古今集巻第十四 恋歌四 746番
題しらず
よみ人しらず
かたみこそ今はあたなれこれなくばわするる時もあらましものを
題知らず
詠み人知らず
思い出の品は今は悲しいものだ、これがなかったら忘れる時もあるものなのに
「形見こそ今は仇なれこれ無くば忘るる時もあらましものを」
「形見」は、相手を思い出す縁(よすが)、この場合は生きている相手についてしばらく逢えない間に相手を思う時に手にするものです。
「あた」は、「仇(あだ)」で残念なもの、ここでは嫌な相手を思い出すものです。
「あらましものを」は、あるだろうものなのに、ぐらいの意味。
仲の良い時には相手を思う物だったのに、嫌いになった今では腹立たしいものになり、これがなければ思い出さずに済むのに、という歌です。そんなに嫌なら捨てれば良いのですが、やっぱり捨てられないというあたりで、気持ちは残っているのでしょうね。
この話は伊勢物語119段にあり、
「むかし、女、あだなる男のかたみとて、置きたるものどもを見て、」と歌に短い説明がついています。
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