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国連・子どもの権利委員会の第93会期が終了:一般的意見26号(子どもの権利と環境)も採択

 あれこれ忙しくてnoteの更新が〈国連・子どもの権利委員会の第93会期が始まる――大谷美紀子さん、2年の任期を終えて委員長を退任〉以来になってしまいましたが、国連・子どもの権利委員会の第93会期は昨日(5月26日)終了しました。

-Committee on the Rights of the Child Closes Ninety-Third Session after Adopting Concluding Observations on Reports of Finland, France, Jordan, Sao Tome and Principe, Türkiye and the United Kingdom
https://www.ungeneva.org/en/news-media/meeting-summary/2023/05/le-comite-des-droits-de-lenfant-clot-les-travaux-de-sa-quatre

 今回報告書審査が行なわれた6か国(フランス/ヨルダン/サントメプリンシペ/フィンランド/テュルキエ〔トルコ〕/英国)についての総括所見(先行未編集版)は、6月2日(金)に第93会期のページで公開される予定です(フランス、フィンランドおよび英国に関するこれまでの総括所見の日本語訳は筆者のサイトを参照)。各国の報告書審査に出されたプレスリリース(英語・フランス語)の見出しはFacebookで随時訳出しておきましたので、この記事の後半(有料エリア)に採録しておきます。

 また、「とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境」についての一般的意見26号も、今会期中に採択されました。公開は7月になるとのことです。次の会期(第94会期)中の9月18日にローンチング(正式発表)イベントが予定されています。

 個人通報の処理状況との関連では、委員会は新たに10件の通報について決定を採択しました。このうち、次の3か国を相手どった事案で条約違反が認定されています。

● ペルー:強制性交・近親姦の被害者である13歳の子どもによる中絶サービスへのアクセスをめぐる事案(中絶が犯罪とされていることを含む)⇒ 事案の概要
● チェコ:健康・教育に対する権利の確保を目的とする子どもの施設措置をめぐる事案
● デンマーク*:FGM(女性性器切除)の対象とされるおそれがあるソマリアへの女児の送還をめぐる事案

 委員会はこのほか、ルクセンブルクを相手どったについて条約違反はなかったと認定するとともに、それぞれチリおよびスペインを相手どった2件の事案を受理不能としました。また、スイス(2件)、アイルランドおよびデンマークを相手どった事案で審理の打ち切りを決定していますが、これらはいずれも、締約国側の対応によって、正式な決定に至る前に問題が解決されたという事情によるもののようです。これらの決定の一部はすでに第93会期のページの一番下に掲載されています(委員長の報告では言及されていませんが、フィンランドを相手どった事案の審理打ち切り決定も掲載されているので、委員長報告に何らかのミスがあったのかもしれません)。

* デンマークは、ソマリアへの女児の送還をめぐり、2018年と2022年にも条約違反を認定されています(2018年の決定は日本語訳済みです)。FGMを恐れて避難する女性が日本にもいることについて、Friday Digital〈「女性性器切除」の暴虐から逃げた女性は「難民」では…? 入管法改悪で切り捨てられる「命」の行方〉(2023年5月27日配信)も参照。

 次回の会期(第94会期)は9月4日~22日に開催されます。今会期に予定されていた審査が延期となったアルバニアのほか、アンドラ、ドミニカ共和国、キルギス、リヒテンシュタインおよびトーゴの報告書が審査される予定です。

【資料】各国の報告書審査のプレスリリース(見出しの日本語訳)

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