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世界の子どもたちは新型コロナ禍をどのように経験しているか――国際的オンライン調査 #CovidUnder19 から

 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック下の生活を子どもたちがどのように感じているかについての国際的調査 #CovidUnder19 の結果を発表するウェビナー(12月9日)を視聴しました。子どもたちと綿密に協議しながら行なわれたこの調査には、137か国の子ども(8~17歳)2万6,000人以上のから回答があったとのことです。

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 調査は、スイスに本部を置く国際NGO「テールデゾム」(Terre des hommes)とクイーンズ大学ベルファスト・子どもの権利センター(北アイルランド)が中心となり、さまざまな団体の協力を得て、2020年6月から7月末にかけて実施されました(日本語の回答フォームも設けられていました)。

 ウェビナーの様子はFacebookライブのアーカイブで見ることができます。調査に関わった6人の子どもから調査結果の概要が報告されたほか、アイスランドやモロッコの政治家、子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表、Child Rights Coalition Asia のアミーハン・アブエバ(Amihan Abueva)さんと子どもたちとの質疑応答などもあり、興味深いセッションでした。

How are children around the world experiencing #Covid19? What do they want from their governments? Join us LIVE to discover the results of the #CovidUnder19 survey!

Posted by CovidUnder19 on Wednesday, December 9, 2020


 調査結果のまとめはこちらのページに掲載されています。子どもたちの生の声もたくさん引用されています。

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 今回の調査でわかったのは、COVID-19の悪影響をとくに感じておらず、パンデミック以前よりも状況がよくなったと思っている子どもも少なくないことです。調査結果のまとめでは、最初に次のように述べられています。

 多くの子どもたちは影響を受けていないと報告しており、新型コロナ中のほうがよくなっていると述べる子どももいる。たくさんの子どもたちが、家族と過ごす時間が増えたことを楽しんでいた。子どもたちからは、学校に行かないことで新しい趣味を覚えたりリラックスしたりする機会が得られたという声が聞かれた。

 この点は、新型コロナ禍からの「よりよい復興」(Building back better)を考えるうえで念頭に置いておかなければならないことだと思います。ただし、もちろんこのような肯定的経験をしている子どもばかりではありません。まとめでは次のように述べられています。

 しかし、新型コロナパンデミックが始まって以来、否定的な経験をしたと報告する子どもたちもいる。学校に行けないこと、友達や(同居家族以外の)家族に会えないことが寂しいと述べた子どもは多い。一部の子どもたちにとっては、このことがメンタルヘルスに相当の影響を及ぼした。
(中略)
 子どもたちはまた、身体的に近くにいることや家族・友達とハグできないことが寂しいこと、誕生日や卒業式のような大切な行事ができなかったことについても口にした。…… 

 さらに、クイーンズ大学ベルファスト・子どもの権利センター(北アイルランド)のブロナ・バーン(Bronagh Byrne)がChild in the City のサイトに掲載された記事
「いくつかの集団に属する子どもたちは、否定的経験を報告する可能性が高くなっていました。これには、移住者コミュニティの子どもたち、身柄拘束施設・難民キャンプ・ホームレス施設で暮らしている子どもたち、障害のある子どもたちが含まれます」
 とコメントしているように、従来から脆弱な状況に置かれてきた子どもは新型コロナ禍の悪影響を受けやすくなっていることがわかります。

 以下、調査結果のまとめで取り上げられている主な知見を紹介します。

● COVID-19以前よりもよい教育を受けられていると感じる子どもは61%。
● COVID-19以降は思ったよりも友達と話せていないと回答した子どもは56%。
● パンデミック中に抱いた気持ちでもっとも多かったのは、「退屈」(43%)、「幸せ」(40%)、「不安」(39%)の3つ。
● COVID-19についての「信頼できる情報」を知りたいときに家族に頼るのは62%。
● COVID-19以降、家庭の収入が減ったと答えた子どもは41%。
● 医療等へのアクセスがCOVID-19以前よりもよくなったと回答した子どもは21%。
● 子どもに対する暴力との関連で、COVID-19以降、家庭/その他の生活場所で安心感が低下したと答えた子どもは9%。36%は安心感が高まったと述べ、56%は変わらないと報告している。安全ではないと感じたときに助けを求める方法についてCOVID-19以前よりもよくわかった子どもが30%いる一方で、11%は以前よりもこの点に関する知識が少なくなったと回答した。
● メディアが子どもたちのことをCOVID-19以前よりも否定的に取り上げていると感じている子どもは16%(以前よりもよくなったという回答は24%、変わらないという回答は21%)。メディアによる子どもの取り上げ方が悪くなったと感じる子どもは、13~17歳の年齢層(17%)のほうが11~12歳の層(11%)よりも多く、また英国とアイルランドの子ども(34%)は他の国々の子ども(15%)よりもそのように感じる割合が高かった。

 子どもの意見表明・参加との関連では、次のような結果が出ています。

● 政府はCOVID-19関連の決定を行なう際に子どもたちの声に耳を傾けていないと思っている子どもは38%。耳を傾けていると思っている子どもは20%に過ぎなかった(35%は「わからない」と回答)。
● 入所施設で暮らしている子どもの37%は子どもたちに対する政府の対応に好意的である一方、障害のある子どもとLGBTQ+の子どもの間では批判的な声が多かった(それぞれ48%・51%)。
● COVID-19に関する情報源としては、家族(62%)と従来からあるニュース媒体(59%)を好む子どもが多い。友達やソーシャルメディアの情報には疑いを持つ子どもが多かった(それぞれ83%・75%)。ソーシャルメディアで信頼できる情報を共有すること、子どもにやさしい情報源を創設することが重要な課題となっている。

 スイスのRTSも、"Affectés par la pandémie, les enfants du monde veulent être entendus"(パンデミックの影響を受ける世界の子どもたちは意見を聴いてもらいたいと思っている)として、この点に着目する記事を配信しました。

 今回の調査結果はあくまでも国際的・一般的傾向を示すものとして捉える必要がありますが、このように大規模な形で子どもたちの声を受けとめようとしたことは画期的であり、これを踏まえ、COVID-19が子どもたちに及ぼしている影響についてさらに詳しい調査研究を――子どもたちの意見や気持ちを踏まえて――進めていくことが求められます。

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