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古今集巻第十七 雑歌上 927番

朱雀院のみかど、布引の滝御覧ぜむとて、ふん月の七日の日おはしましてありける時に、さぶらふ人々に歌よませたまひけるによめる
たちばなのながもり
ぬしなくてさらせる布をたなばたにわが心とやけふはかさまし

朱雀院の帝、布引の滝御覧ぜむとて、文月の七日の日おはしましてありける時に、侍ふ人々に歌詠ませ給ひけるに詠める
橘長盛
主無くて晒せる布を七夕に我が心とや今日は貸さまし

朱雀院の帝が布引の滝をご覧になろうと、七月七日の日に行幸なさった時に、お仕えしている人達に歌を詠ませなさったので詠んだ歌
持ち主がなくて晒しているこの布を、七夕の織女に、私の気持ちですと今日は貸したい

朱雀院の帝は、宇多上皇のこと。ご譲位の後、朱雀院という御所にお住いになったので、このようにお呼びします。
布引の滝は、美しい流れなので、布を晒しているようだ、この美しい布を、まさに今日、牽牛に逢いに行く織女に貸してあげたいものだと言う歌です。おめかしして行けば、恋も上手くいくだろう、ということです。
「ふん月」は「ふみづき」の「ん音便」です。書き間違いではありません。

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