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国連・子どもの権利委員会、一般的意見27号(司法および効果的救済措置へのアクセス)に関する意見募集を開始(~8月23日)

 国連・子どもの権利委員会が次回の一般的意見(27号)のテーマを「司法および効果的救済措置にアクセスする子どもの権利」に決定したことは、委員会によるコンセプトノートの日本語訳とともに、2月に紹介済みです。

【追記】(2024年5月29日)
 Child Rights Connect によると、委員会としては、2025年5月に第1次草案を採択し、6~8月にかけて意見募集を実施したうえで、2026年5月に一般的意見27号を正式に採択したいと考えているとのことです(暫定的スケジュール)。/【さらに追記】(2024年7月23日)〈国連・子どもの権利委員会の一般的意見27号(司法および効果的救済措置へのアクセス)に関する協議のためのガイダンス〉も参照。

 このほど一般的意見27号に関する意見募集(Call for Submissions)が始まったので(5月23日掲載)、お知らせします。提出期限は2024年8月23日です。

 子どもの権利侵害に対する救済を提供し得るしくみ/機構(mechanisms)としては、次のものが例示されています(パラ4;太字は平野による)。

  • 司法機構(とくに行政裁判・民事裁判・刑事裁判・軍事裁判制度)

  • 代替的紛争解決機構(調停・仲裁など)

  • 国内人権機関、オンブズパーソン、コミッショナー、国内防止機構〔平野注/通常、拷問等禁止条約の選択議定書の締約国に設置が義務付けられているものを指す〕、真実和解委員会その他の形態の移行期正義のための機構および他の類似の機構などの独立機関(子どもの権利に関する権限を有するものを含む)

  • とくに学校、病院、子どものケアのための施設、子ども司法施設および拘禁施設(移住者である子どもを対象とするものを含む)など、省庁、政府機関、公共サービス機関および社会サービス提供機関を含む行政機関内に設けられた、内部の不服/苦情申立て機構

  • コミュニティを基盤とする慣習的、部族的、土着的、宗教的またはインフォーマルな司法制度

  • アカウンタビリティの確保または人権保護を目的とする特別機構、〔国内的・国際的性格を併せ持つ〕ハイブリッド機構、地域的機構または国際的機構

  • ビジネス部門の不服申立て機構

  • インターネットプロバイダ、ソーシャルメディアおよびウェブサイトのオーナーが提供する、オンラインの活動に関連した不服申立て機構

  • 個人的・集団的救済のための機構

  • 他の関連の救済機構

 以下、意見書作成の手がかりとなる設問(guiding questions)の内容を紹介しておきます。意見の提出を考えている方、委員会の問題意識を知りたい方は参考にしてください。


司法および効果的救済措置への子どものアクセスの定義および理解(パラ6)

  • 「司法へのアクセス」および「効果的救済措置」の定義が子どもに適用される際の主要な要素は何か?

  • 司法および救済措置について子どもたちはどのように理解しているか? 子どもたちは、自分なりの視点からこれらの用語をどのように定義しているか?

  • 市民的・政治的権利および経済的・社会的・文化的権利に関わって司法および効果的救済措置にアクセスする子どもの権利を保障するための枠組みは、どのようなものであるべきか? この点について、これらの2組の権利にはどのような違いがあるか?

  • 一般的意見で考慮すべきその他の法的概念はあるか?

子どもが司法および効果的救済措置にアクセスすることを妨げる障壁(パラ7)

【既存の障壁】

  • 主要な法的障壁にはどのようなものがあるか? 効果的救済措置に対する子どもの権利は法律で規定されているか? その規定から排除されている子どもはいるか?

  • 主要な社会文化的障壁にはどのようなものがあるか? 社会規範は、救済措置を求めかつ得る子どもの能力にどのような影響を与えているか?

  • 金銭的障壁にはどのようなものがあるか?

  • 実際的障壁にはどのようなものがあるか?

  • これらの障壁はどのように交差しているか?

【差別および排除】

  • 司法および効果的救済措置にアクセスする権利の行使に際して、とりわけ不利な立場に置かれまたは構造的に差別されているのは、どのような集団の子どもか? 他の子どもよりも障壁の影響を著しく受けている、特定の集団の子どもは存在するか?

  • 司法および効果的救済措置へのアクセスに固有な差別および排除はどのような表れ方をしており、その根本的原因は何か?

【特定の状況(とくに武力紛争、人道状況、紛争後の状況および緊急事態】

  • 委員会として一般的意見に含めることを検討すべき領域および状況(とくにコンセプトノートで触れられていないもの)はあるか?

  • 武力紛争、人道状況、紛争後の状況および緊急事態において子どもが司法および効果的救済措置にアクセスできるようにすることの、具体的課題は何か?

アクセスを促進する要因および戦略(パラ8)

  • 司法および効果的救済措置にアクセスする子どもの権利を確保するために法律に含まれるべき主要な規定には、どのようなものがあるか?

  • 司法および効果的救済措置への子どものアクセスを支える際の、大人(とくに親または法定保護者、養育者、教育専門家、法曹およびコミュニティの指導者を含む)および同世代の子どもの役割はどのようなものか?

  • 国(とくに司法機関その他の権限ある機関、省庁、立法府、社会サービス機関および学校を含む)の役割はどのようなものか?

  • 市民社会組織、国内人権機関その他の関係主体の役割はどのようなものか?

  • テクノロジーの役割はどのようなものか?

  • 特定の集団の子ども、とくに周縁化されている子ども(とくに、貧困下で暮らしている子ども、障害または精神保健上の困難のある子ども、施設で暮らしている子ども、移動の状況にある子ども、家族と離れ離れになっている子ども、紛争地帯で暮らしている子ども、マイノリティに属する子どもまたは性暴力、人身取引、売買その他の犯罪の被害者)を対象として司法および救済措置へのアクセスを確保するための戦略やアプローチには、どのようなものがあるか?

  • 司法および効果的救済措置への子どものアクセスを確保する際の、戦略的訴訟の役割はどのようなものか?

  • 子どもが司法および効果的救済措置にアクセスできるようにする際の、コミュニティを基盤とする慣習的、部族的、土着的、宗教的または他のインフォーマルな司法制度の役割はどのようなものか?(具体的なアプローチ、利点およびリスクを含む)

  • 司法にアクセスするための子どもの法的エンパワーメントを可能にする戦略には、どのようなものがあるか?

  • 紛争・人道状況ならびに紛争後の状況および緊急事態において司法および効果的救済措置への子どものアクセスを確保するための戦略やアプローチには、どのようなものがあるか?

手続(パラ9)

  • 司法および効果的救済措置へのアクセスを子どもに保障するために、諸手続をどのように修正できるか?(原告適格、弁護士による代理、法的およびそれ以外の援助、最善の利益の考慮、意見を聴かれる子どもの権利、子どもの発達しつつある能力の尊重、プライバシーおよび秘密保持、専門家の訓練および他の関連の領域との関係を含む)

  • 慣習的制度の手続は国の司法制度とどのように相互作用しているか?

救済措置の結果および影響(パラ10)

  • 子どもの権利を尊重する結果は、どのように確保できるか?

  • 救済措置はどのように変化に結びつき得るか?

  • 救済措置と国のアカウンタビリティのつながりはどのようなものか?

その他(パラ11)

 最後に、委員会は次のような内容を含む意見をとくに歓迎するとのことです。

  • 興味深くて革新的な実践、パイロットプロジェクトおよび具体的経験

  • 司法および効果的救済措置への子どものアクセスに関する関連の調査研究および細分化されたデータ(子どもの見方や、子どものころに司法および効果的救済措置へのアクセスを必要としたまたは求めたことのある大人の見方を盛りこんだ既存の研究を含む)

  • エビデンスおよび実践から得られた教訓であって、すべての子ども(とくにもっとも周縁化されている子ども)を対象として司法および救済措置へのアクセスを強化することに関して締約国に指針を示す際に委員会が参考にし得るものに焦点を当てた、主要な勧告


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平野裕二
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