見出し画像

スタートアップが直面する「情報連携」の壁。社内で情報格差を生まない仕組みの作り方


はじめに

はじめまして。株式会社ChillStackのバックオフィス領域全般を管掌しているCAOの茶山です。

ChillStackは財務経理部門向けの個人立替経費データや勤怠データなどから不正・不備を自動で検知する「Stena Expense」というサービスを提供しており、過去2回の記事にわたってビジネスサイドと開発サイドの視点から紹介しました。

ChillStackではチーム一丸となってはるか遠いゴールへ向かうために「Co-Development」のValueを掲げ、ビジネスチームと開発チームが協力して顧客に価値を実感いただくソリューションを届けていることについて紹介しました。本稿では、社内のメンバーがどのようにチーム内外でチームワークを実現しているか、それを支える社内の情報連携の仕組みをご紹介したいと思います。

スタートアップでの社内の情報共有の取り組みについて知りたい人事担当の方、スタートアップでの働き方について興味がある方は是非ご覧ください。


スタートアップが直面する「情報連携」の壁

ChillStackは立ち上げ期からコミュニケーションツールやWikiなどの情報共有ツールを利用していたため、コロナ禍においてもメンバーの都合に合わせてハイブリッドワークを実施し、特に苦労することなく業務を継続することができました。しかし、組織の拡大に伴い社内で同時にたくさんの情報が飛び交うようになってからは、働く場所の違いなどによって手に入る情報のムラが生じて、阿吽の呼吸だけに頼るには難しい状況がよく見られるようになりました。

このように本来情報を得られるはずのメンバーが得られない、もしくは得るのに手間がかかりメンバー間の情報の格差を生みます。これにより十分なチームワークが発揮できていない状態は会社のValueである「Co-Development」の実現を妨げる要因になっていたので早めに対処すべき課題として取り組みました。

情報の格差が生まれないような仕組みとは

そこでChillStackの今後の急激な人員拡大を見据え、個人の裁量に任せた働き方を維持しつつCo-Developmentを実現するために、場所による情報の格差が生まれない状態を目指すことにしました。具体的な取り組みとしてはまず、情報連携の在り方について認識を揃えることにしました。

情報連携の定義と連携目的の明確化

私たちは普段チームのメンバーと情報連携する際に、単に情報の共有にとどまらず、共有相手と目的を達成するためには相手に「どのように行動してもらいたいか」という依頼もセットで行っています。つまり伝えたい内容が明確でない場合は、共有相手とのギャップが生まれ、チームでうまく連携することができません。内容によっては、伝える相手や伝える手段がそもそも不適切かもしれません。情報の発信者は自ら「協力者は誰で、相手に何をしてもらいたく、どの手段で共有するか」という考えのもと、連携の目的を整理することによって、依頼内容が明らかになり、共有相手を意識した形で情報を加工して共有することができます。この一連の考え方の整理と共有内容の明文化を「言語化」と呼んでいます。

例えばChillStackでは、プロダクトのロードマップに従って詳細なスケジュールを開発とビジネスメンバーで決める「エピック会」という会議があります。そこでは部署間の考え方や情報の差を補完する徹底的な言語化が行われています。顧客のニーズを整理して開発の優先順位を決めるために、部署間での議論に必要な進捗状況や顧客に関する補足資料を揃えて会議に挑みます。

言語化を行うためにChillStackが今大切にしている取り組み

「言語化」を行うために社内施策として、ChillStackでの情報の活用についての社内の基本方針とそれに沿って行動するためのTIPSをまとめた「情報連携ポリシー」を文書化してメンバーに直接共有しました。基本方針では、情報が他のメンバーから利活用されるように発信者自らが情報の整理を行い、適切な伝達手段を通じて「情報の言語化」が行えるような方針を掲げました。情報連携ポリシーの内容を一部紹介します。

情報の特性の再確認

どのように情報をやり取りするかを考える前に、まずは情報を分解します。業務でやり取りされる情報の特性を知ってもらうために、「フロー情報」と「ストック情報」と呼ばれる情報を再利用性の観点から分類しました。私たちが日々無意識にやり取りされる情報の特性を体系的に整理して知ることで、情報の加工の仕方や伝え方に対しての理解度が高まり伝達スピードを上げられます。例えば、相談はその場限りのフロー情報はあえて文書として残す必要はありませんが、マニュアルなど繰り返し参照されるものは積極的にドキュメント化するといった判断がしやすくなります。

フロー情報とストック情報のそれぞれの定義を表した図表

しかし実務でやりとりする情報は複雑でチームごとの規模やコミュニケーションの性質も異なるため、ルールに基づいて簡単にフローやストック情報に分類できないことが多いです。その場合は無理に分類せず、共有相手と連携の目的を振り返って、チームで合意をとりながら状況に応じて情報を使い分けるようにしています。

伝達手段の使い分け

情報の特性と情報を理解したうえで、社内の情報共有サービスの使い分けについて改めて明文化しました。ChillStackでは、おおまかにフロー情報はコミュニケーションツールで、ストック情報はWikiで共有と管理をするように決めています。そしてポリシーでは、各ツールの最低限の利用方法を定めています。

具体的には、コミュニケーションツールにあるチャンネルやメンション機能を用いてフロー情報を公開範囲をコントロールするようにルールを設けています。また伝達スピードを重視するために、通話を推奨しています。一方でWikiでは、ストック情報を正確に伝えるためのテンプレートを活用して情報の表現方法と検索性を意識した管理方法を推奨しています。

一方で、情報の伝達手段は完全にデジタルツールに限定していません。例えば前述した「エピック会」では会議形式をあえて選んでおり、言葉に依らないコミュニケーションと合わせて顧客の温度感や感情などハイコンテクストな情報を直接共有しています。

これからどのように組織開発を続けていくか

最後に組織のさらなる拡大に際して、組織が直面する情報連携の課題と今後の取り組みについてご紹介したいと思います。

まずはチームメンバーが増えることによるコミュニケーションコストの増大が懸念されます。今までのようにチーム全員が集まって話し合える状況を作ることが時間的に難しくなります。次に勤務スタイルによる時差でコミュニケーションコストが発生してしまう問題です。コアタイムを共有しつつも、やり取りする相手が増えると必然的に時間が取れなくなります。このように今まで情報連携を妨げる障害として場所の制約がありましたが、今度は時間的制約を乗り越える必要があると予想しています。

非同期的な情報連携体制への準備

したがってこの問題を解消するために、情報を得たいタイミングでメンバーがタイムリーに情報を取得できる「非同期的な」情報連携体制を確立することが大事だと考えています。具体的には、上述したストック情報を拡充させる方向で、より多くの人が情報を得ることができるように価値のある情報を蓄積していき、それらの情報を効率的に管理する基盤を整えることが求められます。「ドキュメンテーションはコミュニケーションの自動化」という開発チームでストック情報を充実させるときの合言葉がありますが、円滑なコミュニケーションを実現するためにも草の根的な活動と同時並行でドキュメント管理を支える仕組みの整備を進めていく必要があります。

「情報連携目的」以外の視点も取り入れ、コミュニケーションを活性化

そしてなによりも、これらの情報を扱うのは「人」であるため、各メンバーのコミュニケーションのサポートも必要だと考えています。コミュニケーションとは情報の伝達目的以外にも、心や気持ちの通い合い、お互いに理解しあうことを目的として行うことです。したがって情報連携以外の視点でもコミュニケーションの在り方を考えて、施策を通じて活性化させていきたいと考えています。ChillStackでは情報をオープンにしていくことを大事にしており、社員メンバーが経営に参画できるように経営の情報を全社的に公開して話し合うAll Hands Meetingを実施しています。これをきっかけに社員が交流できるイベントを企画していきます。

組織における社内体制の構築といったハード面の整備とともにソフト面を強化し、メンバーが活き活きと働きながらチームで最高のパフォーマンスを発揮していけるようにこれからも組織を支えていきます。

<プロフィール>
株式会社ChillStack 取締役 CAO 
茶山 祐亮(Yusuke Chayama)
大学院では深層学習を用いた医用画像の診断支援の研究開発に従事。国際学会IEEE EMBC2018や電子情報通信学会など国内外への研究発表を行っており、大手IT企業にてコンピュータビジョンの研究開発経験を持つ。
ChillStack創業をきっかけに技術畑からコーポレート領域へ転身し、縁の下の力持ちとして組織をサポート。会計や労務、法務など全てのバックオフィス業務を担当し、マネジメントしている。海外在住経験を通じて様々なバックグラウンドや価値観を持つ人との交流が好きになり、今は社員が活き活きと働ける会社になるように組織開発に取り組んでいる。

▼ ChillStack公式サイト

▼ 不正経費自動検知クラウド
「Stena Expense」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?