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東京租界 第1話

あらすじ

犯罪組織、闇職人、妖術師や無認可サイボーグによって占拠された東京のとある一区画。

ーー通称、東京租界。

そこは、警察をはじめとするあらゆる国家権力が立ち入ることのできない、地図には存在しない街。

ミハナ16歳はこの街で生まれ、日本を裏から動かすフィクサー・鬼夊 玄導きすい げんどうの養子となった。
そして、租界と外部との間にトラブルが起きた際の、数少ない交渉人となる。

ある日、租界のボスの1人がミハナに大きな情報をもたらした。
日本に隣接する島国・東ベラス共和国からとある人物が密入国した、と。

それは、ミハナの日常と記憶を揺り動かす、警鐘けいしょうであった。

登場人物

鬼夊きすい ミハナ(16)身長142。ライムグリーンのショートボブヘア。緑眼をカラーコンタクトで隠している。租界生まれ。元・東べラス共和国の工作員。現在は鬼夊玄導の元で働き、戸籍上は彼の養女。妖獣・火那噴かなぶん

鬼夊きすい  アイ(設定年齢24)身長178。金髪のロングヘア。碧眼へきがんのアンドロイド。鬼夊カレン専属の護衛。戸籍上は鬼夊玄導の養女。妖獣・金狐ごんぎつね

鬼夊きすい カレン(16)身長162。ダークグレージュのセミロングヘアにベリーピンクのメッシュ。鬼夊玄導3人目の妻との間の子。ファッションとゲームをこよなく愛す。

鬼夊 玄導きすい げんどう(年齢不詳)100歳は優に超える、日本のフィクサー。政官財から裏社会に至るまで強い影響力を持つ。事実上日本の最高権力者。

ジアン(16)身長167。黒髪のロングヘア。緑眼。東べラス共和国の工作員で現在日本に密入国中。妖獣・黄泉蛙よみがえる

レン・フェンフィ(82)租界の住人。四大ファミリーの一角・大陸系マフィアのボス。

ヂノ・クイ(59)租界の住人。四大ファミリーの一角・東系マフィアのボス。

ジュン(20)租界の住民。サウス系ギャングのボス。

(全8話|12万文字)


プロローグ


外界からの介入を拒み
怪しくとどろく世界が、日本には存在する

ーー東京租界

そこは、一切の国家権力が立ち入れない、闇の桃源郷とうげんきょう

一章

1-1

「てめー、俺の女に手を出して、生きて帰れると思うなよ!!」

ミハナが店内に入るや否や、怒声が耳に飛び込んできた。

ーークソ! もうケツモチが来てる

ここは、サウス系のシマ。

彼らは普段は陽気だがキレやすい。

そしてここは法律の枠外にある、「租界」こと東京租界。

キレる=殺すに直結する。

それを阻止することを命じられ、ミハナはバイクを飛ばしてやって来た。

「ねぇ、ジュンはどこ?」

ミハナはケツモチのギャングたちに声をかけると、店内を見回した。

「あ? なんだ、このガキ」

褐色の肌にタトゥーが刻まれた男の手には、銃が握られている。

「私はこの件で交渉を任された、鬼夊きすいミハナよ。お願い、はやくジュンを呼んでくれない? ジュンは友達なの」

ミハナは要求をしつつ、店内を見回す。

普段はけたたましい音が鳴り響く、外国人キャバクラ。

今はケツモチの登場で静まり返っている。
そのせいか、普段は轟音の下に隠れているすえたアルコールの匂いや床や壁の汚れがあらわになっていた。

「ボスならここにはいねーよ。今この場を取り仕切っているのは、この俺だ」

うしろの方から前に出てきたこの男は、租界で育った者特有の獣じみたオーラを放っていた。 
身体は決して頑強そうには見えないが、そのことが逆にこの男の残虐さと怜酷さを証明している。
そうでなければ、この街でその地位にはつけない。

「事情は把握しきれていないんだけど、さっきここでボコられた男がいるでしょ? そいつを引き取りに来たの」

「ここのことは、ここの人間が決めて処理する。外の人間は口出しできない。わかりきったことだろ?」

「わかってる。でも、イレギュラーな事態なの。だから私が駆けつけてるわけ」

そういいながらも、ミハナは店内を探る。

すると吐瀉物としゃぶつが飛び散ったソファーとそこに横たわる男を発見した。

ミハナはとっさにその男の近くに駆け寄ろうとしたが、

「おい! 勝手に動くんじゃねぇ!」

「お願い、生死の確認だけさせて」

そう言うと、ミハナは銃を向けてきた男の手をはねのけ、横たわっている男の傍らに膝をついた。

赤黒くパンパンに腫れあがった顔は、何時間も殴られ続けていたことを物語っている。

これでは誰の顔だか判別不能だ。

だが状況的に、探している男に間違いないだろう。

時折うめき声をあげていることから、どうやら生きているらしいことがわかる。

ーー良かった…

ミハナは心の中で呟いた。

「おい、そいつは絶対に殺すぞ!」

今度は別の人間が背後から沸き出てきた。

濁った目と全身のタトゥー。

いかにもこの街のギャングといった風貌だ。

「そいつは何をとち狂ったのか知らねーけどな。俺がこの店で働かせてる女を思いっきり殴ったあげく、ゲロをぶちまけたんだよ」

「この男が100%悪いのはわかってる。でも、殺すのはやめて。あなた達にとっても得にならないから」

そう、こいつが100%悪いのは来る前からわかっている。こいつがこの手の厄介事を引き起こすのは、一度や二度ではないからだ。

「自分の女をあんな目に合わされて、生きて帰したら俺のメンツが立たねーんだよ!」

「それでも、今回は殺させるわけにはいかないの。こいつの親父はね、大物政治家の室山太一むろやまたいち。生かして交渉したほうがあなた達にとっても圧倒的に得でしょ? これはビジネスだよ」

「チビガキがあ! ビジネスとか生意気なこと言ってんじゃねぇよ!」

ギャングたちが一斉にいきり立ってきたので、ミハナはとっさに手で印を結ぶ。

火那噴かなぶん!」

真っ赤に燃える、巨大なカナブンの妖獣を召喚した。

その時だった。

入口の方から野太い声が鳴り響いた。

「おーい。俺がいないところで勝手に話しを進めてんじゃねーぞ」

一つ上のフロアに、背丈が180センチほどのイケメンが立っていた。

肌は浅黒く、サウス系であることを物語っている。

イケメンはへらついた笑みを浮かべながら、手すりに身をもたげ、ミハナ達を見下ろしていた。

「ジュン!」

「ミハナ、元気にしてたかぁ?」

彼はそう言いながら階段を降り、ミハナ達の元へやってくる。

「おー、火那噴かなぶんも元気にしてたか?」

ジュンが近づくと火那噴は火を納め、こうべを垂らしてお尻をフリフリと振った。

「そーかそーか」

そう言いながらジュンは火那噴の頭部を撫でまわす。

火那噴は昔からジュンによくなついているのだ。

「ミハナは…、相変わらずちっこいな」

ジュンは右口角を上げ、悪戯っぽい笑みを浮かべると、ライムグリーンに染められた彼女のショートボブを軽くクシャっとかき回した。

それから、この場を仕切っていた男に近づくと、

「何があった。ミハナが来たというから、定例会を引き上げてきたぞ」

ジュンの顔は、一変して真顔になっている。

男がジュンに状況を報告した。

「おまえ、なんですぐに俺に連絡しなかったんだ? 詰めてる最中にこいつが室山の息子だってのは、わかっただろ?」

「定例会の最中に連絡するのは失礼だと思いまして…自分たちでけりをつけようかと思っていたところ…、」

「馬鹿野郎!」

男が話し終える前に、ジュンは彼を殴った。

どうやら、ミハナがここに来たことを知らせたのは、この男ではなく他の誰かのようだ。

「おめー、あほか!? こんなチャンスめったにないんだぞ! こいつを殺したら全てがパーじゃねぇか!!」

「すみません!」

「ミハナ、依頼人に連絡してくれるか?」

「うん、鬼夊の秘書が仲介役になると思うけど。彼に電話するからちょっと待ってて」

ミハナはスマホを取り出し、この件の交渉窓口である鬼夊の秘書・冴木さえきに連絡した。

そして、軽く挨拶を済ますとジュンにスマホを渡した。

「秘書の冴木さん。電話、繋がってるから」

「オッケ、ありがと。あとはこっちで勝手にやるわ」

そう言って、ジュンはスマホを耳に当てると、通話しながら店の奥へと消えていった。

* * * * *

10分ほどしてジュンは戻ってきた。

「話はまとまったぞー。これから室山んところの人間が、このバカ息子を回収しに来る。ミハナはどうすんの? 室山んところに行くのか? それとも俺らと飲むか?」

「私は帰るよ。明日も学校だし」

「そか。ほんじゃまぁ、今日はありがとな」

「いや、いいよ。仕事だから」

そう言って帰ろうとすると、

「ところで、おまえらほんとにミハナを殺そうとしたのか?」

ミハナがジュンの方を振り向くと、ジュンは不敵な笑みを全員に向けていた。

「おまえら馬鹿だから教えといてやるけど、こいつはめちゃくちゃつええぞ。16歳の140センチそこそこの女の子だけどなぁ。おまえらなんかとは比較にならないくらい、人を殺ってるよ」

そう言いながら、ジュンはミハナの肩に腕を回した。

「こいつはただの妖術師なんかじゃなくてなぁ、ガキの頃から薬漬けにされた強化人間なんだよ。その上、あちこちサイボーグ化してるんだぜ。おまえら全員が銃を持って向かったところで、かなわねぇよ」

なぜジュンは、こんな話をくどくどとしはじめたのか。

それは、ジュンも最近サイボーグ化したからだ。

そして、サイボーグ化している人間は、サイボーグへの同族意識と、非サイボーグに対する選民意識を持ちやすい。

だからジュンはここで、「俺とおまえは仲間だよな」という同族意識に酔い、同時に仲間たちが非サイボーグであることを見下すことで、二重に酔っているのだ。

しかし、先程の不敵な笑みの裏には、もう一つのカードが忍んでいる。

それは、彼が自由に生きるサイボーグである一方、ミハナは鬼夊家の「犬」である、ということだ。

「いくらサイボーグ化した強化人間でも、犬じゃあ生きてる価値はねぇよなぁ」

そんな侮蔑の感情を同時にジュンはミハナに抱いているのだ。

仲間意識と侮蔑意識ー

一見、矛盾しているようだが、実はとても相性がいい。

このカクテルを好む人間をミハナはたくさん見てきた。

そして、ミハナは犬であるがゆえに、そいつらから舐めまわすように見られながら今日まで生きてきた。

「じゃあな、ミハナ。また何かあったらよろしく」

1-2

ーーはあ…。ひとまずはケリがついた

店の外に出てミハナが真っ先にすることといえば、

「よし、誰にも手を出されてない」

バイクの確認だ。

本当は、こんな場所にバイクで来たくはない。

マフィアやギャング関係者以外の乗り物は、すぐに盗まれるからだ。

しかし、緊急事態の際は、今日みたいにバイクに乗って駆けつけざるをえなくなる。

こういう時は、制限速度をオーバーし、速度メーターを振り切って爆走するのだが、

鬼夊きすい が裏から手を回すので、東京中の車両速度管理システムがミハナをスルーする。

ーーさて、室山の件も済んだし、鬼夊邸まで飛ばすかぁ。

…といきたいところだったが…、そうもいかない。

ミハナにはこの街での仕上げの作業が残っている。

怜婆レンばあに挨拶に行かなければ帰るわけにはいかないのだ。

ーー怜婆

怜フェンフィ。

この街を仕切る四大ファミリーの一角である、大陸系マフィアのボスだ。

先程の室山の件は、現場から直接ミハナ達のもとへ連絡があったわけではない。

情報が色々なところを迂回して怜婆の耳に入り、彼女がミハナ達に連絡を寄こしてきたのだ。

混沌としているこの街にも、一定の秩序がある。

その秩序を生み出しているのはこの街を創った四大ファミリーだ。

彼らはこの街の事務局のような役割を担っており、外部との交渉窓口にもなっている。

ここから怜婆のところまでなら歩いても大して時間はかからないが、彼女のビルの前に駐車しておけばバイクが盗まれる心配がない。

だからミハナは駐車場もかねてここからバイクで移動することにした。

* * * * *

バイクシートに座ってエンジンをつけると、ミハナは1分もしないうちに目的地に着いた。

目の前に建つ5階建ての古びたビル。

租界の統治者の1人がこのビルに鎮座しているとは、外目には想像もつかない。
しかし、中には最新のセキュリティシステムが配備されておりいるし、世界でも指折りの護衛たちが全エリアでスタンバイしている。

その上、このビル周辺の全ての建物は大陸系マフィアが利用しており、24時間体制で怜婆のビルに監視の目を光らせている。

一見、レトロで貧乏くさいこのビルは、実のところは最新鋭の要塞なのだ。

ビルは各階ごとに別々の役割を持つ。

1~3階は元医師であり、治療系の妖術に秀でた怜婆の知恵と経験とネットワークを活かした、非合法の医療ビジネスが展開されている。

ここで手に入らない薬はない。そして、ここでしか治せない病がある。

何事も、命には変えられない。

その言葉を象徴するかのように、治療を求めて世界中から大富豪や権力者がやってくる。

租界は公権力が入れないというだけで、一般人が立ち入るのは自由だ。

安全面も、4大ファミリーの庇護を得ていれば、ある程度は保証される。

とはいえ、危険なことに変わりはなく、入るには当然それ相応の覚悟が必要になるのだが…。

4階は怜婆がフィクサーとしてクライアントに応対するためのエリア。彼女の仕事はここに集中しているので、1日の大半をこの階で過ごしている。

5階は私室。同胞や友人も大抵は4階で会うため、5階に人をいれることはほとんどない。彼女が彼女になれるプライベート空間である。

* * * * * 

「怜婆に会いに来た」

ミハナが外に立っている、一見堅気にしか見えないスーツ姿の護衛に告げると、男の雰囲気は瞬時に裏社会のそれに変化した。

「おまえ、誰だ」

知っているくせに、彼らは毎度同じ言葉を言い放つ。

「鬼夊の使いで来た。怜婆も知ってるはず。確認して」

「待ってろ」

怜婆に直接連絡したほうが早いのだが、彼らのメンツを立ててあげないと色々と面倒くさいことになる。

なので、ミハナは毎度律儀にこの手続きを踏んでいる。

すると、スマホ越しに護衛が大声を上げ始めた。

「ボス、なんで5階なんですか!? こいつは4階に連れていくべきですよ!」

彼らが毎度ミハナに突っかかってくる原因は、これなのだ。

怜婆はいつもミハナを5階に呼びつける。

それを彼らは気に入らないし、嫉妬しているのだ。

これには大陸系特有の事情がある。

怜婆のもとには怜チルドレンや怜チルと部外者からは呼ばれている者たちがいる。

彼らは怜婆が引き取り、育てた、同胞である大陸系の孤児や、DV・ネグレクトに苦しんでいた子供たちだ。

彼らにとって怜婆は母以上の存在であり、絶対的な忠誠心と尊敬の念を抱く相手である。

怜婆の護衛は、そんな者たちによって占められている。

であるから、ミハナのように同胞でもなければ成人にも達しない16の子供が、5階に通されるのが悔しくて仕方ないのである。

「…わかりました。では、連れていきます」

護衛は通話を切った。

「…ついてこい」

ミハナの方へ顔も向けずに言い放つと、護衛はビルの中へと入っていった。

エレベーターに乗り、5階で扉が開くと、目の前に仕切りのない広い空間が現れる。

この光景には毎度圧倒される。

部屋は日本に降り立った怜婆が影響を受けた禅の精神を反映して、無駄なデザインや調度品を排除し、エレガントで洗練された作りとなっている。

壁一面に並べられた書物。これらは飾りではなく全て読み込んだらしい。

調度品は壺一つしか置かれていないが、それがかえって品格と美意識の高さを感じさせ、怜婆の世界観を絶妙に構築している。

怜婆はというと、1人用のアンティークソファに腰掛けながらお茶を飲んでいた。

齢80を越えるが背筋は未だにピンと張っており、「老い」という言葉を連想させない。

うしろに撫でつけられたシルバーグレイの髪は、理知的な顔を際立たせている。

ばっちりと着こなした紺色のスーツが、白い肌と170センチほどの長身によく似合っていた。

首元にはミシモトの黒真珠のネックレスをつけているが、彼女の品の良さが高価なアクセサリーを華美に見せない。

ミハナは怜婆以上にかっこよく、美しい高齢者を他に知らない。

* * * * * 

「怜婆、鬼夊から伝言。今回のことでは世話になった、だって」

ミハナはレーシングスーツに手を突っ込みながら、怜婆に伝えた。

「おい、おまえ! ボスの前では手を隠すな!」

護衛がミハナの頭に銃を突きつけながら怒鳴った。

「よい」

怜婆はお茶を一口すすり、茶杯を机に置くと、

「ミハナ。今お茶を用意させるからこちらへ来なさい」

そう言うと怜婆は近くにいる護衛の方へ顔を向け、お茶の準備を目で促した。

「室山のやつ、あと一歩遅かったら殺されてたよ。なんで租界なんかで飲んでたのよ。馬鹿じゃない」

ミハナが怜婆に話しながら近づいていくと、エレベーター近くにいる護衛が彼女の一挙手一投足を見逃さないよう、敵意丸出しで凝視してくる。

ーー護衛は心情を表に出しちゃダメでしょ! そんなに私が憎いんかい…

ミハナは心の中で呟いた。

「あいつはな、もう銀座や六本木で出禁をくらっているんじゃ。ミハナも知っての通り素行が悪すぎるからね。それに、安易に大金を持つと人はね、新しい刺激を次から次へと求めるようになる。そして、果ては危険な場所や薬にいきつくのじゃよ」

「そういうのが馬鹿だって言ってるの。それになんかムカつくんだよね。租界が金持ちどもの見世物小屋にされてるような気がしてさ」

「そういう馬鹿も、私たちの大事な資金源なのじゃよ。ミハナ、いつまでも馬鹿の欲望に感情を振り回されてないで、利用する側になりなさい」

ミハナは少し面白くない思いがして口を尖らせた。

その時ちょうど護衛が新しい茶葉とお湯、それからミハナ用の茶杯を持ってきてくれた。

「ありがとう」

ちょうど良いタイミングで運ばれてきた気がして、ミハナは少し助かった思いがした。

「あなた達、ミハナと2人きりで話がしたい」

怜婆は、護衛に席を外すよう促した。

「…わかりました。では、何かありましたらすぐに知らせてください」

そう言い残して、彼らはエレベーターに乗っていった。

1-3

「ミハナ、脱ぎなさい」

「うん」

部屋の奥に行き、背を向けるとミハナはレーシングスーツからTシャツ、サラシに至るまで全て脱ぎ捨てた。

青白い肌がむき出しになると、怜婆レンばあの手によって彫られた背中一面に咲き誇る菊のタトゥーが姿を表す。

これは、怜婆がミハナに施した意識の結界だ。

ミハナは6歳の時、租界から東ベラス共和国へ渡ったとされている。

「されている」というのは、ミハナは6歳までの記憶を喪失しているからだ。

東はミハナを工作員にすべく、幼少期から大量の薬を注入して強化人間へと仕立て上げ、また、軍事的洗脳を日夜行っていた。

そして東は、DNA検査の結果からミハナの身長の限界が142センチであることがわかると、その身長に達した9歳の時に早くもサイボーグの手術を開始した。

国連加盟国は一様に法律で18歳以下のサイボーグ化を禁止している。

しかし、東は子供にもサイボーグ手術を施していた。

その中でもミハナのサイボーグ化は史上最年少である。

一方、妖術に関しては、ミハナ専属のトレーナーとして、日本から高額で呼び寄せられた​密教の破戒僧が日々の鍛錬の相手だった。

結果、彼女は10歳で工作員の実行部隊としてデビューすると、最強の戦闘型工作員へと育っていった。

そして、13歳の時、彼女は要人の暗殺とビル爆破の指令を受け、同志達と共に日本へ密入国する。

ミハナによる要人の暗殺は成功。

しかし、ビルの爆破に関しては実行前に同志の1人が捕まってしまい、失敗に終わった。

残った同志たちは解散し、それぞれが個別に逃亡生活を送ることとなる。

ミハナは要人暗殺の実行犯だったため既に日本が総力をあげて彼女の情報を収集していた。

結果、逃亡開始2週間後、鬼夊の手の者たちによって捕まってしまった。

そして、鬼夊本人が現場へと駆けつけて、ミハナの瞳を凝視すると、自らの犬にできると判断し、彼は彼女を確保したことを隠ぺいする決断をした。

ミハナの戦闘型工作員としての実力は、もし脱洗脳に成功しさえすれば、自らの駒として大変有益であると考えていたからである。

そのための第一段階として、日本における脱洗脳の第1人者である精神科医、心理学者、脳科学者たちを呼び寄せ、脱洗脳を開始した。

解放は順調に進んだ。

そして、仕上げの診察をしたのが、その道にも明るいことで知られる怜婆だった。

怜婆は、ミハナはまだ状態が不安定であることと、今後どう変化するかがわからないことから、定期的に自分のもとへ来させるよう伝え、鬼夊はそれを了承した。

そして、あくる日ミハナが早速に怜婆を訪ねると、

「今度は鬼夊たちがおまえに洗脳を施し始める可能性がある。もう誰にも洗脳されることがないよう、おまえの意識に結界を張ってやろう」

そう言うとミハナを治療室へと連れていき、怜婆自ら、妖気を込めた針で手彫りを開始した。

普段涼しい顔で気功を行っている怜婆があの時ばかりは汗を流し、全身全霊で治療にあたってくれていることが背中越しにミハナに伝わってきた。

それ以来、ミハナが怜婆のところへ立ち寄ると彼女を診断するようになっている。

* * * * *

怜婆はミハナの背後に立つと、左手を彼女の頭に、右手を背中に当て、診断を開始した。

怜婆の手は暖かく、ミハナの背中は徐々に熱を帯び始める。

そして黒一色に彩られていた刺青いれずみは朱色へと変化していった。

「誰かが意識へアクセスした痕跡はなさそうじゃな」

どうやら、知らぬ間に洗脳されているようなことはないようだ。

「妖気、血、津液、どれもバランスよく身体を巡っている。薬やサイボーグ化による副反応も出ていないね」

怜婆は意識の診断と同時に肉体も診てくれる。

この刺青を通した診察方法は、深い次元まで心身の状態を診断することができる。

「どこも問題ないよ。服を着なさい」

「うん」

ありがとう、の一言がミハナはなぜだか恥ずかしくて言えなかった。

そして、怜婆は礼儀にうるさいのにこういう時には何故だか口出ししてこない。

ミハナが雑に服を着ていると、

「ところで、あんた髪の色変えたね」

ーーやっぱそこ突っ込んできたか…!

ミハナはギクリとした。

怜婆は、最近の若者のファッションをチャラチャラしておる、と言って嫌う。

「せっかく奇麗な黒髪だったのに。こんな緑色に染めたら痛んでしまって台無しじゃよ」

そういいながら彼女の髪にそっと触れた。

「それに最近あんたメイクしてるね。しかも会うごとに濃くなってるじゃない」

怜婆は不満気に言った。

「うるさいなぁ。私だって女の子のファッションに興味あるんだよ。鬼夊にも今のところ文句言われてないし…。それに、私はチビで童顔だからこうしたほうがなめられにくくていいんだよ」

「何言ってるんだい。あんたはベースが奇麗な顔立ちなんだから飾り立てない方がいいの」

ーーでた! 怜婆のナチュラルメイク至上主義!

ミハナは心の中でつっこんだ。

「だいたいねぇ。なめてくるって、そんなの放っておけばいいんじゃ。おまえに手をあげたところで、どうせかないやしないんだから」

「怜婆、そういう問題じゃないんだよ…。それに、仕事で必要とあらば黒く染められるし」

ミハナはこの話題から早く離れたくて、話題を強引に切り替えた。

「それより怜婆。私は今日は室山のことなんかよりジュンの方が気になったよ」

「ジュンがどうかしたのかい?」

着替えが終わりミハナは怜婆の方へ振り向くと。

「あいつ、最近会うたびに嫌な感じになってる。前はあんな奴じゃなかったのに」

ミハナは下を向き、口を尖らせながら言った。

「あの子は成人してからサイボーグ化を始めたからねぇ。人体改造をした後にちゃんとしたケアを受けないと、自意識の肥大化は避けられないんじゃよ」

怜婆がちょっと疲れ気味にソファーに腰掛けると、火那噴かなぶんが呼び出されてもいないのにスッポンくらいの大きさになった現れ、ソファをよじ登ろうとしていた。怜婆がそれに気づき、抱き上げて、膝に乗せた。

「おお、火那噴。元気じゃったか」

怜婆は火那噴の体を撫でながら、ミハナとの会話に戻る。

「人は筋肉を鍛え上げただけでも傲慢になりやすい生き物じゃ。逆もまたしかり。肉体の変化というのは、必ず心にも影響する。心身不可分ってやつじゃな。それがサイボーグ化となれば、神にでもなったような気分になってもおかしくない。全く別次元の身体になるわけだからのう」

怜婆は軽く目を見開き、手をパッと広げてその変化を表現した。

「私にはわからないなぁ、その感覚」

「ミハナは子供の内にサイボーグ化しておるからのぅ。自意識が確立する前の肉体の変貌は、成人のそれに比べると、自然なものとして受け止めることができるんじゃ。それでも、あんたの場合だって術後の副反応を防ぐために専門家のチームが組まれていたはずじゃよ。
諸々含めてね、ミハナみたいな形でサイボーグ化した人間なんて、世界でも稀じゃ。」

怜婆は自ら茶杯にお茶を入れ始めた。

「ふーん。でもさあ、それならなんでジュンはサイボーグ化したんだろ。あいつ、ずる賢いからもともと稼ぎ良かったじゃん。なら、副反応のリスクを犯すより、サイボーグのボディガード雇ったほうが賢いと思うんだけどなぁ。それに、ジュンって相当な妖術の使い手だよ。サイボーグになんかならなくたって充分強いじゃん」

怜婆はミハナにお茶を飲むよう、目で促した。茶杯を手に取ると、2人は同時にお茶を口に含んだ。美味しい、というか高そうな味がした。

「あの子は昔からさとい子じゃったからのぅ。意味のないことはしないよ。今あの子はサウス系をまとめあげて、一大勢力を築き上げることに必死なんじゃ。気づいてたかい?」

「さすがに、今はね。前はヘラヘラして女の子と遊んでるイメージしかなかったんだけどなぁ」

「そっちの方が擬態だったんじゃよ。子供のころからあの子の目には野心が潜んでいた。でも、それを表に出すにはタイミングを見極める必要があったんじゃ。それまでは周りに合わせてたんじゃろう。まぁでも、擬態という表現は違うか。どちらもあの子の本質じゃな」

「うん、私もそう思う。女好きの野心家だよ。あー、やだやだ」

ミハナは腕を組みながら顔を軽く左右に振った。

「サウス系の連中はのぅ、根が陽気でいい人たちが多い。でも、それは裏社会でビジネスをやっていくには不利になりやすいんじゃ。私らのように陰気で狡猾な人種の方が有利に働きやすい。我々は何事にもすぐ団結し、ねちっこく考え、実行する」

怜婆はお茶をすすると更に話しを続けた。

「特に団結と規律がサウスの連中には欠けていた。彼らは自由気ままにやっていたからね。でも、裏社会では団結と鉄の掟は必須なんじゃよ。これを持つ者たちに持たざる者たちは絶対に勝てない。だから彼らは一大勢力を築けなかったんじゃ」

「そこでジュンが動き出したのかぁ。でも、そのこととサイボーグ化に何の関係があるの?」

そういうとミハナはお急須にお湯を注ぎ足し、怜婆と自身の茶杯にお茶を入れた。

「あの子は自らをサイボーグ化することで、サウス系でも成功できるってことをわかりやすく提示したんじゃよ。ギャングやこの街の子供たちにとってサイボーグは憧れの対象だからのぅ。しかし、サイボーグ化には、えらい大金が必要になる。今までサウス系からサイボーグが1人も出ていないということは、そこまでの稼ぎをあげられるような人間がサウス系にはいなかったということなんじゃ。そんな中、ただでさえカリスマ性のある若者がサイボーグ化したことで、今ジュンのもとに急速に人が集まっておる」

「そういえば、今日定例会に行ってたって言ってた」

「ああ、今関東中のサウス系ギャングがジュンの傘下に入って、毎月定例会をやっておるよ」

そう言うと怜婆は視線でミハナにお茶を注ぐよう促した。彼女はそそくさと準備しながら、怜婆に問うた。

「このこと、鬼夊は知ってるの?」

「もちろん知っとる。よく話題にも出とるよ。老人たちにとってね、あの種の手合いは驚異なんじゃ。私たちと損得勘定の物差しが違うからね。私達なら引くところでも奴らは前に出てくる。木っ端どもがその姿勢ならすぐに潰すんじゃが、ジュン達くらいの規模になると攻撃力は測りしれんからな、そういうわけにもいかんのじゃ。奴らはチャンスと見るや、それは二度と手に入らないものと考えるからのぅ。死者を大量に出してでも、もぎ取りに来る」

怜婆はそういうと、火那噴かなぶんをソファに置いて立ち上がり、部屋の西側にある丸い窓の前まで行き、障子を開けた。

分厚い防弾ガラス越しに、ネオンがひしめく租界の夜景が広がっている。

夜だというのに街中をカラスが飛び回っていて、その内の一羽とミハナは目が合った。

「貧しい想いをしている幼子がじゃ。この眩暈がするほどケバケバしい輝きを眺めているとじゃな。徐々に心を狂わされてしまうんじゃよ。その中には王になる夢に憑りつかれる者もおる。昔からよくある話じゃ。ジュンもその1人じゃよ」

怜婆は物思いにふけりながら呟いた。

「怜婆は、なんでボスになったの?」

「私かい? 私は、一族に面倒な役を押し付けられた結果じゃよ。できれば昔の生活を続けたかったわい」

そういってこちらを振り向いた怜婆の顔は少し不機嫌そうだった。

ーーそういえば、怜婆って昔は医者だったみたいだけど、その頃の話はしないな

ちょっと聞いてみたいような気もしたが、藪蛇になるといけないと思ったミハナは、その質問を胸に納めることにした。

* * * * *

「ところで、おまえさんもゲーマーの端くれなんじゃろ。ちょっとこっちに来てくれんかのぅ」

怜婆は突如、軽い足取りでPCスペースへ向かった。

1-4

怜婆レンばあのPCスペース。

それは、この部屋の雰囲気には似つかわしくないハイテクエリアである。

常に最新最高スペックのCPU、グラフィックボードと、それに不随するアイテムが用意され、カスタマイズされている。

元祖リケジョここにあり、といった感じだ。

「あれ、また新しいノートPC買ったの? 必要ないじゃん、こんなにー」

「馬鹿言うんじゃないよ。私はマップルのPCは初期からずっと買ってるんじゃ。新しいのが出たらその日に買うのが流儀ってものじゃよ」

ーー怜婆みたいな人って、新しいPCを買うこと自体に意味があるんだろうなあ…。

と、ミハナは心の中で思ったが、絶対に口には出してはいけないことを心得ていた。

「で、ここで何すんの?」

「うむ。私は最近VAINSをやってるのだが、なかなかランクが上がらなくてのぅ。おまえさんに私のプレイを見てもらって問題点を指摘してもらいたいんじゃ」

「え! 怜婆、VAINSやってるの!?」

VAINSは競技色が強いシューティングゲームで、3年位前から若者の間で流行っている。

去年はとうとう世界大会の賞金額が億に達し、Eスポーツの代表格に仲間入りした。

ーー確かに、お婆ちゃん系ゲーム配信者はいるけど、まさかこんな身近にいたとは…。

「やってるも何も、ベータ版からやっとるぞ」

ーーマジか。

「ここ半年、一緒に戦い続けてるクランがあってな。先月プラチナランクにようやく到達したのじゃが、どうも私が足を引っ張ってる気がしてな。みんなのためにも強くなりたいんじゃ」

「いや、プラチナってだけでもう充分だしー! みんなにも怜婆の年齢言えば納得してもらえるよ!」

「みんなには28の医療系コンサルタントと伝えておる」

「鯖読みすぎでしょ! てか、さすがに声でばれるじゃん!」

「ボイスチェンジャーを使っとるんじゃ。便利だのぅ」

「なんのためにそんな手の込んだVAINS女子みたいなことやってんのよ!」

「そりゃ、みんなに気を使わせないためさ。それに私はゲーム外で結構、頼られとるんじゃよ。個通やチャットでこっそり私に、恋愛や仕事の相談をしてくるんじゃ」

どんなに大金を積んでも一見さんお断りな租界のドンに、タダで相談に乗ってもらっているのだ。

的確過ぎるアドバイスと包容力を皆が頼るのも当然である。

「まぁでも、オフ会に行けないのが残念じゃのぅ」

護衛に囲まれた怜婆が登場したらクランのメンバーはドン引き通り越して恐怖にかられるであろう。

「では、準備するから見ててくれ。ところでおまえさんは、ランクどの辺なんじゃ?」

「そりゃ、私は東で子供の頃からこういうの使ってシミュレーショントレーニングしてたし、強化人間のサイボーグだからね。最高ランクのエンペラーだよ」

「むう、初めてミハナに敗北感を抱いたぞ」

そう言った怜婆の顔は少し笑っていた。

そして、VRゴーグルを顔に取りつけ、ヘッドセットとゲーミンググローブを着用し、プレイを開始した。

ミハナはモニターに配信される怜婆のプレイを見ながら分析する。

ーーう、うまいな、この婆さん…

ミハナは腕組みをしながら、苦笑いした。

* * * * *

30分ほど経過したところで、ミハナによるコーチングもどきは終了した。

「ふー。あんたの指摘は適切じゃのぅ。ありがとう」

「怜婆、立ち回りはすごくいいんだけど、エイム力(敵に弾を当てる精度)が年齢的にどうにもならないからさあ。今とりあえずできることと言ったら、まずはマップの完全な把握だよね」

「マップの把握か。自分では覚えたつもりだったが、まだまだ詰めが甘かったようじゃな」

怜婆は顎を指でつまみながら数回頷くと、中央のモニターにマップを写し出し、真剣な顔で眺め始めた。

この人のこんな姿を見ても、誰もゲームの分析をしているとは思うまい。

敵の事務所の襲撃や、強盗の計画を練ってるようにしか見えないだろう。

「時間が空いた時にでも、少しずつ見直していくか。ミハナ、改めてありがとう」

怜婆はミハナの方を振り向くと、笑顔で軽く頭を下げた。

「お礼なんていいよ。私の方がいつもお世話になってるんだから」

ミハナは小恥ずかしくなり、下を向いた。

それから時計を見ると、

「怜婆、私そろそろ行かないとだ。室山の件を直接鬼夊に伝えなくちゃいけないから」

「すまんすまん、仕事中だったのについ長居させてしまったね。私も外出する用事があるから、一緒に出よう」

怜婆はPCをシャットダウンし、軽く身支度をした。

「あとの片付けは護衛達がやるから、そのままで大丈夫じゃ」

ミハナと並んでエレベーターに向かおうとした、その時だった。

「♪~♪~♪~♪」

怜婆のスマホが鳴り出した。

着信名を見て、応答ボタンを押す。

「何かあったのか?」

少しピりついた気を放ち、怜婆は鋭い眼光で前を見据えながら問うた。

「…それは確かなのか? ああ…ああ…、わかった。私はこれから車に向かうから、乗ったらまた連絡する。その間に、おまえはこのことを鬼夊に伝えておけ」

会話を終え、スマホを切っても怜婆の表情は険しいままだった。

「何があったの?」

ミハナは何だか嫌な予感がした。

怜婆は彼女を見つめ、しばらく沈黙した。

そして、口を開いた。

「ジアンが東ベラスから日本に密入国した」

「…噓でしょ!?」

ミハナは思わず叫び声を上げた。

「たしかな筋の情報だ。鬼夊にも連絡するよう伝えたから、帰り次第、今後の方針を伝えられるだろう」

「そんな馬鹿な…」

ミハナは驚きのあまり目を見開き、視線は行き場を失った。

ーージアン

経緯はわからないけど、私と同じく6歳で日本から東ベラス共和国に渡り、工作員として育成された女の子。

生きていれば、私と同じ16歳になっているはずだった女の子。

そう、ジアンはもうこの世にいないはず。

2年前に、私がこの手で殺したのだから。

第2話へ続く

第1話:本記事
第2話:https://note.com/chimakiyoshii/n/naf3d08ddb8f4
第3話:https://note.com/chimakiyoshii/n/n776d06915fb7
第4話:https://note.com/chimakiyoshii/n/n6bd85b14b855
第5話:https://note.com/chimakiyoshii/n/nafaba375dc65
第6話:https://note.com/chimakiyoshii/n/n60f24b49c534
第7話:https://note.com/chimakiyoshii/n/ned05b7f5adcb
第8話:https://note.com/chimakiyoshii/n/n4789d6c0f0d0

各話へのリンク(全8話)


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