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大阪市民の独り言 #saveosaka

毎朝、どんよりとした気持ちで目が醒める。
住民投票の公示日からもう何日経っただろう。

私は、いつも選挙の時に書くような文章を書こうと、もう何度も書いては消し、書いては消しを繰り返している。
これは何度目だろうか。
最後まで書けるのだろうか。
文字は進まなくても、コーヒーはどんどんと冷めていく。

いつもなら気持ちのピークというか、そういうポイントがきたら一気に書けるのだ。
だけど、今回はそうはいかない。
住民投票は、あまりにも選挙と違うからだ。
選挙は誰かを応援する。託したい誰かを、なぜ応援したいのか、なぜこの人がいいのか、それを目一杯考えて応援して書く。
それはかなりポジティブな行動だ。やればやるだけ力が湧く。

だけど、この住民投票は違う。
市民を二分し、勝つか負けるかの戦いを私たちにさせるのだ。

なんて残酷なのだろうか。
そして、大阪都構想という名の「大阪市を廃止してしまおう」というこの住民投票は、勝っても負けても、その先にあるのは茨の道だ。
やればやるだけ、心は削れるし、どちらにしも大丈夫なんだろうか、どうなるんだろうか、という不安もつきまとう。

この10年、維新政治で大阪はボロボロになった。
道は荒れ、雑草が生え、人も企業も出て行く。二分された市民は最初の住民投票から5年経ってもまだその溝は埋められない。
様々な助成金も削られ、商店街は疲弊し、町工場は苦しくなる。

コロナ対策もまともにできず、日々大阪の死亡者数は増えていく。
そのしわ寄せは末端からじわじわとやってくる。


もしも、「反対」が勝っても維新のチラシにあるような「胸高まる」というような大阪市が待っているなどと、口が裂けても言えない。
首長は相変わらず同じ人たちだし、議会も維新の議員が多い。

そこに公明もまたひっつくとなれば、勢力図としてはこれまでと変わらないのだ。
都構想を言い訳に、反対派のせいだと言いながら、「現存の大阪市議会」で決定し実現できる様々なものをやってこなかった。
住民投票が終われば、またその議会で、これまでのあれやこれ、住民投票の後始末、そして立て直しをしなくてはいけないのだ。
それでも。
それでも「賛成」が勝つよりもどんなにかもマシか。
賛成してこれ以上の破壊を進めるか、一旦反対をして立ち止まって見直して・立て直すか、の2択なのだ。

立て直すことはできるんだろうか。
山積みの問題。あらゆるところが疲弊し、今すぐにでも手をつけていかなければダメになってしまいそうなところばかり。
だけれども、やるしかない。
みんなが安心して暮らせる街づくりをするためには、ギャンブルのような一発逆転を狙うような政策ではなく、コツコツを足元から一つ一つ解決して行く政策と体制を今すぐにでも整えなくちゃいけない。


二杯目のコーヒーを入れる。

ふと、幼い頃を思い出す。
町工場に囲まれた小さなアパートに暮らしていた。

おじーちゃんのビールを買いに通い帳を持って酒屋に行くと、酒屋のおばちゃんがこっそりと飴ちゃんをくれた。
酒屋の奥ではおじさん達がビール片手に政治や経済について語っていた。

おばーちゃんと買い物かごを持って市場へ行きお菓子を買ってもらうのも楽しみだった。
春には町会のみんなとお弁当を持って大阪城に花見を行くのが恒例だった。
いかにも体に悪そうな工場から漂ってくる匂いは、あたしにとっては懐かしい匂いだった。


いつから、大阪はこんな殺伐とした街に変わってしまったのだろう。
昔に戻りたい、というわけではないのだ。
新しい未来にもあの頃、街に漂っていたあのあったかさや優しさを持って行きたいのだ。
分断されて、もう風前の灯かもしれないその、大阪が持つ暖かさを、守って、未来の人たちに手渡したい。

無機質な、どこにでもありそうなビル群は、もう十分じゃないだろうか。
大阪駅が完成した時、あの歩道の上に立ち360度見渡してみて出た感想は「大阪じゃないみたい」だった。
東京への対抗心を煽られて、あたし達、大阪人が失いそうになっているものはなんだろう。副都心とはなんだ?大阪都ってなんだ?
どれも幻想でしかない。どちらにもなり得ないのだから。

この住民投票は「政令指定都市大阪市を潰して特別区という4つの区にしてしまうかどうか」のお伺いだ。
大阪市のことは、大阪市民が決める。そうやってきたじゃないか。
そうやって色々なことをなし得てきた。歴史あるこの市を潰してしまえば、もう二度と戻ることはできない。
そんな大きなリスクまでおって大阪市解体が本当に必要なのか、今一度考えて欲しい。大阪市民の最後の決断が、自らの自治を手放してしまうことでいいのか。

なんとかここまで書き終えてみたが、全くまとまっていない。
あまりにもいろんな想いが出てきてしまうから、とめどなく話ができてしまう。あっちとびこっちとびする、散漫な文章を許してほしい。


素敵なビジョンのようなものが語られないから反対派はなぁ、とまだどちらでもない人に言われる。
この文章はそのことへの答えでもある。素敵なビジョンを語るにはしっかりとした社会基盤が必要だ。
その基盤がなくなってしまうかも知れないのが、この住民投票だ。

どうやったら通じるのか。正解とは何か。5年経っても明確な方法は見つからない。結局はコツコツと自分の言葉を発信していくしかない。

ニュースやSNSのタイムラインを見て大きく息を吐いた。
またコーヒーはカップの中で冷たくなっていた。


大阪育ちちまこ


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