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新型コロナ・子ども・SDGs――国連人権高等弁務官事務所の報告書

 国連では毎年7月に「持続可能な開発目標(SDGs)に関するハイレベル政治フォーラム」(HLPF)を開催し、SDGsの達成に向けた進捗状況を検証しています。今年(2021年)のHLPFは、7月6日~16日にかけて、
「持続可能な開発の経済的・社会的・環境的側面を促進する、COVID-19パンデミックからの持続可能かつレジリエントな回復:持続可能な開発のための10年間の行動と対応を踏まえた、2030アジェンダの達成のための包摂的かつ効果的な道筋の構築」
 をテーマとしてニューヨークで開催されました。

 今年の検証対象として取り上げられたのは、1(貧困)、2(飢餓)、3(保健)、8(経済成長と雇用)、10(不平等)、12(持続可能な生産と消費)、13(気候変動)、16(平和・司法・説明責任)、17(実施手段)の各ゴールです。

 今年のHLPFに向けて、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は子どもの権利に焦点を当てた21ページの報告書(PDF)を作成し、3月に提出しました。

 本報告書の作成にあたっては、国連・子どもの権利委員会と各国のNGOとを結びつける役割を果たしている Child Rights Connect の協力により、フォーカスグループでの議論を通じて得られた25か国の子ども(6~17歳)449人の声と、国連関係者とのバーチャル対話を通じて集められた15か国の子ども30人の声も反映されました。そのような経緯もあり、国際的調査#CovidUnder19に関与したNGO関係者によって報告書のチャイルドフレンドリー版(PDF)も作成されています。

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 報告書の構成は次のとおりです。今回の重点検証対象ではありませんが、COVID-19パンデミックの影響に鑑み、教育についても取り上げられています。また、加盟国から報告された希望の持てる実践例も、各項目で紹介されています(日本からの報告はなし)。

●概観:COVID-19パンデミックが子どもたちに及ぼしている影響

●危機からの復興
-貧困・不平等(ゴール1および10)
-児童労働(ターゲット8.7)
-移住者である子ども
-必須サービスへの包摂的アクセスおよび子どもに配慮した社会的保護の拡充
-子どもの貧困に関するモニタリングおよびデータの強化
-子どもの市民的・政治的権利の尊重および擁護

●子どもの健康・教育・ウェルビーイング
-飢餓の根絶(ゴール2)
-良好な健康とウェルビーイング(ゴール3)
-セクシュアル/リプロダクティブヘルス&ライツを含む女児の健康(ゴール3および5)
-子どものメンタルヘルス
-すべての子どものための、健康・栄養への投資およびアクセスの拡充の確保
-教育(ゴール4)

●子どもに対する暴力
-平和、司法および強力な制度(ゴール16)
-家族間暴力
-防止・対応措置の強化
-武力紛争の影響を受けている子ども
-脆弱な状況にある子どもの救援と保護
-自由を奪われている子ども
-ジェンダーに基づく暴力
-性暴力およびジェンダーに基づく暴力のサバイバーの保護と支援

●持続可能性
-気候行動(ゴール13)
-責任ある消費・生産(ゴール12)と企業の役割
-子どものための安全かつ持続可能な環境への優先的対応

 そのうえで、次の3点が勧告されています。

1.パンデミックからの復興のためのあらゆる決定、投資および行動において、子どもたちの権利と最善の利益を擁護すること。
2.子どもたちへの影響を理解して適切な対応を立案する目的で、子どもたちの状況およびその権利のモニタリングを行なうこと。
3.子どもたちをエンパワーし、子どもたちの意見を聴いて、子どもたちが復興に参加できるようにすること。

 1との関連では、COVID-19パンデミックに関する国連・子どもの権利委員会の声明(2020年4月8日)と、子どもの権利実現のための公共予算編成(条約第4条)に関する同委員会の一般的意見19号(2016年)にも言及されています。

 2019年のHLPFに向けて国連・子どもの権利委員会が提出した以前の意見書の概要も参照してください。

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