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国連・子どもの権利委員会の第96会期が終了/委員会の新たなメンバー(2025年3月~)も決定

 ジュネーブ(スイス)で5月6日から開催されていた国連・子どもの権利委員会の第96会期が、24日に終了しました。

- Committee on the Rights of the Child Closes Ninety-Sixth Session after Adopting Concluding Observations on Reports of Bhutan, Egypt, Estonia, Georgia, Guatemala, Mali, Namibia and Paraguay
https://www.ohchr.org/en/news/2024/05/committee-rights-child-closes-ninety-sixth-session-after-adopting-concluding

- Le Comité des droits de l’enfant clôt les travaux de sa quatre-vingt-seizième session
https://www.ohchr.org/fr/news/2024/05/committee-rights-child-closes-ninety-sixth-session-after-adopting-concluding

 今回報告書審査が行なわれた9か国(ナミビア/グアテマラ/ジョージア/マリ/パナマ/エジプト/ブータン/エストニア/パラグアイ)についての総括所見(未編集版)は、5月30日に第96会期のページに掲載される予定です。ナミビア~パナマの報告書審査に関するプレスリリースの見出しは開会会合についての投稿で訳出しておきましたので、残りの審査のプレスリリースの見出しをこの記事の後半で訳出しておきます。また、委員会が一般的意見27号(司法および効果的救済措置にアクセスする子どもの権利)についての意見募集を開始したことは、昨日の投稿でお知らせしたとおりです。

 今会期中、委員会は発展の権利に関する特別報告者と会見し、同特別報告者が現在作成中の2本の報告書(気候変動および損失・損害に関するもの/子どもおよび将来世代にとっての発展の権利に関するもの)について議論したとのことです。また、住んでいる国が未承認国家または事実上の国家にすぎないために保護からこぼれ落ちる子どもの問題について研究者からブリーフィングを受けるとともに、国連から承認されていない施政権者の統治下にある国で暮らしている子どもの保護についても議論したと報告されており、近い将来、これらの問題に関する見解が明らかにされるかもしれません。


個人通報の処理状況

 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく個人通報の処理状況については、7件の通報に関して決定が採択され、そのうち次の4件で条約違反が認定されました。

  • ジョージアを相手どった1件(教会が経営する孤児院で子どもが暴力から保護されず、そのような暴力の調査も行なわれなかった事案)

  • デンマークを相手どった1件(女性性器切除の対象とされるおそれがあるソマリアへの女児の送還に関する事案;類似の事案〔CRC/C/77/D/3/2016〕に関する決定の日本語訳も参照)

  • それぞれフランスおよびスイスを相手どった2件(保護・養育者のいない子どもの移住者の年齢鑑別手続に関わる事案)

 他方、ジョージアとスイスを相手どった3件については審理が打ち切られています。

 委員会の次回の会期(第97会期)は2024年8月26日~9月13日に開催され、アルゼンチン、アルメニア、エクアドル、エリトリア、イスラエル、メキシコ、トルクメニスタン、バーレーンの報告書が審査される予定です(バーレーンについては子どもの権利条約の2つの選択議定書に関する報告書のみ)。

9人の委員の改選:選挙結果

 一方、会期中の5月23日にはニューヨークの国連本部で第20回子どもの権利条約締約国会議が開催され、2025年2月28日に9人の委員の任期が終了することにともなう改選投票が行なわれました。

 選出されたのは次の9人です。

  • Rinchen CHOPHEL(ブータン/再選)

  • Timothy P.T. EKESA(ケニア)

  • Mariana IANACHEVICI(モルドバ)

  • Sopio KILADZE(ジョージア/再選)

  • Cephas LUMINA(ザンビア/再選)

  • Juliana SCERRI FERRANTE(マルタ)

  • Zeinebou Taleb MOUSSA(モーリタニア)

  • Benoit VAN KEIRSBILCK(ベルギー/再選)

  • Benyam Dawit MEZMUR(エチオピア/再選)

 Child Rights Connect によれば、今回選出された委員の任期が2025年3月1日に始まると、委員会の男女比は女性11人・男性7人になります(現在は女性12人・男性6人)。地域別に見ると、ラテンアメリカ・カリブ海諸国地域から3人、アフリカ地域から8人、アジア太平洋地域から1人、東欧地域から2人、西欧その他地域から4人です。

 2017年3月から委員としての活動を開始し、2021年5月~2023年5月の2年間は委員長も務めた大谷美紀子さん(弁護士)は、来年2月28日をもって2期8年の任期を終了することになります。

報告書審査に関するプレスリリース

 最後に、第96会期に関する前回の投稿に続き、第2週の報告書審査に関するプレスリリースの見出しを日本語訳しておきます(いまのところ)フランス語のリリースしか出ていない国もあります。

エジプト

- Examen de l’Égypte devant le Comité des droits de l’enfant : sont notamment évoquées les mutilations génitales féminines, les violences domestiques, les questions d’état civil et la situation des migrants et réfugiés, y compris palestiniens
(子どもの権利委員会におけるエジプトの審査:女性性器切除、ドメスティックバイオレンス、婚姻上の地位に関わる問題、パレスチナ人を含む移住者・難民の状況がとくに議論される)
https://www.ungeneva.org/fr/news-media/meeting-summary/2024/05/examen-de-legypte-devant-le-comite-des-droits-de-lenfant-sont

ブータン

- Examen du Bhoutan devant le Comité des droits de l’enfant : sont notamment évoquées les questions relatives à l’état civil, aux violences à l’égard des enfants, à la situation des enfants handicapés et aux disparités au détriment des zones rurales
(子どもの権利委員会におけるブータンの審査:婚姻上の地位、子どもに対する暴力、障害児の状況、村落部にとって不利益な格差に関わる問題がとくに取り上げられる)
https://www.ungeneva.org/fr/news-media/meeting-summary/2024/05/examen-du-bhoutan-devant-le-comite-des-droits-de-lenfant-sont

エストニア

- Experts of the Committee on the Rights of the Child Welcome Estonia’s Plans to Ratify the Committee’s Third Optional Protocol, Ask about Rising Youth Suicides and Solitary Confinement of Minors
(子どもの権利委員会の専門家、委員会の〔注/条約の〕第3選択議定書を批准しようというエストニアの計画を歓迎するとともに、若者の自殺や未成年者の独居拘禁について質問)
https://www.ohchr.org/en/news/2024/05/experts-committee-rights-child-welcome-estonias-plans-ratify-committees-third-optional

- Examen de l’Estonie devant le Comité des droits de l’enfant : les membres du Comité félicitent le pays pour ses grandes avancées concernant la mise en œuvre de la Convention, mais s’inquiètent d’une pénurie de personnels dans un certain nombre de domaines
(子どもの権利委員会におけるエストニアの審査:委員会の委員ら、条約実施における同国の大きな前進を祝福したものの、多くの領域でスタッフが不足していることを懸念)
https://www.ungeneva.org/fr/news-media/meeting-summary/2024/05/examen-de-lestonie-devant-le-comite-des-droits-de-lenfant-les

パラグアイ

- Experts of the Committee on the Rights of the Child Praise Paraguay’s Educational Initiatives, Ask about the Low Birth Registration Rate and “Criadazgo” Child Labour Practices
(子どもの権利委員会の専門家、教育に関するパラグアイの取り組みを称賛するとともに、出生登録率の低さや)
https://www.ohchr.org/en/news/2024/05/experts-committee-rights-child-praise-paraguays-educational-initiatives-ask-about-low

- Examen du Paraguay au Comité des droits de l’enfant : un écart important est relevé entre les textes adoptés par le pays et leur mise en œuvre, dans les domaines où la législation relative aux droits de l’enfant est confrontée à des valeurs et des normes traditionnelles
(子どもの権利委員会におけるパラグアイの審査:子どもの権利に関する法律が価値観や伝統的基準と衝突する分野で、同国が採択した条文とその実施との間に相当の乖離があることが指摘される)
https://www.ungeneva.org/fr/news-media/meeting-summary/2024/05/examen-du-paraguay-au-comite-des-droits-de-lenfant-un-ecart

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