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課長 志摩うめこ 34才 (1)

うめこは名字で呼ばれるは恥ずかしいという。 
地元では珍しい苗字らしく、 
身元がすぐにしれるから、名前で呼んでほしいと言う。 

小さな田舎町、隣近所も皆知り合い、 
いや、親戚の様な田舎町に生まれ、 
中学、高校まで同じ町で暮らしていた。 

うめこは、高校を卒業する時に、 
短大か専門学校と迷ったが、短大を選んだ。 

日本中のどこの田舎町にでもいそうな生い立ちのうめこ。 

何が恥ずかしいのか、故郷のことはあまり話したがらない。

短大を卒業してから、親の進める地元の会社に入ったが、
上司とうまくいかなくなり、2年で辞めた。
その後、都会の会社に入り、地道に仕事を続けたら、
32才で課長になり、2年が過ぎた。
今の仕事は、あっているのだろう。

仕事関係で知り合い、意気投合して、飲みに出かけたりしたが、
連絡はまるで、業務連絡。 友情も愛情の気配もない。
もっと若くて、美人の女の子も知り合いになったが、
半年続いたのは、うめこが可愛いと思ってしまったからだ。

久々の休日、どこにもいかずに、うめこの部屋で酒を飲む。
てきぱきと、つまみを用意して、
部屋着のままソファに腰を下ろすと、かるく会釈して乾杯。
ワインから、水割りに代わるころ、会社でのうめこの評判を聞いてみる。
聞くと、なんと「鬼軍曹」とのこと。
何となく、納得してしまう。
仕事はできるだろうし、部下には早く出来るようになってほしいので、
きつい言葉をかけるのだろう。
もう、若くもないし、鬼軍曹、ハマりすぎて笑ってしまった。
さすがに、いやな顔をするうめこ。
あまりの可愛さに、いきなりキスをした。
びっくりして、飛び下がろうとするうめこの手首をつかみ、
もう一度、キスをした。

長いキスをした。

力が抜けていくうめこに、好きだと言ってみる。
「嘘よ、若くもない、めんどくさいおばさんを好きだなんて、嘘。」
「嘘なもんか、半年も毎日のように食事に誘い、デートして、
部屋にも上がれる男が嘘を言っても意味がない。」
「そんなこと、嘘。絶対に嘘。」
あぁ、めんどくさいスイッチが入っちゃた。 でも、可愛いと思う。
手首を放して両腕できつく抱きしめる。 
思ったより、細い肩に顎をのせ、赤い耳に頬ずりをする。
初めて抱きしめる、うめこの胸が自分の胸でつぶれる。
「聞いてほしい。信じてほしい。うめこと一緒に居たい。」
「そんなこと・・・」言葉が出ないうめこ。
きつく抱きしめる。
「痛い。そんなにきつく抱きしめたら、痛い。」
愛しさのあまり、きつく抱きしめ過ぎたらしい。
柔らかく抱きしめ、背中を探る。
ガードルだろうか、それともボディスーツだろうか、
しっかりガードされているので、首筋にキスをする。
うめこの吐息が熱をおびる。
背中側に回り込み、体を預けさせるように、ソファに斜めに座り、
うめこが寄りかかるように肩を引く。
「お風呂にも入っていない、恥ずかしい、もうずいぶん長いことしていない。」
「いいよ、うめこはうめこだもの。」
そう言って、曲げた膝から、冷えたつま先を温めるように両手で包む。
つま先が温かくなるまで、包みながら、
「うめこの好きになった男の子はどんな男の子?」
「短大の頃、サークルで目立つ子、リーダー的な子だった。」
「うまく行ったの?」
「最初はね、でもそのうち、上手くいかなくなって別れたわ。」
「ふーん、最初の人?」
「いやな人。でも、そうね、最初の人だわ。」
「うめこの最後の人になりたいと言ったら、どうする?」
「嘘、それは嘘。」
そんな言葉を打ち消すように、つま先から、膝へと柔らく触る。
「あっ!」
可愛い声をあげた、うめこ。
膝を伸ばし始めたので、膝から内ももへ柔らく、さらに上に触ってゆく。
吐息が早くなる。
手を腿から放し、肩をつかみ、首をまわして、キスをしながら、
手は肩から、二の腕を触り、腰を引き寄せる。

「お願い、シャワーを浴びさせて。」
「大丈夫、うめこはいい匂いだよ。」
「いや、シャワーで良いの、お願い。」
「分かった、待っているね。」と言うと、
うめこはバスルームに少しよろけながら立ち上がった。
うめこが座っていたあたりが温かくソファが沈んでいる。

ほんの少し待ってバスルームに向かう。
「うめこ、一緒に入らせて。」
シャワーの音で聞こえないのか、返事がない。
「うめこさん、大丈夫?」と少し大きな声で尋ねると、
「大丈夫、待っていてください。」
「うめこ、一緒に入ろう?」
「恥ずかしいので、待っていてください。」
扉を開けてくれそうもないので、部屋に戻り、
うめこさんに冷たいビールがあるか、冷蔵庫を確認する。
さっきまで鳴っていたCDが止まっている。
新しいCDを漁ると、懐かしいDon McLeanとCamelがあった。
Don McLeanをかけて、水割りを作りながらうめこを待つ。
American Pieが流れ始めると、なぜか涙が流れた。
そう、この曲、American Pieは絶望の曲だったんだよな。
ぼんやりと、流れる涙で、うめこがいなくなるような気がして、
水割りを口に運ぶ。 

A long long time ago
I can still remember how that music used to make me smile
And I knew if I had my chance
That I could make those people dance
And maybe they'd be happy for a while


・・・
これは創作で、主人公に似た名前の人もフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。 
あくまで、妄想ですので事実と誤認しないようにお願いいたします。
・・・

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