題しらず
よみ人しらず
み吉野のおほ川のべの藤波のなみにおもはばわがこひめやは
題知らず
詠み人知らず
美しい吉野の大川のほとりに咲く藤の花の波、それに比べて並みにあなたを思うのであれば、わたしはこんなに恋しく思うだろうか
上の句は「なみにおもはば」に掛かる序詞、「藤波」と「並み」の女性とが掛詞です。あなたを並みの女性とは思わない、幻想的な吉野に咲く美しい藤の花のようだ、と詠っています。奈良の吉野は、今は桜の名所ですが、奈良時代には霊的なものが感じられる神さまの山で、繰り返し御幸が行われましたから、平安時代でもその印象が強かったものと思います。
#古今集 , #恋歌四 , #吉野 , #藤浪