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韓国憲法裁、無期限の入管収容を違憲(憲法不合致)と判断して法改正を要求

 2021年に廃案に追いこまれた出入国管理及び難民認定法(入管法)改正案がほぼ同じ内容で国会に再提出され、4月13日にも審議入りする見込みです。以下の署名のほか、改正に反対するさまざまな活動が行なわれています。

★難民を虐げ、在留資格のない人の命を危うくする、 入管法改悪に反対します!
https://www.change.org/p/難民を虐げ-在留資格のない人の命を危うくする-入管法改悪に反対します-入管法改悪反対-openthegateforall

 関連資料は〈Open the Gate for All~移民・難民の排除ではなく、共生を〉にまとまっていますが、かねてから問題にされてきたことのひとつが、在留資格のないまま日本に滞在している外国人を、裁判所による審査を受けることもなく、入管収容施設に無期限に収容することが可能になっていることです。

 韓国でも入管法に同趣旨の規定が設けられていますが、韓国の憲法裁判所は、3月23日、長期の入管収容を憲法違反(憲法不合致)とする決定を6対3の多数で言い渡しました。

★ The Korea Herald - Extended detention of foreign nationals subject to deportation is unconstitutional: top court
https://www.koreaherald.com/view.php?ud=20230324000538

 問題とされたのは、
「地方出入国・外国人官署の長は、強制退去命令を受けた者を旅券の未所持または交通手段の未確保等の事由により直ちに大韓民国の外に送還できない時は、送還が可能になるまでその者を保護施設で保護することができる」
 と定める韓国出入国管理法(強制退去命令を受けた者の保護および保護解除)63条1項の規定です(ここでいう「保護」とは収容のことを指しますので、以下「保護収容」とします)。

 63条2項以下の規定は次のとおりです(要旨)。

(2)1項による保護収容が3か月を超える場合、3か月ごとにあらかじめ法務部長官(法務大臣)の承認を受けなければならない。
(3)2項の承認が受けられなかったときは、遅滞なく保護収容を解除しなければならない。
(4)他国からの入国拒否などを理由として対象者を送還できないことが明らかになった場合、保護収容を解除することができる。
(5)3項または4項により保護収容を解除する場合、住居の制限その他の必要な条件を付すことができる。
(6)1項の規定による保護収容には、53条~55条、56条の2~56条の9および57条(保護収容に関する一般的規定)を準用する。

 憲法裁判所は、
「外国人被収容者の保護収容期間に何らの制限も設けない法令は、身体の自由に対する外国人被収容者の権利の過度な侵害である」
 などと述べて同規定を違憲(憲法不合致)とし、2025年5月31日までに改正するよう立法府に対して求めました。改正が行なわれない場合、この規定は同日をもって無効となります。

 同条については2014年(5対4で合憲)と2018年にも憲法裁判所で審理されており、2018年には違憲と判断する裁判官の人数が5対4で上回ったものの、憲法不合致決定に必要な6人以上の裁判官の同意が得られなかったため、結果的には合憲とされていました。今回は6人の裁判官が違憲の判断を下したので、憲法不合致決定が成立したものです。

 2018年8月に法改正を求める意見表明をしていた韓国国家人権委員会も、ソン・ドゥファン委員長名で声明(3月23日付)を発表し、憲法裁の決定を歓迎しました。

★ 국가인권위원장, 출입국관리법 제63조 제1항 헌법불합치 환영 성명(国家人権委員会委員長、出入国管理法第63条第1項の憲法不合致決定を歓迎する声明)
https://www.humanrights.go.kr/base/board/read?boardManagementNo=24&boardNo=7608931&searchCategory=&page=2&searchType=&searchWord=&menuLevel=3&menuNo=91

 委員長声明によれば、憲法裁判所の決定では、▽保護収容期間の上限が定められておらず無期限の収容が可能であることに加え、▽保護収容が適切かどうかについて客観的な第三者が判断する手続がないことについても、あわせて違憲性が指摘されたようです。

 委員長は、今回の決定で憲法上の「過剰禁止」(比例性)原則や「適法手続」原則の違反が認定されたことを評価するとともに、やはり裁判所による違憲判決を受けて入管収容期間の上限を定めた台湾(100日)やイスラエル(90日)の事例も参考にしながら、保護収容期間の上限が適切に定められることへの期待を表明しています。

 さらに、
「すべての国で強制退去対象者を拘禁するわけではありません。カナダ、ベルギー、フランス、スペインなど多くの国では、非拘禁的手段を通じて効果的に強制退去命令を執行しています」
 と述べて、今回の決定をきっかけに「強制退去において拘禁以外の代案が模索されること」も促しています。

 日本でも、こうした動向も踏まえ、国際人権基準に合致した出入国管理・難民認定制度の構築に取り組むべきです。国連・移住労働者権利委員会が2021年に採択した入管収容問題に関する一般的意見5号(noteの記事)参照。


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