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私が世界を救うまで 第9話

【滅びの木】

「いつまで叫ぶの?
叫んでも私にはなんの意味もないわ。あなたが疲れちゃうだけよ。
私はね、なぜかはわからないけど、いつもどんな攻撃をうけても傷のひとつもつかないの。」

ユーンは四大精霊全ての愛し子。
彼らが全ての力でもって守り抜いている状態だ。

「……へんなやづ…がァァ、触るなぁァァ!!」

ユーンは
精霊たちの全力の守りなど微塵も知らないままに危険生物に触る。

「うわぁ、やっぱり。」

ねちょってしたと言いながら撫でると
手の平がジュウっと酸で溶けたような匂いと音がした。
四大精霊の全力あっても
ユーンから危険生物に触ってしまっては多少手が溶けてしまうのだ。

「な"に"してる"」

「んー……、私のおかぁさんてね?
みんなが恐れるエンシェントドラゴンってやつなんだって。」

グルルル

ドラゴンは
今そんな話をする場面か?と言っているようだ。

「でもね?
ウロコはピカピカでかっこいいし、鳴き声や炎は遠くからでもおかぁさんのだってわかるぐらい凄いの。
そして、私には大事なおかぁさんなの。」

あなたすごい
私に傷をつけるなんて…… と表情を変えることなく、撫でるのも止めずに言った。


【天界水晶鏡の部屋】

「……ドラゴンが照れながら地面をダンダン叩いていますね。ぁ、ひび割れができた……」

滅びの木の周りで生きている人間はユーンで、
そのなかなか見ないだろう光景を見れているのは天界の水晶鏡で様子見しているふたりだけだった。

「あのドラゴンはユーンの実母を殺しましたが、ユーンを殺せませんでした。四大精霊の愛し子だからではなく、彼女もまたユーンの魂に魅せられた1匹なのです。あれは喜んでいるのでしょうね。」

「ユーンは一体何者なんですか?ソロネ様が干渉してまであの世界に送ったのはなぜですか?」

水晶鏡は見るだけではなく、天界の上層部であれば
天の声として、啓示をもたらすことができる。

コンコンコン

「ラファエル?
ワタクシを呼びつけるとは何事ですか?」

「ソロネ様、大切なお時間をいただきありがとうございます。つきましてはあなた様の干渉により生じているこちらの戦いをご覧下さい。」

「そ!!?」
は、はじめまして……の顔で分からなかった深淵級社畜(※エリート社畜)が驚く。

ソロネがふぅとため息をひとつ落とすと床が燃えた。
神の戦車。炎の車輪なのだ。

うわぁあと慌てて消すエリート社畜。
床に癒しの力を使い修復するラファエル。
何も無かったかのように元通りだ。

床にも癒しが使えるんだ…とわかる。

「……水晶鏡から啓示ならしませんけど。
あぁ、素晴らしいデスね。ワタクシがあの世界に送り込んだ猫は。」

猫?
あの危険生物が??

「…ソロネ。あれはただの猫じゃないでしょう?
猫の神バステトじゃないですか。無理やり連れ去り、あの世界に送り込んだんでしょう?
啓示は、この場で全てバレたならもしかしてと淡い期待しかしていなかったのでいいです。
ただ、本来は人間を守る側なはずの猫神に何を吹き込んだんです?」

「なにも?
あれは残忍な人喰いの邪神バステトという面だけを取り出しただけですよ。いわば分体です。
邪神だけを取り出すのは簡単ではなかったですよ。あちらは神でワタクシは天使でしかないですし。」

……知っていましたか?あの世界ができた頃の話を、とソロネは死んだ魚のような目で話し出す。
空気が変わったように感じる。炎の車輪なのに冷気がでているような冷たさにゾワゾワした。

「…たまたまあの辺りで聖戦があったんです。ワタクシはただの車輪でしたが、たくさんの目がありますから
ひとつの目で見てしまったのです。可愛らしい猫たちを生贄にしている様子を。1度ではなく、何度も何度もありました。ワタクシたち神はそのような生贄を望んでいませんでした。
啓示を示しても終わらないその残虐な行いは、ワタクシには不可解で許せない事だったのです。
人間ごときが神や天の何を知ってそうするのか?
率直にいうと不愉快でした。
バステトは猫を守りたい気持ちだけでワタクシに協力してくれると言いました。だから、ワタクシはただあの世界に戦車で送っていっただけです。神の乗る戦車ですからね。」

クスクスと笑うソロネ。


天界
全ての神と天使が住まう場所。
神たちは我儘。天使たちはその姿を身近で見て学ぶ。
堕天したものは去り、利害関係の一致によっては手を結び地に足を下ろした。
人知を超えた力で世界とひとを掻き乱す。


ユーンはなぜ……?


To Be Continued


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