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「チ」キンラーメン

 「日清のチキンラーメンってありますよね、あのう元祖インスタントラーメンやら何やら。まあ正直それ語るの自信ないんで、そこら辺は語れないんですけどぉ」
 (…)
 「ボクが今回話したいのは本当にそういうのじゃないんです。麺が美味いとか、汁不味いとか、そう、料理の質とかの話ではなくて、もっと高次元のものでして」
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 「あのう、新垣結衣知ってますか?」
 (…)
 「えーと、そう、正にチキンラーメンのCMに出てたぁ。それについて語りたいわけでして、いや別にガッキーのこと話したいわけじゃないんですよ(笑)ただ、まあ、一つ疑問に思ったことがありましてね」
 (…)
 「チキンラーメンのCMってよく卵入れるの推奨するじゃないですかぁ。アッツアツのスゥプに浮かんだ麺がなんかへこんでて、そこに卵落とすみたいな」
 (…)
 「そうやって卵入れて、なんですかあ『すぐおいしい、すごくおいしい』と歌うガッキーみるのが、めちゃくちゃ好きでしてね、いや別にガッキーの話をしたいわけじゃないんですよ、決して。あくまでチキンラーメンの話ですから(笑)」
 (…)
 「しかしガッキーかわいいですよねぇ、あの卵落として『すぐおいしい、すごくおいしい』言うところやっぱ好きだわぁ、と思わざるをえませんよ」
 (…)
 「それでボクねぇ、チキンラーメンと卵買って、ガッキーみたいなことするようになったんですよ。少しでもガッキーの真似事したらね、何か近づけると思いましてね」
 (…)
 「モチロン、ボクも本気に思ってやってたわけじゃないです。ただぁやってみたかっただけなんですよぉ、どうせ食べるなら、粗末にならないじゃないですか。別にやって、食べるだけの単純なことですよぉ」
 (…)
 「でも面白いですね、生きてると。やり始めてから何週間ほどたったのだろうな、まあ暫くそうやっていると、ある日、出来たチキンラーメンの湯気、あの向う側にガッキーが見え始めたんですよ」
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 「最初はあれ、気のせいかな、と流石に思いましてね、別に気にしてなかったんですけども、数日たつとそうもいかなくなりまして」
 (…)
 「要するにもっとくっきり見えはじめましてね。湯気の向こうにいるガッキーがもう鮮明にね。そうなると話は違いますよ、もしかしたら実際にいるのかな、と思って麺から顔離すと、実際にいまして」
 (…)
 「ボクびっくりしましたよ、でも一つ知りましたね。めちゃくちゃ驚くと、本当にアワワって言うんですよ。まあ当たり前ですよね、あんなぼろっちいアパートに、ボクが気づかぬうちに入ってくるんだからぁ(笑)」
 (…)
 「暫くすると落ち着いてきたから、ボク言ったんです、『ガッキー、いや新垣さん!?どうしてここに!』って。したら向こう、隣までやって来て、腰かけたんです。ドッキっとしましたよ、好きな人が近くに来てくれるなんて、そんなの人生じゃ一度足りもありませんよ(笑)」
 (…)
 「ボク、もしかしたら、これデキるのかなぁ、と思っちゃいましたね。こんな近くに来るのなんて、更にガッキーボクのこと見てニコニコしてるんですよ?」
 (…)
 「ボク、すっごいドキドキしながらガッキーに触れようとしました」
 (…)
 「そしたら幻とかではなく、実際に触れられて」
 (…)
 「ボク静かに服を脱がしたんです」
 (…)
 「ゆっくぅりと」
 (…)
 「裸になったガッキーはきれいで、テレビで見るより美しくて」
 (…)
 「ボクも興奮して、下がいきり立ってたので」
 (…)
 「ボクも服脱いで」
 (…)
 「ガッキーを突き倒して」
 (…)
 「そのままボクのアレを」
 (…)
 「ガッキーのアソコに入れたんですよ」
 (…)
 「それはもう気持ちよくて、ボク直ぐ果てちゃいました」
 (…)
 「…」
 (…)
 「……だから刑事さん、あれは和姦なのにぃ、どうしてボクを捕まえたんですか」

 「ボクは無実だ!」




 加害者(以下甲)は午後六時頃、退社して自宅があるマンションに向かおうとする被害者(以下乙)を目撃後、尾行。乙が自宅脇にある駐車場に停車すると、すかさず甲は乙に暴行を加え、声を出せぬよう猿轡を銜えさせた後、甲の自宅へと拉致した。
 その後、甲は乙を強姦。乙が必死の思いで猿轡を外し、大声で助けを呼ぶと、それに激高した甲は、キッチンにあった包丁で乙を滅多刺しにして殺害した。
 しかし犯行後すぐ、非常事態だと察した隣人が警察に通報、甲は逮捕された。
 取り調べによると、甲は妄想型統合失調症を発症している可能性があり、頻りに乙を国民的女優である新垣結衣だと妄想していた。

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