古今集巻第十四 恋歌四 705番
藤原敏行朝臣の、なりひらの朝臣の家なりける女をあひしりて、文つかはせりけることばに、いままうでく、あめのふりけるをなむ見わづらひ侍るといへりけるを聞きて、かの女にかはりてよめりける
在原業平朝臣
かずかずにおもひ思はずとひがたみ身をしる雨はふりぞまされる
藤原敏行が、業平の家にいる下女を相知って手紙を送った中の言葉に、「今から行きますが、雨が降っているのを見て困っています」というのを聞いて、下女に代わって詠んで返した歌
在原業平朝臣
いろいろとあなたはわたしを思っているのか思っていないのか、それを直接お聞きするのは難しいのですが、わたしの身の程を知っている雨なのでしょう、降り方が強くなって来ました
「数々に思ひ思わず問い難み身を知る雨は降りぞ勝れる」
雨の振り方が強くなって来たということは、雨が「あの人はお前のことをたいして思っていないよ」と教えていることになります。なので「さぁあなたは来てくれるのですか」と問うています。
主人である業平の代作で、敏行もそれをわかっていますから、「冷たいことを言わずに来てやってくれ」という業平のお願いでもあります。話の分かる主です。
この話しは伊勢物語百七段にもう少し詳しく載っています。この歌を見て、敏行は慌ててずぶ濡れでやって来たそうです。
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