古今集 巻四 秋歌上 208、209、210、211番
題しらず
よみ人しらず
わが門にいなおほせ鳥のなくなべにけさ吹く風に雁はきにけり
いとはやもなきぬる雁か白露の色どる木々ももみぢあへなくに
春霞かすみていにしかりがねは今ぞ鳴くなる秋霧のうへに
夜を寒み衣かりがねなくなべに萩の下葉もうつろひにけり
この歌はある人のいはく、柿本の人まろがなり
我が家の門で稲負鳥が鳴くと、ちょうど今朝吹く風に乗って雁がやって来た
こんな早い季節に鳴いたのは雁か、白露が彩る木々もまだ紅葉していないのに
春霞で霞んだ頃に北国へ帰って行った雁の鳴き声は今鳴いている、秋の霧の上で
夜が寒く衣を借りるほどの頃、雁の鳴き声が聞こえると、萩の下葉も枯れてしまう季節だ
この歌はある人が言うには柿本人麻呂の歌であるという
「いなおほせどり」は「稲負鳥」で秋に来る渡り鳥だそうで、鶺鴒(せきれい)かもしれないらしいですが、どの鳥かはわからないそうです。
「なくなべに」は「鳴くとちょうどその時に」ぐらいの意味です。接続助詞である「なべに」もとは濁らずに「なへに」だったそうで、奈良時代やその以前の言葉が和歌などで残って使われているようです。
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