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岩波少年文庫を全部読む。(80)異世界転移、『帝国の逆襲』、そしてムーミン谷のトールキン。 アストリッド・リンドグレーン『ミオよ わたしのミオ』

スタート地点は「逆『赤毛のアン』」

アストリッド・リンドグレーン初の異世界転生もの『ミオよ わたしのミオ』(1954。大塚勇三訳、岩波少年文庫)は、語り手の〈ぼく〉、9歳の孤児ボッセことブー・ヴィルヘルム・ウルソンが現代のストックホルムから遠い異世界である《はるかな国》に転移し、悪の騎士カトーと戦う物語です。

孤児院出身のボッセは、里親のエドラおばさんとシクステンおじさんと一緒に、ストックホルムに住んでいました。里親にはあまり愛されていないと、ボッセは考えています。

だいたい、おばさんは女の子がほしかったのに、もらえるような女の子はいませんでした。それで、ぼくをもらうことにしたのです。けれど、シクステンおじさんとエドラおばさんは、男の子がすきではありません。

アストリッド・リンドグレーン『ミオよ わたしのミオ』(1954)
大塚勇三訳、岩波少年文庫、11頁

11歳のアン・シャーリーとは逆のパターンですね。

呼ばれて飛び出て拉致します

あるとき、親切にしてくれる果物屋のルンディンおばさん(どうやらこの人物が、現世と《はるかな国》との連絡係らしいのですが)に林檎をもらい、そのお使いで郵便を出しに行った帰り、公園に落ちていたビール壜から魔神を解放してしまいます。
ボッセはそこで、図書館で読んだ『アラビアン・ナイト』を思い出します。

魔神はボッセを《はるかな国》に拉致します。ボッセはそこの王である父と出会います。その国でのボッセはミオという名前です。
寂しい孤児の父は異世界の王。もうこの設定自体が悲しすぎます。

ミオは王の薔薇園で、庭師の息子で同年代のユムユムと友だちになります。ふたりは馬のミラミスで遠乗りでに出ます。
道中知り合った羊飼いの少年ノンノや、ユムユムの友人イーリは、弟妹を悪の騎士カトーにさらわれたのだそうです。

悪の騎士カトー

機織りのおばさんの娘もカトーにさらわれた、とボッセは聞かされます。そしてユムユムから、父がミオにカトーとの対決を望んでいることを知らされ、恐れを抱くのです。

それでもとうとうミオとユムユムはカトーを打倒するために出かけることになります。エノじいさんに教えられて、ふたりは〈黒いスパイ〉たちに馬のミラミスを奪われ、徒歩で森や洞窟を進み、刀鍛冶に会います。
刀鍛冶によれば、悪の騎士カトーは鉄の手で人の心臓を摑み出すのだそうです。『インディー・ジョーンズ 魔宮の伝説』にそんな人が出てきましたね。

カトー唯一の弱点は心臓ですが、その心臓は石でできています。ミオは刀鍛冶に石でも斬れる刀をもらい受けます。
ふたりはカトーの根城に向かいます。

『帝国の逆襲』in異世界転移ファンタジー

敵陣に乗りこんだミオとユムユムの冒険はハリウッド映画ふうの冒険アクションです。
要塞の石段を登りつめたミオは足を滑らせ、最高段にどうにか両手でぶら下がったクリフハンガー状態になりました。
ミオが〈ユムユム、ぼくを助けて!〉と叫んだとき、ミオに囁きかける声がします。

「よし、よし、この手につかまれよ。そうすれば、きみを助けてあげる。」と、僕がユムユムだと思っていたあいてがいいました。「この手につかまれよ。そうすれば、きみを助けてあげる!」
 そこで、ぼくは、その手をつかみました。だが、それはではありませんでした。鉄の手でした。

『ミオよ わたしのミオ』前掲書210頁

落ちそうになっているミオを引っぱり上げたのは、ラスボス・騎士カトーでした、
《スター・ウォーズ》
エピソード5『帝国の逆襲』のルーク・スカイウォーカーとダース・ヴェイダー卿か!
このあとカトーが「お前は自分のパワーに気づけばよいのだ」と語りかけ、"Mio… I am your father…"と告白し、ショックを受けたミオが"Nooooooooooo!!!!!!!"と言いながら落下していく!という場面を思わず想像してしまいましたがそういう展開はありませんでした。

こうしてミオとユムユムは来襲を予想していたカトーに捕まり、剣を奪われてしまいます。さて、ふたりの運命やいかに。

『指輪物語』ローンチと同年の作

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