行けば左に行く。ほぼ同じような景色を見ていると思っていただければと思います。

同じものを見ながら育つワケだから、当然「ものを見る」という意味では、あんまり成長速度って変わらないような気がしますが。しばらく、ほんの数週間なんですけど、この装置の中で育った猫ちゃんを見ると、えらいことになっちゃうワケですよ。その結果です。

こっちを能動的な猫、こっちを受動的な猫(ゴンドラ猫)という言い方をしますけれども、その結果がですね……じゃんっ。ゴンドラに乗せられた猫ちゃんは、空間が見えなくなっちゃった。

「どういうこと? ずっと目は開いているじゃない」という感じなんですけど、例えばものにぶつかるんですよ。自分の足で歩いた経験がないから、目の前になにか景色があったとしても「これだけ動いたらぶつかるな」とか、そもそも「今見てるものが障害物だな」というのがわからないワケですね。わからないから当然避けられない。

リーチングというんですけど、例えば自分の口や手を動かして体を届けることすらもできなくなる。要はエサまでの距離もわからなくなるし、そもそもどれがエサでどれがエサじゃないかすらもわかんなくなる。

「自分で動こうとする主体性」がないばかりに、そもそも「見る」ことができなくなる。この世界でエサも取れなければ、ものも避けられないワケだから、そもそも生きていくことができないワケですよね。だから、自分の力でなにかをやろうとすること、実際にそれをやってみることがいかに大事かが、この実験からわかるのです。

https://logmi.jp/business/articles/324163

 もう一度言いますと、カルトの手口というところからは距離の離れた話ではあります。しかしながら、この「自分の手足を動かす」という能動的な体験が、学習においていかに重大な意味を持つかということが分かっていただけたかと思います。また、布教なんかは、それをすることで当人の中で正当化の働きが生じる(これが正しい行動でないとしたら…と思うと耐えられなくなるため)という、幻術使い側にとってのおいしい効果は他にもある。

その⑤:幻術使いと対面していない時の方が正しい判断ができる

 「どうやらこの人は幻術使いのようだ」と頭で疑うことができた。しかしその人と対面すると、やっぱりその人は正しいことを言っているように感じる…。そのような場合もあると思います。そういう時に効くのがその⑤です。ズバリ、「幻術使いと対面しているときより、対面していないときの自分の方が正しい判断ができる」というものです。
 繰り返しになりますが、幻術使いは人間の心を操る達人です。その領域において、あなたよりも圧倒的に格上です。そのため、もう一度話を聞いて確かめてみようと思ってはならない。「今度の自分は冷静に判断できるぞ」と思ってはならない。相手は圧倒的に格上です。また幻術というのは恐ろしいものです。もう一度話した場合、あなたはもう一度騙される可能性が高い。「この人幻術使いかも」と疑ったぐらいの段階で、他の人たちに相談して、その人たちの言うことの方を信じるぐらいでちょうどいいと思います。

さいごに

 やはり最も大事なことは、
その①:幻術使いは格上であると心得る
 をしっかりやれるかかなと思います。ある種の敬意を持つのがいい。そんな邪悪な奴に敬意なんて…と抵抗を感じるかもしれませんが、人格と能力を切り離して人を評価することは何ら間違ったことではありません。
 われわれは幻術使いと比べて、「人の心を操る」領域において、弱者です。弱者としての弁えが最後にものを言うのかもしれません。
(注:この記事を書く以前に、数冊のカルトに関する本を読んではいますが、詐欺その他の幻術領域については全くの無学です。あとは僕の人生経験からわかったことを基にして書いています。違ってる部分があったら意見も欲しい!)

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