WEBTOONの投資回収
元小学館の編集者で、現在は漫画原作者なども手掛ける石橋和章氏の、興味深いポストをご紹介。ピッコマが欧州から撤退し、アメリカや中国でもWEBTOONは苦戦が伝えられます。もともと、世界最大のマンガ市場である日本市場をターゲットにした、韓国発祥のサービスですから、やはり難しい部分はあるのでしょう。
①WEBTOONと集団製作
長文なので、全文の転載は難しいので。リンク先をお読みいただくとして。
WEBTOONは、個人で作る漫画と、集団で創るアニメスタジオの、中間というか。漫画でも担当が分かれているアメコミや、さいとう・たかを先生の分業制の制作体制に、かなり近いのでしょうね。
これ自体は、効率が良いんですよね。例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチの師匠であるヴェロッキオや、レンブラントなどの巨匠は工房を運営して、集団政策の分業制度でした。
平安末期から鎌倉時代の日本の仏師もそうで、運慶はプロデューサー的に動き、東大寺南大門の金剛力士立像を、優秀な弟子の快慶らを差配し、完成させています。
②WEBTOONと出版部門
その分業システム自体は、別にWEBTOONという表現形式である必要はなく。漫画でも良いはずですね。資金やスタッフなど余力あれば、そのままアニメスタジオに発展することも、可能でしょう。
思うに、この集団制作システムの利点は、
原作小説→コミカライズ→アニメ化
という形で、出版社がアニメスタジオを傘下にしたり、逆にアニメスタジオが出版部門を持ち、作品を募集し、レーベル化すれば、もっと効率的に制作可能でしょう。
そう、京アニがすでに『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』で成功したモデルです。『花咲くいろは』のP.A.WARKSも出版部門を持ちましたし、
③WEBTOONとアニメ化
京アニもPAも、両方とも東京のスタジオではないため、出版部門を持つのに、抵抗がなかったのでしょうね。出版社の9割以上が東京に集中していて、地方は自前で出版社を立ち上げたほうが早い、という面はありますね。業種的にも、近いところがありますから。
例えば、庵野秀明監督のスタジオカラーが、貞本先生とか安野モヨコ先生を漫画部門を統括するトップに据えて差配を任せ、カラー小説大賞みたいな形で原作小説を募集し、それを貞本先生や縁のある漫画家がコミカライズすれば、その中からアニメ化作品も出てくるでしょう。
付き合いのある編集者を役方として雇えば、そういうシステムを作ったり、作品を回していくことは、充分に可能かも知れませんね。
アニメ制作会社に出版機能が付き、総合制作スタジオ化する未来。
MANZEMIとしても、何か協力できそうな気もしますが…。縁がないので無理ですね。
④WEBTOONの新しい波
WEBTOONは、旧来の漫画を読みアンれた人間にはやはり間延びして、読みづらい面があるのですが。例えばコチラの作品とか、とても読みやすく、縦スクロールに見合った表現に、韓国も至りつつあるように思います。日本も遅れて、この流れが来るかもしれません。
ピッコマいくつかある、読みやすい&読み応えがあるWEBTOON作品は、原作小説がある作品が多いんですよね。『ニセモノ皇女に居場所はない』とか。縦読みがどうとか、表現形式にしか言及できない人は、作品内容の面白さが、実は見えていないのでは……そんなことを感じます。昨年の時点で、こんな指摘もあります。
上位98%のWEBTOON作品が小説原作――逆に言えば、ピッコマは普通に、『小説家になろう』や『カクヨム』のような、投稿機能を付加して、原作を広く求め、分業と工房の強みを活かして、次のシステム化を構想すべきかもしれません。
⑤WEBTOONとAmazon
縦スクロールの問題点と考察については、こちらのnoteでも触れていますので、興味がある方はどうぞ。
要点を言えば、WEBTOONの表現と少女漫画は相性が良く、たぶんこれからWEBTOONに注力するなら、少女漫画系の作品で、地味に稼ぐのがヨサゲ、という話です。なじみヨータ先生のコチラの作品『妖のフレンズ』は、非常に読みやすいです。画力の高さも構成の良さも、WEBTOON向き。
路歌之音先生の、コチラの作品もオススメです。
Amazonが、新しい波を起こせるかは解りませんが、WEBTOONが次のステージに入りつつあるのは、疑いないでしょう。3D映画のように、本流腕はないところで地味にポジションを築けるか? 儲かるらしいという喧伝に踊らされた人間が去り、本当に漫画が好きな人達が、再構築できるかが鍵かと。
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