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樋口円香の激情~いつも優しいあなたが嫌い~


樋口円香にとってシャニPとはどんな存在なのでしょうか?



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【ピトス・エルピス】樋口円香を読み終えた後、私はアイドル樋口円香第2章の幕開けを感じました。箱の中に閉じ込めて本人すら忘れていた激情はきっと円香の未来への可能性でしょう。その激情は歌に向けて発露したものでしたがもう1つ、彼女を輝かせるであろう秘められし激情があると私は考えています。

そう、シャニPへの激情です。

ネットでよく「にちゅにちゅ」と表現されるシャニPへの感情の名前は何なのか?まさか恋愛感情か?はたまた別の何か?それこそが今後私たちが着目すべき円香が抱える「激情」だと思うのです。議論や解釈の多い円香学ではありますが、私ぱーるも学会に一石を投じてみたいと思います。参考程度に生温かい目で見ていただけると幸いです。

前提‐premise-

前提として触れておかなければならない円香の性格があります。

彼女は傷つくことを恐れるタイプであるということです。

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裏切られるくらいなら期待しない、裏切るくらいなら背負わない、全力を出しても届かないくらいならそんな極限を知りたくない─。現代人なら珍しくないいたって普通の感覚です。言動に予防線を張って、まだ余裕があると言い聞かせて。しかし彼女は同時に真面目です。それでも傷つけられないように努力はしてしまう。傍から見た円香はスマートに見えるでしょう。しかしながら実際の彼女はとても不器用なのです。

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第一印象-first impression-

傍目には決していいとは言えないでしょう。相当な警戒と距離感を感じます。ですが悪いかと聞かれればそれも違うかなと思います。

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結局アイドルになったこと

これに尽きると思います。印象最悪な人間の誘いでアイドルの道を選びますか?ということです。円香がアイドルを了承した経緯には
・透がアイドルになったから
・透と一緒のアイドル活動を提示されたから
という2点があり、透が心配だから見張る意味も込めての所属、が彼女の立場です。相手への印象が悪いのならばいくら透と一緒でも誘いを突っぱねるでしょうし透にもやめるように強く言うでしょう。しかし円香はアイドルになりました。警戒こそすれ、シャニPの第一印象が悪いわけではないと思われます。

さらに言えばもう2つほど、シャニPの印象を悪くないものにし、かつアイドルになると言わしめた背景があるのです。

①透の存在

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円香にとって透はずっと隣にいる存在、いや隣にいなきゃいけない存在でしょうか。

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おそらく透は今まで何度か芸能界のスカウトがありながら断ってきたのでしょう。それを円香も知っていたし、それが日常だった─。はずなのに透は突然アイドルになりました。騙されてるかもしれないという心配もあったでしょう。しかしおそらく彼女の深層心理にあったのは、透がアイドルになるのなら私もその隣に立つという気持ちだと思います。それを考えると、円香をスカウトし、透と一緒にアイドルを─、と言ったシャニPのことを悪くは思っていないでしょう。

②アイドルという存在

実は円香にとっても「アイドル」はふってわいたものではありません。

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当時のやり取りが本当はどうであったかは想像に委ねるところではありますが少なくとも円香の容姿が周りから見てもアイドル級であることは間違いありません。大事なのは透がスカウトを受けていたであろうことと並んで円香もアイドルになれそうだと思われていた、ということ。実際アイドルになるわけではなかったのでこれで「透の隣に立つ」構図が成り立っていたのですが、透がアイドルになったため、円香の心の中にも「アイドルになる」という意識が生まれたと思います。したがってこのタイミングで円香にアイドルを見出したシャニPを疑わしくは思っても悪い気はしていないのです。


以上①、②から円香のシャニPへの第一印象は悪いわけではなくむしろ特別なものだったと言えるでしょう。厳しい態度をとっているのは前提の通り円香の「傷つくことを恐れる性格」に起因しているからです。簡単に信じて裏切られたくない、ダメだった時にショックを受けたくない、という防衛反応です。そもそも人は興味ない人に厳しい態度をとったりしません。冷たかったり妙な語彙力を感じる言葉は他の人と違うと思っている心の裏返しです。

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プロデュース-produce-

前項より円香は最初からシャニPにある程度特別な思いを抱えていることが分かりました。これより先の円香の心境の変化とは、どれくらいシャニPを信頼しているかの差になります。それでは円香の心の天秤が信頼へと傾いていくのはどこなのでしょうか。解釈次第ではありますが一番大きいのはW.I.N.G.コミュ『心臓を握る』だと思います。

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前提で触れた円香の不器用さが表れる箇所であり、それをシャニPが受け止めるシーンでもあります。選択肢後の会話では円香なりのシャニPへの信頼が見えます。

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傷つきたくない気持ちから感情にブレーキをかける円香と強い言葉で円香の背中を押そうとするシャニP。価値観が合わないようで足りないものを埋めてくれる。「信じることが恐い私を無理矢理にでも信じさせて」「泣かない私の横であなたが泣いて」そんなメッセージを感じます。最終的にどのくらいの信頼関係が築けたかというと優勝した暁にはセーブしているはずの感情を見せてくれるくらいには、です。

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W.I.N.G.ラストシーン。これがすべてを物語ってると言っても過言ではありません。ここほんとすき。

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激情-passion-

特別な第一印象を抱きました。信頼関係も築きました。しかしながらこれらは他のアイドルと変わりません。では「にちゅにちゅ」とすら言われる複雑な感情は何によるものなのでしょう?それは再三になりますが前提における円香の性格です。もっと言えば今までアイドル活動に向けられていた「傷つくことへの恐怖」が、シャニPへと向けられるようになったことによる信頼との複合感情こそが今回の議題であるシャニPへの激情です。

「傷つくことへの恐怖」がシャニPに向けられるとは何か?以下のシーンにて考えてみることといたしましょう。

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ご存じ【ギンコ・ビローバ】樋口円香の『銀』、そのラストシーンです。

このエピソードに込められた円香の感情を一言でまとめるなら…

「あなたを失いたくない」

です。解釈の分かれる議題ですが、しばし私の話をお聞きください。

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このコミュでは円香がシャニPへの賛辞を(ややシニカルに)口にしてその結びを「本当に、信用ならない」としています。ユニークな好青年やらミスター・プロデューサーやらの賛辞ですが、おそらく嘘ではありません。少なくとも円香の目にはそう映っているのです。その上での「信用ならない」とは、「そんな完璧な人間いるわけない」とか「絶対裏があるに決まってる」といった疑いではなく「完璧じゃなかったら、裏があるあなただったならば、もうすべて終わってしまっているのに」という感情の表れです。これは上の超有名フレーズである

「ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいいのに」

もほぼ同じ意味です。「ぐちゃぐちゃに化けの皮がはがれてしまったならば、この関係も終わるのに」みたいな。

こういう表現になっているのは円香の「傷つくことへの恐怖」の裏返しです。円香の目から見ても完璧なシャニP。彼がいてくれるから円香は自分が試され続ける恐怖と戦える。彼がそばにいてくれるからアイドルでいられる。でももしそれが幻想だったら?突如裏切られてしまったら?きっと取り返しのつかない傷を負ってしまう。今円香はそれを恐れているのです。いつかそんな現実を突きつけられてしまうくらいなら、いっそ「ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいいのに」と。直前の『偽』にもこうあります。

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変に期待なんかするより失望してしまった方が楽。円香は強い言葉を使って自分でそう思い込もうとしているのです。でもこれは前述の通りシャニPに向けた「傷つくことへの恐怖」の裏返し。ですので表の本音に直せば

「ずっと信じさせてほしい」
「あなた(=信頼関係)を失いたくない」

となるわけです。これが円香がシャニPへ抱く感情の正体であり、この記事で言うところの樋口円香の激情というわけです。

ここからは少し補足。カード名【ギンコ・ビローバ】に関して。ゲーテの書いた詩に「Ginkgo Biloba(銀杏の葉)」というものがあります。日本語訳を一部抜粋します。

これはもともと一枚の葉が
裂かれて二枚になったのでしょうか
それとも二枚の葉が相手を見つけて
一枚になったのでしょうか
こうした問いに答えられる
ほんとうの意味がどうやらわかってきました
わたしの歌を読んであなたはお気づきになりませんか
わたしも一枚でありながら あなたとむすばれた二枚の葉であることが

銀杏の葉の形状から、わたしとあなたが2人で1つの結ばれた存在ですよということを綴った詩…だと思いますがこの詩がコミュのモチーフではと言われています。「裂かれて二枚~」と「引き裂かれて~」みたいな引用も見られますしね。では上の詩を円香とシャニPに置き換えてみましょう。

あなたの化けの皮が剝がれて
裂かれた2人になるのか
それともあなたとわたしという
2人で1つの存在でいるのか
あなたは 愚直で スーツも 折り目正しく 美しい
ああ ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいいのに

円香視点で少し拗れた詩にしてみました。いかがでしょうか。さて勿論円香の本音は「2人で1つの存在でいる」方ですが、それに含まれる意味とは「アイドル樋口円香は、あなたなしでは成立しえない」ということです。いっそ引き裂かれてしまった方が楽、そうしないのならどうかずっと信じさせて、ミスター・ドリーマー?

あえて円香の感情に名前を付けるなら「依存」でしょうか。シャニPなしではアイドルたりえないからです。現時点で「2人で1つ」という概念に「恋愛感情」という名前を付けることは難しいかと思います。円香はシャニPに振り向いてほしいわけではなく絶対に裏切らないでほしいと思っているわけですから。あれ?余計に重くね?

未来-IDOL LO@D-

とりあえず円香は今日までシャニPに裏切られることなくアイドルを続けています。シャニPへの激情についてはひとまずW.I.N.G.・【ギンコ・ビローバ】で区切りとして、その後のファン感やG.R.A.D.では樋口円香のアイドルとしての側面を描いていたと思います。どういった感情でアイドルと向き合っていくのか、活動していくのか、ですね。そして【ピトス・エルピス】─冒頭で私はアイドル樋口円香第2章の幕開けと表現しました。それは円香の「歌」への激情を通してこれからの円香の目指すべきアイドル像を提示していたように思うからです。円香はLPシナリオを控えているので一体何を見せてくれるのか、とても楽しみです。

まとめ

円香についての考察を行うことは正直躊躇っていました。円香についての怪文書は多く、既に多くの方が議論を交わしているでしょうし、主張を他と差別化するのは難しいと感じていたからです。しかしながらメジャーテーマを取り扱う経験もしてみたかったのと単純に【ギンコ・ビローバ】について語りたかった思いがあったからです。実装からずいぶん経ってますが、【ピトス・エルピス】のコミュを読んで思い立ったのでこんなタイムラグが発生してます。

私はPラブが好きなので円香も全然可能性あると考えています。今回の記事においての主張は「恋愛感情」とは至りませんでしたがそれはあくまで今回の主張では、です。これからクリスマスもバレンタインも待ってるではありませんか!その時はまた樋口円香学会に新たな風を吹かせたいと思います。あっさり風味ではありましたが今回はこの辺にしようと思います。では!

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