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フィリピン教育省、「権利を基盤とする教育」の推進を通達

 フィリピン教育省は、6月27日、基礎教育において「権利を基盤とする教育」(rights-based education: RBE)の枠組みを採用すると宣言する省令を発出しました。

★ Pressenza: Philippines adopts rights-based education
https://www.pressenza.com/2022/07/philippines-adopts-rights-based-education/

「子どもの権利政策:フィリピンの基礎教育における権利を基盤とする教育の枠組みの採用」(Child Rights Policy: Adopting the Rights-Based Education Framework in Philippine Basic Education、DO_s2022_031〔PDF〕)と題するこの省令は、「すべての子どもの教育に対する権利および教育における権利を尊重し、保護し、充足しかつ促進する義務に関して教育省その他の関係者に対して指針を示す」ことを目的とするものです(太字の部分は原文ではイタリック)。「K-12〔幼稚園~中等教育修了までの基礎教育課程〕のカリキュラム、指導および評価、課外・並行活動プログラムならびに学校、地域学習センターその他の学習施設の文化および学習環境への子どもの権利の統合を強化する」ことが目指されています。

 そこでは次のように述べられています(太字は原文ママ)。

4.RBE-DepEd〔教育省RBE枠組み〕は、子どもが権利を有する人格であり、自己の教育ならびにその立案、発展および運営への主体的参加者であって、教育サービスを受動的に受けるだけの存在ではないことを認知する。RBE-DepEdは、子どもが権利の保有者(rights-holder)であること、大人はそれに応じてこれらの権利を擁護する義務を有する責務履行者(duty-bearer)であることを認識する。これらの権利に対応する法的義務に基づき、子どもの教育権を擁護する任務を教育省として履行する際の基礎教育の枠組みが、権利を基盤とする教育である。

5.権利を基盤とする教育においては、責務は法的義務の問題であって、選好、慈善または博愛の問題として、財およびサービスの提供を通じてニーズに対応することには留まらない。したがって、RBE-DepEdを確立しかつ強化することは、単なる政策上の選択ではなく、責務履行者たる教育省の、子どもの権利を尊重し、保護し、充足しかつ積極的に促進していくという確固たるコミットメントおよび強い決意を体現するものである。

6.RBE-DepEdの3つの側面――すなわち、教育にアクセスする権利、良質な教育への権利ならびに学習環境における尊重およびウェルビーイングへの権利――はいずれも不可欠であり、相互に関連しており、かつ相互依存関係にある。したがって、この3つの側面を備えたRBE-DepEdにしたがうことは、子どもの権利を擁護する法的責務および義務を教育省が遵守することの強化のみならず、アクセス、質および学習者のウェルビーイングに関わる基礎教育における懸念に対処することにもつながるものである。

 また、次のように「子どもの権利アプローチ」も強調されています。

36.RBE-DepEdは、基礎教育に対する子どもの権利アプローチを取り入れる。これは、子どもは客体ではなく、尊厳および権利(自己の教育の立案、発展および運営に主体的に参加する権利を含む)を有する人格であり主体であることを認めるアプローチである。子どもは、基礎教育の文脈において権利を学び、経験しかつ享受していくなかで、自らも、自分自身の権利のみならず他者の権利も尊重しかつ唱道する存在となる。子どもは、現在は子どもとしてそのような唱道者となり、将来大人になったときには責務履行者となるので、権利を擁護する学校のみならず権利を擁護する社会の強化にもつながるのである。

37.子どもの権利アプローチは――
 a 子どもを受動的なサービスの受け手ではなく主体的エージェントとみなすことにより、権利の保有者として自己の権利を前向きなやり方で主張・行使する子どもの能力と、責務履行者の義務履行能力を構築していく。
 b 1987年憲法その他の国内法令および国際法(子どもの権利条約、社会権規約、自由権規約その他の国際文書など)に掲げられた子どもの権利の実現を前進させる。
 c 政策、プログラム、プロジェクト、行動および行為の指針として、1987年憲法その他の国内法令、子どもの権利条約、社会権規約、自由権規約その他の国際法に掲げられた子どもの権利に関する基準および原則を活用する。

 こども基本法を制定した日本でも、教育における子どもの権利に対する考え方を転換させ、「権利を基盤とする教育」を進めていくことが必要です。〈子どもの権利アプローチを学校でどう推進していくか:ウェールズ子どもコミッショナーの指針〉、〈スコットランド政府、「権利を尊重する学校」推進のための資金供与を発表〉なども参照。

【追記】(8月26日)
 ヒューライツ大阪のサイト(ニュース・イン・ブリーフ)にも記事を載せていただきました。

-フィリピン教育省、6月に「権利を基盤とする教育」の推進を通達
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2022/08/post-25.html


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