人の気持ちを踏み躙るあの記事

オリンピック、楽しみました。

選手たちの人智を超えた活躍も、勝っても負けてもお互いを抱きしめる笑顔も、SNSでの誹謗中傷に堂々とそういう行為はしないで欲しいと呼びかける姿も。閉会式の次の日には、帰国する各国の選手を乗せて久々に空港からたくさんの飛行機が飛び立ちました。まるで、コロナ後の世界をいち早くみたようで。私の会社では自社の翼には安全と希望が乗っているなんてよく言われて、いかにも航空会社だなと皮肉っぽく思っていましたが、その言葉を初めて身に染みて実感した一日でした。飛びゆく翼に手をふりました。

コロナは目に見えないから、もしかしたらオリンピックの開催で広がったこともあるかもしれない。無観客といえど、感染対策があるとしても、スタッフさんやボランティアさん、コーチ、審判、選手。人と人とは交わりましたから。

でも、やっぱりオリンピックが見れて良かった。この一年、毎日必ずコロナ感染者数のニュースがトップに来る中で、この期間は久々に選手紹介やメダルなど、希望のニュースが目に飛び込みました。ニュースサイトを開き、1番最初にポジティブなニュースがあること。あれがいかに有り難く、大事かと思わされました。あの期間は毎日とても清々しく頑張れたんです。人が辛い中でも踏ん張る時に必要なものがあるとすれば、根性でも気合でもなく、希望があることだと、当たり前のことを忘れていました。

そんな中、本当に心底嫌で嫌で仕方ないことがあります。
許されるなら、地団駄を踏んで泣き喚きたいぐらいのこと。それは、所謂《幻の東京五輪開会式案》としてMIKIKOさんチームの資料が文春で発表されたことです。

とんでもなく優しくないなと思いました。いま、あれを見て何になると言うんでしょうか..。すぎてしまった時間が戻らないように、幻は幻でしかない。あれだって案なのだから全部が実現したかなんてわからないのに、『ほら、こっちの方が良かった』なんて言いたいんですか？

そうやって、見る人を【後悔させてPVを稼ぐ】ような記事が本当に嫌いです。ネットという簡単に目につく世界で有名な雑誌がそういう品のないことをやるから、なんとなく臭ーい空気が抜けないんじゃないですか。

あれの裏には、【最終的に開会式を創り上げた人たち】がいます。MIKIKO案が1番だと思っていても、それがダメになって豪華な演出ができなくなって、それでも最後まで関わり続けてやり遂げた人もいるかもしれない。マリオもキティちゃんも取り上げられ、何ヶ月も悩みながら、眠れぬ日々を過ごしながら、頑張った人がいるかもしれない。やり切った人の気持ちは何故想像しないんですか？

MIKIKOさんから始まってなし崩したように次々と演出やら責任者やら音楽担当やらの解任がありました。そんな前代未聞のことで日本はダメになったというツイートがたくさんありましたが、何より【やり切った人がいるということと、その人の気持ちを想像できない日本】が1番悲しいです。そんな記事を簡単に出せてしまう雑誌が1番怖いです。

結果が全てかもしれない。みんな誰かのせいにしたいのかもしれない。でも品がない。品性は想像力。このままどんどん失われてしまって良いのでしょうか。