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【声劇台本】騎士と姫 真実

声劇台本【騎士と姫 真実】

第3話


(んにゃーん)


姫野

ハヤト兄さん
私のことわからない?

登坂

え…
…いや あ、の
なんで 夢のなかの騎士の名を知ってるんだ?
お前も同じ夢見たりとかか?

姫野

ハズレ

登坂

…ハズレ?
じゃあ、寝言か?
俺、寝言ひどいからな
……まて わからないってなんだ?

あれは 夢じゃないとか…言わないよな?

姫野

ハズレだけど
半分は…
あってるとしたら?
兄さんはオーランドで私が姫だとしたら?

登坂

そんな、夢みたいなはなし…
お前頭がおかしくなったのか?
前から
変なこと言い出したりすることはあったけど……
それにしたって……

姫野

ねぇ
本当のはなしだったら
全てを知りたい?

……はぁ、聴きたいって顔に出てる
まだ 完全に信じたようじゃないけど いいか

むかしむかし とある国に
騎士オーランドと姫マリージアがいました。
ふたりは当たり前のように惹かれあいました。
けれど
結ばれることはありませんでした。
オーランドは死に姫は…

登坂

なぁ、それは
なんかの童話か?アニメとか?
ちょっと内容は違うけど見た夢に似てる。
気づかないうちに目に入っててそれが夢に?
いや、でもやけにリアルだったんだよなぁ

姫野

だまって聞いてて。
童話でもアニメでもないから。

王宮魔法使いの
目には見えない矢じりが姫の背中に刺さり
沢山の血が出て 痛くて 死んでしまうと思いました。
騎士は沢山の血と 言われた言葉と 意識のなくなった姫の姿に泣き叫び、正気を失い
姫を抱きかかえたまま、王と国に嚙みつきに行き
自決しました。
ですが 数刻過ぎたころ、姫は目を覚まします。
魔法使いの放った矢は
命を奪ったように見せかける魔法。
時がたてば 生き返るようになっていました。
王女が務めを果たせるように。
騎士はほかにいても王女は彼女ひとりだったから。

登坂

まり…
作り話とかじゃ、ないんだな?
俺がオーランドで、お前は姫…

姫野

そうだよハヤト兄さん
でもね
私たちの始まりは、オーランドとマリージアじゃないの。
もうひとつ前の前世があるの
その時 私はハヤト兄さんに
命を奪われた。
恋人だった、けどね。

登坂

前世?
さらにほかにも??
いや、それはいい…よくないけど
それより
…俺はなんで、そんなこと。
まったく思い出せないけど

それもお前の言う真実なんだよな?

姫野

最初の私たちはね
ただの人間と魔女だった。
あなたは私が魔女だとは知らずに
普通に恋に落ちて恋人になった。

登坂

それが何で?!どうなったら殺すとかなるんだよ!

姫野

落ち着いて
話すから。
あなたは魔女狩り隊に入って
ある日
私は、あなた以外の隊につかまって
顔に ずだ袋を被せられた。
それをはずされることがないまま
魔女裁判が終わって、火あぶりの準備ができたころ
あなたの隊がきて
あなたは魔女の命を奪うために
槍で私を刺し火を放った。
私はほんの少し聞こえた声で
あなただと分かった。

登坂

そぅ、なのか……
お前は声を出さなかったのか?
聞いたらその時の俺もわかって、やめたり……
いや
あの…思い出せないのに、ごめん。

姫野

……その時自分に残っていた魔力で呪いをかけた。
いつ生まれ変わっても出会えるようにって。
それ以降は私に魔力はなくなっていた。

声を出さなかったのは私を庇ったらあなたが殺されちゃうから。
でも、あなたは私だとあとから知って後を追った。

そこからは
毎回記憶があるのは私だけ。
呪いは解けない。私たちは出会って恋に落ちる。
でも
結ばれずどちらかが死に残ったものは後を追う。

それなら血のつながった家族にって願ったの。
恋に落ちなければ呪いのレールから外れるかもしれない
家族ならずっと一緒かもって。

登坂

魔力とやらはなくても叶ったってのか。
今がそう、だよな?

姫野

うん
神様のサービスかな。
私ずっと幸せになりたかった。
魔女の時の私は幸せなんか感じたことがなくて
あなたとの恋が唯一幸せだったの
だからきっと呪った時の私はおかしくなっていた。
でも途中で気が付いちゃった。
オーランドに幸せになってもらいたいんだって。
私とじゃなくても。

……はやと兄さん?


登坂

ぁうう…なんだこれ
映像が頭に流れていく。

うあぁぁ

はぁはぁ
はぁー。

…今
思い出しました。
私のマリージア。
とは言っても騎士オーランドのだけですが。

(ため息)

私だけが幸せになどなれませんし望みません。
私に、あなたのいない幸せなんて存在しません。
だから
姫…逃げてください
一緒にいられるなら 生きていけるのならば どんなところでもよい

……どうしました?
マリージアが 昔、私に仰ったことですよ?
今度は私から言っただけです。

姫の願いが届き
兄妹に生まれてしまいましたが
残念ながら私は
あなたに恋をしてしまっていました。
遠くに逃げましょう。
誰も知らない街でなら
夫婦になれます。
ひっそり暮らしましょう。

子づくりは、約束できませんが。

呪いのせいでも何でもなく
オーランドでもなく
登坂はやとは姫野まりと一緒に生きたい。


ナレーション

その後
海外に移住したふたりは衝撃の事実を知る。
兄妹と言っても血は繋がってはいなかったのだ。
2人はしっかりと結婚し子供達もたくさん生まれた。
そして今世は
どちらも寿命まで長生きした。
後を追うなんてことはなく
子供達に看取られた。

幸せになれたふたりの呪いは今やっと終わりを迎えた。



end





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