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静馬の日記 文久三年卯月から文久四年睦月

文久三年卯月十一
大旦那はんが、
これからの丁稚もきちんと文字が書けないといかんと言い
日記帳と筆と硯をくれた
今日から、日記を書いてみることにする
天皇はんが攘夷祈願を行ったらしい
攘夷攘夷と世間が騒がしい


文久三年皐月二十
丁稚頭から小突かれて悔しい
京都で綾小路何とかが天誅やと
ほんま、世の中どうなていくんやろう


文久三年水無月三
なんでも、
関東者が相撲取りと喧嘩をしたらしい
おぉ怖い
大阪も物騒になってきた
本当に 


文久三年葉月十三
大和屋さんに関東者が大砲を打ち込んだらしい
何と言う乱暴な、これだから、関東者は嫌われる


文久三年葉月十八
薩摩とかいう田舎者が禁裏の六門を封鎖して、
長州様を追い出していて、戦争がはじまるという
うわさがあるが本当だろうか


文久三年葉月二十五
うわさはうわさだけだった
戦争もなく、攘夷も収まったようだ


文久三年師走二十七
将軍様が江戸にもどった
大阪もしずかになるかな


文久四年睦月十六
お店(たな)に、そろいの羽織を着た若い人が来た
なんでも、新選組とか
将軍様の警護で大阪に来て、伏見の市中見回りをしているらしい
一番若い人が組長とか、わしと同じくらいの年齢、みんな若い
これからも時々見回りに来るらしい

拙者を僕、貴殿を君と言うらしい
今風やなぁ

関東者は怖そうだと思っていたが、そうでもなさそう
聞き耳を立てていると手当が凄い、隊士で十両、副長助勤で三十両
武士でなくても参加できるらしいて
こんなところで丁稚しているより良さそうだ

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