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質問箱039:思い入れが持てないテーマを描く時

※Twitterの質問箱に寄せられた質問を、別途アーカイブしておきます。また随時、加筆修正を加えていきます。

【質問】


【解答】

①立川談笑師匠の例

難しい質問ですね。
PR漫画などの仕事では、そういう場面が多いでしょう。
立川談笑師匠が、真打に昇進したときの攻略法が、参考になるかもしれません。

落語立川流では、真打ちに昇進するには落語百席と歌舞音曲―小唄や長唄や都々逸、奴さんや深川など―を覚える必要がありました。
落語はともかく、音楽は好みがありますから、覚えるのは なかなか大変です。

そこで談笑師匠は、まず たくさんある小唄や長唄の中から、少しでも自分の感性に合う曲、極端な話ワンフレーズでも良いと思えるものを探したそうです。

その曲を足掛かりに、その曲と似た雰囲気の曲や、その曲の歌い手の他の曲を聞くという形で、興味を広げたそうです。

②小室直樹先生の例

興味を持てないものを、無理やり 飲み込もうとしても、苦しいだけです。
でも、まずは〝好き〟の成分をカケラでも見つけて、好きの大きさを少しずつ大きくしていく。
そうやって好きの総量が増えると、それまで気づかなかった他の曲の魅力にも、気づいたりします。

博覧強記の社会学者であった、小室直樹先生が紹介されていた勉強方法も、参考になります。
ある中学生の家庭教師になった大学生、中学生は英語がとても苦手で、なかなか成績が上がりませんでした。

そこで家庭教師の大学生は教え子を観察し、その中学生が猫を大好きだと気づきました。

そこで、英語の猫の図鑑を、中学生にプレゼントしました。
英語は苦手で大嫌いだけど、猫は大好き。辞書を引いて、図鑑の説明を翻訳するのはあまり苦になりません。
また、好きな猫についての英単語なら、覚えるのもぐっと楽にもなったでしょう。

こうして中学生は、英語が苦手でなくなったそうです。

③筆者自身の克服例

一番苦手だった英語を克服できたことから、中学生は他の教科の勉強も意欲的に取り組めるようになったとか。
これはたぶん、猫好きであった小室直樹先生自身の、体験なのかもしれません。

こちらの例もやはり、苦手なことの中に自分の好きを見つけること、好きなことと繋げた例です。

筆者も、英語が大の苦手でした。
そこで、英語の曲を何度も聞き、歌詞を自然に覚えることで、克服とは行きませんでしたが、だいぶプラスに持っていけました。

このような、関係のない2つのものを上手くつなげていく作業は、作品作りでのアイデア出しでも重要です。

④2つの事柄を繋ぐ

例えば、自分が犬が好きだったら、それを軸に政治でも経済でも地方の過疎化でもスベスベマンジュウガニでも、つなげていくことは可能だと思います。
2つの事柄をつなぐ、第三の存在に気づく。
この能力はかなり重要だと思います。

例えば、篁が『浮世艶草子』の座敷童子の回を書いたとき、座敷童子の知識はあり、またそれが東北の間引き──生まれた赤ん坊を家の土間などで 石臼で頭をつぶして殺す──と繋がることは知っていましたが。
これをどう物語に落とし込むか 悩んでいました。

そこで、雑談している最中に、シアトルマリナーズのイチロー選手が新人時代、チームメイトに仕掛けられたいたずらについての話が出て。

これをうまく落とし込むことで、なかなかエロくて怖い ストーリーに昇華できました。

⑤鍋島雅治先生の例

でもこういうのって、好きを見つる姿勢が、日頃から必要です。

かっこよく言えば知的好奇心、噛み砕いて言えば野次馬根性が大事ですね。そして自分自身にも、損得を超えて没頭できるような、好きなものが必要です。

その好きなものを大黒柱にして、隣に支柱を立てていく。
これは鍋島雅治先生も、力説されておられました。

寝食を忘れるほど大好きなことは、苦になりません。
その横に、支柱を立てる。
支柱が出来たら、もう一本立てる。
主柱と支柱2本とが出来たら、その脇にさらに支柱の支柱を増やしていく。

この手法は、軸足をしっかり確保して、半歩踏み出すという意味で、有効な手法に思います。


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