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人類学から見たコミュニティ内で行われる互酬的行動のメモ

どもども。青木です。

私はコミュニティの定義を「何かしらのハッシュタグを共有する個人の集合体」としています(原典はソーシャルバーPORTOの嶋田さん)。

生まれたばかりのコミュニティはそれだけではなんら利益をもたらしません。よくある「飲み会だけやってなんとなくやる気が出て終わり」みたいなのが生まれたばかりのコミュニティです。そのコミュニティを育てていくと実際に良いことが起こります。エコシステムから特定の情報が集まりやすくなる、課題の相談が来て仕事に繋がる、よりコミュニティのメンバーが増えできることが増える…などです。

ということで今回は互酬性について勉強してみたのでそのメモを。そこで今回のnoteでは生態心理学、人類学(たぶん)の観点からいくつかの本をもとにまとめていきます。マーシャル・サーリンズの論について紹介します。コミュニティのどこに所属しているかによって互酬的行動が変わることを述べています。

ここでのコミュニティの定義

人類学ではよく”伝統社会”といわれるものが出てきます。なるべく自然状態に近い、複雑ではない社会のことを指すと思ってください。昔の日本の農村風景を思い浮かべてもいいです。マーシャルの理論で取り上げるコミュニティを紹介します。

1. 家:家族
2. リネジセクター(系族・氏族):親族組織のこと。共通の先祖の系譜が実名で辿ることができ、同族結婚が許されないものを系族、共通の先祖を系譜で辿ることができず同族結婚が許されることが多いものが氏族。
3. 村落セクター:日常生活が相互の生活に関係する間柄(e.g. 同じ村に実際に住んでいる)。
4. 部族セクター:日常生活が相互の生活に直接関係しないが同族意識を持つことができる間柄(e.g. 今同じ村に住んでいるわけではないが出身が同じ)。
5. 部族間セクター:血縁的・生活的関係が全くない間柄。

これがまず共同体のグラデーションです。

互酬性の話

さて、コミュニティを扱う上で最初に抑えておきたいのが互酬性です。何かしてもらったらお返しがしたくなるアレです。互酬性の起源に触れることで、「互酬性なんてあるの?」という問いに答えていこうと思います。
まず互酬性にはマーシャル・サーリンズが提唱した3つにハミルトンが1つ加えて、4つの類型があります。

1. 非特定的互酬性
 長い付き合いの間に貸し借りはゼロになるだろうという暗黙の期待・了解の元にいつお返しされるか、どんな品を返すかについて考慮せずにモノのやり取りがされること。近親者間で行われる。cf. 「情けは人の為ならず」

2. 均衡的互酬性
 お返しの時期、返される物(対価)について、明確な取り決めあるいは了解をもって、物のやり取りが行われることで、遠い親戚や近くの他人の間で行われる。

3. 負の互酬性
 騙したり、強奪したりして、他人からものを取ること。お互いに全く知らない者同士で起こる。cf. 「旅先の恥はかきすて」

4. 互酬的協力
 一方が援助し、その後で他方がお返しに援助すること。相互援助の成果を分割できない場合、一方が利益を得、他方は損失を被る。役割を交代しながら自分の支払ったコストより大きな利益が得られる限り続く関係。

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図にするとこんな感じ。
これをウィリアム・ハミルトンは利他行動が起こる条件としてハミルトンの不等式を提唱している。
利益×血縁の近さ>コスト
というものである。

互酬的協力が進化した背景

ロバート・トレヴァースが互酬的協力が進化する条件を検討し、次の点を整理しました。
・利己的な個体に利益を与えない手段を持つこと(協力しない個体に罰を与え得られること)
そのためには…
 └個体の識別が可能であること
 └個体間の順位順列が厳格でなく民主的であること
 └初回に利益を受けた者がお返しをするために他者の援助を必要とする同様な事態がよく起こり、助けた者と助けられた者が近くに住んでいること

これらを霊長類はよく満たすため互酬的協力が進化したとのこと。

事例1. ソマリー人のアラブ帽
 筆者(西田利貞)がタンザニアの奥地の街で肉屋を開いていた男に会った。数回会っているうちに帽子を褒めたら「ほしいか?」と訊かれ、冗談のつもりで「ほしい」と言ったら現地で1ヶ月分の給料に値する帽子をあっさり脱いで譲ってしまった。こういった人々は所有の概念がないのではなくて「けち」と言われるのを恐れており、授受はお互いさまだと考えている。

事例2. アフリカの農耕民とピグミー
アフリカの農耕民は森林に住む狩猟採集民ピグミーから肉や蜂蜜をもらったり、畑の労働奉仕を受ける代わりにキャッサバ・バナナなどの栽培食物を与える。農耕民とピグミーの間での交換相手のグループは決まっており、特定のパートナーは世襲されている(寺嶋秀明)。コリン・ターンブルによると農耕民もピグミーも自分たちが得をしていると思っている。お互いに自己にとって過剰な資源を放出し、不足している資源を得ているため小さいコストで大きな利益を得ている。

事例3. 擬制的親族集団の構築
全くの他人を「お父さん」「息子」「妹」と呼ぶこと。親族の名で呼ぶことによって、親族間で通常期待されるような親密な関係を結び、助け合おうという欲求の現れ。「○○県人会」「○○ファミリー」なども類似。

さてさて。そういうことでメモでした。このあたりを応用していくとコミュニティの運営にも役立つヒントがあるかもしれませんね…!

ちなみに今回参考にした(というかほぼ引用した)本は下記です。

「ヒトはどのように進化してきたか」の値段に目が飛び出ました…。図書館って偉大。。


最後まで読んでいただきありがとうございました!

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