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龍馬の日記 元治元年皐月四

元治元年皐月四  


お龍さんから返事が来た。
急なので、今日には間に合わないらしい。
明日の五日には、宮部さんらが集まれるのこと、
宮部さんが言うには、新選組が良く使う島原より、   
祇園や五条の方が良くはないか、
あしゃ、違うと思う、あしらは不逞浪士じゃないぜよ。
堂々と、島原で飲んで問題は無かろう。
今日の夜には、北添さんらが岩扇に食事にくる。
そうか、今夜は岩扇で飲むか。

暮れ六つには岩扇に着いた。
お龍さんは嬉しそうに笑いかけるので、デートしようと言うと、
土佐の仲間がデートとは何ぜよと聞くので、
「おまんらは、知らんじゃろうが、
かの国、亜米利加国じゃ好きあった男女が人目もはばからず、
手を繋いで、デートするんじゃ。」
長次郎さんが、
「デートとは、あいびきとは違うんか?」
「違う、違う、衆人の前で、あしらが好きあっちゅうことを、
手を握り、歩いて、見せびらかすんじゃと。」
「えぇ?なんで?」
「ほりゃ、好きあちゅうのがうれしいからに決まっておろうが。」
「はずかしくないきに?」
「恥ずかしいくは無い。」
「あたしは恥ずかしいおす。」
「お龍さんは恥ずかしとよ、龍馬、どげんする。」
「論より証拠、これからあしとお龍はデートに行き、いらばかす。
おんしら、ついてくるきに。」
「おぉ、行こうぜよ。」と、あしらのデートについてくる。
木屋町の角を曲がって歩いていると、向こうから、
だんだら羽織の新選組の一人が歩み寄り、
「坂本さんでは?」と聞かれ、
「ほうじゃ、おんしゃは新選組の山南さんじゃなかと。
このおなご、お龍とデートしちょるんが、
神戸の仲間がデートを見物したいとついてきているんじゃ。」
「それは、粋なことを。」
「山南さんもデートについてこんか?」
「いあや、今は隊務なので、今度非番の時にでも。」
「そうか、それじゃ。」と礼をして別れる。
新選組にもデートを分かろうとする人もいるんじゃ、
尊王も攘夷もないぜよ、好きなおなごと手を繋いでデートじゃ。
ぐるっと、木屋町を回って、岩扇に戻り、
土佐の仲間と飲む。

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