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生まれ落ちたときから、あお。

宇多田ヒカルは、青い曲の中でこう呟いていた

女の子に生まれたけど 私の一番似合うのは
この色

ねぇ、それ、わたしもなの






青には歴史がある。青は、最初は青ではなかった。

古代では、海は「緑がかった葡萄酒色」だったし、空は「濃い緑」や「薄い黒」だった。今では当たり前に描かれる青い水は、15世紀まで存在しなかった。

しかも青は最初キュアノスやグラウコスなど2種類の名前で呼ばれ、それも黒や緑とごったにされていた。ラピスラズリなどの深い青を指しているかと思えば、闇もそれで表現されていた。なんでこんな鮮やかな色を指す言葉が現れるのはこんなに後だったんだろう。それだけ最初から身近にありすぎたのだろうか。空も、海も青だから。人間の脳の視覚と言語の発達をそこに感じて、なんだかワクワクした。きっと進化の過程で人間は青をゆっくりと見つけ出した。鮮やかに、目が覚めていくように。

その証拠のように、『青』という名前が生まれてから人はずっと混乱している。昔は青色顔料がラピスラズリやアズライトからしかとれず、とても高貴な色、神聖な色として扱われ、悪魔を払ってくれると信じられていた。その一方、逆に死を呼ぶ色としても恐れられている。今でも言われる、「マリッジブルー」だとか、仕事に出たくない「ブルーマンデー」とか。不快さを憂う意味に使われる。また一方で「青い鳥」も、花嫁さんが身につける「サムシングブルー」とかも、幸福の象徴だ。明るく、未来を示す光の色だ。

こんなに様々な顔を持つ色が他にあるだろうか。こんなにも見ている人たちの思考をかき混ぜ、相反する印象を弾き出させる色が他にあるのだろうか。そして驚くことに今では、公正さや平和を表す色としてEUや国連の色としてまで使われている。

ますます好きだ。宝石の色として高貴に扱われ輝きながらも、「ちょっとブルーだっただけよ」なんてゾンザイに言い捨てられる、青が。

魔除けも、死を呼ぶことも、幸福も、不快も。人の命の業を担うような、青が。

これ以上の色なんて、ないよ。ない。





そうしてまた宇多田ヒカルが耳の中で青く歌う

砂漠の夜明けがまぶたに映る
全然涙こぼれない
ブルーになってみただけ






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色にまつわるコラム・エッセイ集始めました!
歴史、文化、細かい色の名前などから色の世界をのぞきます。

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