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平隊士の日々 文久四年(元治元年)弥生三十

文久四年(元治元年)弥生三十  


足を踏まれて起きた。
慌てて、刀をつかみ周りを見渡すと、森が刀を探している。
廊下のちかくで転がっている刀を見つけて、森に投げてやる。
一番隊の面々が寝ている隊士を蹴飛ばしたり、踏んでいる。
昨日、井上組長が酒を持ってきて、
飲みすぎた隊士が起きれていない。
廊下側で寝ていたので、最初に襲撃された。
沖田組長が、
「深酒は良くないぞ、酒で身を持ち崩す奴もいるからな。」
伊木は襲撃の掛け声で起きたらしい。
今後は飲みすぎないように反省。
もう一度、寝るが、寝付けないでうとうとするうちに朝が来た。
布団をかたずけ、掃除して稽古に行く。

沖田組長と稽古。
沖田組長の稽古はきつい。
肘など、防具のない場所に竹刀が飛んでくる。
土方副長もそうだが、防具のないところを狙っているのだろうか。
今度、聞いてみよう。

朝食、アサリの佃煮、味噌汁、たたみイワシ、漬物、ご飯。

本日の隊務割、午前は西巡察、午後は非番。
最近、おかずが良くなっている。
漬物も、千枚漬けや赤かぶなどが良く出るようになった。

西巡察に三番隊と出かける。
斎藤組長は、巡察中に前にいたり、後ろにいたり、
もう慣れたか?剣術は巧くなったか?など話しかけてきた。
井上組長が、うちの組は新人が多いので、まだまだ、稽古が足りないと言い、
巡察より稽古がしたい様子だ。

細川通りで浪士とみられる二人を発見。
斎藤組長が声を掛ける前に、
井上組長が隊士に浪士の後ろに回って、刀を抜けと指示をする。
取り囲み、斎藤隊長が声を掛けたところ、狼狽し逃げようとしたが、
観念して、捕縛される。
隊士三人に任し、浪士は屯所に送る。
残りは巡察を続け、屯所に戻る。

斎藤組長に浪士について聞いたら、
尊王攘夷の浪士ではなく、食い詰め浪人で、番所に任したとのこと。

昼食、サヨリの塩焼き、イカの味噌汁、春菊のお浸し、漬物、ご飯。
イカの味噌汁は初めて食べた、少し苦いし、硬い。

午後は久々の非番なので、寝転がって本を読む。
伊木が碁を打とうと誘う、縁側で碁を打っていると、
井上組長が、覗き込んでは、あっ!とか、えっ!とか気になるので、
途中で、投了し、組長と変わる。
わきで見ていると、伊木と井上組長は実力が折衷しており、一進一退。

暇なので、手当のあるうちに買い物でもするかと散歩にでる。
刀の残金があることを思い出し、支払いに刀屋により、帰りに袴を買う。
羽織と道着は支給されるが、その他は自前、
巡察でどうしても汚れるので、洗い替えに買う。

夕食、しゃも鍋、イカの味噌汁に水菜入り、芋の煮っころがし、漬物、ご飯。
次郎作が根付を見せびらかしにきた。
そう言えば、下駄がへってきているので、次の手当で買おう。

斎藤組長が酒を持ってきた。
二日続けて夜襲は無いと思うが、
分からないので、少し、お付き合いして寝た。

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