放置プレイ〔2ヶ月16日〕

*過去の自分のブログの転載です。

🍀🍀🍀

<2012/01/19 thu ☀☁>

生後77日。

今日も電車とバスを乗り継いで病院に向かう。

2ヶ月半毎日毎日通った道。

あと少しだと思うと感慨深い。

2時過ぎから面会。

おめめパッチリで起きていた娘ちゃん。

掛け布団代わりのバスタオルを足ではねのけ、足は丸出しでしかもタオルの上にデンと出している。

激しいな、おい。

しかも珍しく左側を向いている。

なので母ちゃんもそっち側へ。

母ちゃんに気付いてニコニコしてくれた。

今日はお隣の子が何かの検査があるみたいでバタバタしていて、その代わり娘ちゃんは母ちゃんも来たので軽く放置。

アラームがピコピコ鳴っても誰も止めに来ないで放ったらかし。

いや、文句じゃなくて、むしろ逆に放置されていたから落ち着けてよかった。

術後のICUから病棟に戻って1ヶ月近くが経ち、術前と合わせると2ヶ月くらいこの部屋にいる娘ちゃん。

冗談を言えたり気楽に話せる看護師さんも増えたが、根が人見知りなので話し掛けられると受け答えに困ってしまうのだ。

まわりは慌ただしいが、二人でのんびり過ごす。

手足のバタバタの相手をしたり、時々「あ~」とか「う~」とか言うので返事をしたり、隣から聞こえるCDに合わせて歌ったり。

突然への字口になって泣きそうになったので抱っこをすると、すぐに満足してバタバタと下ろせと訴えられたり。

今日はずっと左側や真上を向いている。

おしっこをかなりしていたのでおむつ換えをする。

おむつが入ってる戸棚は反対側にあるので、ベッドの柵を上げて反対側に移動して娘ちゃんをふと見ると、こっちを向いている。

あれ?さっきまで向こうを向いていたのに。

戸棚をゴソゴソしておむつを取り出し、ついでに洗濯物の入れ換えなんかをしていると「ふにゃ~」と泣き声。

娘ちゃんの方を見て「どうしたの?」と声を掛けるとピタッと泣き止む。

おや?

もしやと思いながらおむつを持ってベッドの向こうに回りながら娘ちゃんを見ていると、母ちゃんを顔で追っている。

母ちゃんの移動に合わせて首をグルッと動かしている。

おお、スゴいじゃん。

さっきの「ふにゃ~」は「こっち向いて~」の「ふにゃ~」かな。

甘えてる?

母ちゃんを母ちゃんと認識してきてくれたのかしら?

毎日長くても2時間程度しか一緒にいられない母ちゃん。

「誰だ、こいつ?」と思われてても仕方ない。

でも、でもそんな日々ももう終わりだ。

いっぱい抱っこして、いっぱい話し掛けて、いっぱい大好きを伝えて、いっぱい愛情を与えて過ごすんだ。

また離れて過ごさなければならない日が確実に来るんだから…。

おむつを換えてスッキリしたらまたご機嫌で大暴れ。

湿った手足がタオルを削り、埃だらけ。

でも赤ちゃんの手のひらのゴミを取るのが結構好きなのよね、私。

しばらくすると真上を向いて固まる娘ちゃん。

さては眠くなったな。

子守唄を歌いながらとんとんして頭を撫でると、だんだん目が閉じてきて寝た。

眠くなってもグズりもせず、抱っこもしないで寝てくれる。

ありがたいが切ない。

まだ2ヶ月なのにね。

そうっと柵を上げて、そうっと荷物を持って、そうっと看護師さんに挨拶をして病室を出た。

また明日、娘ちゃん。

こう言いながら帰るのもあと一日だね。

明後日には一緒に帰れる。

幸せいっぱいの中、ふと苦しくなってしまった。

また手術は必ずある。

少なくとも2回。

娘と息子と家族4人で楽しく幸せに過ごす数ヶ月のあと、またあの日々が待っている。

手術をしなければ娘の未来はない。

わかっている。

わかっているけど、幸せな日々のあとのあの苦しい日々に、私は耐えられるだろうか。

術後のICU。

私はたくさんの点滴や輸血や人工呼吸器やNCPAPや鼻チューブに関しては、かわいそうだし申し訳ないと思ったけど、娘のその姿を見てもあまり落ちることはなかった。

むしろこのすべてが娘を支えて助けてくれてるわけで、頼もしいと言うかありがたいと言うか誇らしいと言うか、嫌な感情ではなかった。

私が辛かったのは娘の目。

生後1ヶ月でだんだん表情が出てきた矢先の手術。

麻酔や薬でぼや~んとしてる娘。

目は開いてるのに何も見ていない。

見ても何も感じていない。

ただ見てるだけ。

虚ろで生気のない目。

これが苦しかった。

寝ててくれた方がいいと思った。

今は急成長期。

これからもっと表情も出て笑ったり怒ったり、だんだんお喋りもするようになるし、動きも激しくなるだろう。

そんな娘の成長を手元で見ながら、笑ったりハラハラしたり喜んだりする日々。

そのあとにまた必ず来るあの日々。

手術によって娘を失う可能性だって0ではない。

大丈夫だと信じてはいても、やっぱり怖い。

怖い、怖い、怖い。

帰りの電車でそのことを思い出してしまい泣けてきた。

でも泣いててもしょうがない。

本当に怖いのは母ちゃんじゃなくて娘ちゃん。

その娘ちゃんがやっと帰ってくる。

娘ちゃんの生活リズムをつかむため、そしてばばにも娘ちゃんのお世話に慣れてもらうため1~2週間くらいは実家のお世話になるのだが、そのあとは家族4人の生活になる。

くよくよ気に病んでもしょうがない。

笑っていても泣いていても同じだけ時は過ぎる。

手術の日は必ず来る。

ならば笑って過ごそう。

またあの日々が来ても、娘ちゃんが心の中で笑っていられるように…。

娘ちゃん、一緒に帰ろうね。

『退院まであと2日』


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