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岩波少年文庫を全部読む。(122)科学者探偵ソーンダイク博士、カッレくんに憑依 アストリッド・リンドグレーン『カッレくんの冒険』

先週に引き続き言い切っちゃいます。
アストリッド・リンドグレーン『カッレくんの冒険』
(1951。尾崎義訳、岩波少年文庫)は、岩波少年文庫最強シリーズ(3部作)の第2作です。

『名探偵カッレくん』(1946。尾崎義訳、岩波少年文庫)での、エイナルおじさん絡みの宝石泥棒の一件から1年。カッレ、アンデス、エーヴァ・ロッタの3人組〈白バラ軍〉に、ふたたび夏休みがやってきました。7月ももうすぐ終わりです。

〈薔薇戦争〉が〈地主屋敷〉で展開

前作で紹介された〈赤バラ軍〉との「薔薇戦争」は、今年も続いています。

3人は、小さな田舎町リルチョーピングの町はずれにある共有地〈大平原〉を目指して歩きます。
〈大平原〉という名称は、子どもたちのウェスタン趣味なんでしょうね。
3人が橋から見かけたのは、高利貸しのグレーンじいさんでした。グレーンじいさんは、不当に高い金利でお金を融資しているのです。

この場面は、3人の少年少女が橋の欄干で危ういバランスをとりながら歩くというもので、「子どもらしさ」と「青春」の両方が盛りこまれてて、なにか日本のバンドのプロモーション映像のようです。

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2,999字

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戦後日本の児童文学を牽引してきた存在のひとつ、岩波少年文庫のレパートリーを、毎週1タイトル取り上げます。 シミルボン既発表ぶん(https://shimirubon.jp/series/727)は、2022年7月1日以降にnoteでも読めるようになります。

シミルボンから移行してきました。 少しでも長く続くよう、いや、全タイトルをレヴューできるよう、みなさん応援してください。

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