古今集巻第十七 雑歌上 877番
題しらず
よみ人しらず
おそく出づる月にもあるかなあしひきの山のあなたもをしむべらなり
遅く出づる月にもあるかな、あしひきの山のあなたも惜しむべらなり
遅く出た月であることだ、美しく裾を引く山の向こう側、月が隠れた向こう側でも月を惜しんでいることであるだろう
今自分が見ている月は、西の山に隠れてしまう、それが惜しい。そして山の向こう側でも、さらに西の山にやがて月は隠れてしまう、そこにいる人も月を惜しんでいるだろう、という歌です。
風景が想像しやすい歌だと思います。
「べらなり」は、そうであるだろうなあ、ぐらいの意味です。想像して感嘆するようなこと。平安時代の前期に和歌で流行した言い回しです。
上田敏訳のカール・ブッセの詩に「山のあなた」が出てきます。当然、古今集も読んでいるのでしょう。
山のあなたの空遠く「さいはひ」住むと人のいふ。
Über den Bergen weit zu wandern, Sagen die Leute, wohnt das Glück.
(山を越えて歩く、そこには幸せが住む、人々はそう言う。)
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