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欧州評議会人権コミッショナーがドイツに子どもの権利保障の強化を要請

 欧州評議会人権コミッショナーのドゥニャ・ミヤトビッチ(Dunia Mijatovic)氏は、7月13日付でドイツのクリスティーネ・ランブレヒト(Christine Lambrecht)連邦司法・消費者保護相/家族問題・高齢市民・女性・若者担当相に書簡(PDF)を送り、基本法(憲法)で国連・子どもの権利条約と同等の保障が定められることを確保するよう促しました。

★ Child in the City: Council of Europe clashes with Germany over child rights and the constitution
https://www.childinthecity.org/2021/09/02/council-of-europe-clashes-with-germany-over-child-rights-and-the-constitution/

 この点に関わるドイツの動向については今年初頭の記事〈ドイツ連立与党が子どもの権利保障のための基本法改正で合意――先行きは不透明〉(1月15日)で紹介しましたが、この改正案は、6月の連邦議会での可決成立には至りませんでした。

 そのことを踏まえ、ミヤトビッチ人権コミッショナーは特に次のように要請しています(書簡では、国連・子どもの権利委員会がこれまでドイツに対して行なってきた勧告にも言及されています)。

 そこで私は、貴職に対し、国連・子どもの権利条約(CRC)に掲げられたものと同一の保障がドイツ憲法において定められることを確保するための努力を続行するよう奨励します。これは、とくに、子どもに関わるすべての活動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならない旨の、CRC第3条で保障された、基本的かつ国際的に承認された原則に関わることです。もうひとつの重要かつ基本的な規定(CRC第12条)は、自己に影響を与えるすべての事柄に関して意見を正当に重視される子どもの権利について定めています。ドイツにおいて意思決定への子ども参加の水準が低いことは……繰り返し提起されているので、ドイツとして、CRCにしたがい、ドイツ憲法に子ども参加の保障を掲げるべき時期であると考えます。私は最近の人権コメントで、子ども・若者問題に関連する健全かつ持続可能な政策立案にとっての効果的な子ども参加の利点を強調し、すべての加盟国に、この点に関する努力を強化するよう呼びかけました。

 人権コミッショナーがこのような要請を行なった背景には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とそれにともなう行動制限(学校閉鎖など)が子どもの権利に悪影響を及ぼしているという事情もあります。人権コミッショナーは、ドイツにおける学校ロックダウン措置がとりわけ厳格であったことを指摘し、学校再開に関する議論において、WHO欧州専門諮問グループが2021年6月末にとりまとめた「COVID-19中の学校」に関する勧告を考慮するよう促すとともに、
「健康、教育、就労の機会または生活条件のいずれに関連するものであるかにかかわらず、COVID-19が子どもたちおよび子どもたちの権利行使に及ぼす長期的悪影響に鑑みれば、政府によるすべての行動において子どもたちの最善の利益が優先事項として考慮されることをいま確保することが、きわめて重要です」
 と強調しています。

 これに対し、ランブレヒト担当相は8月24日付で返書(PDF)を送り、▽子どもの権利条約は連邦法と同等の位置づけを与えられており、条約を踏まえて連邦法の改正も行なわれてきたこと、▽子どもも基本法に掲げられたすべての基本権の主体であること、▽COVID-19対策においても子どもや若者に配慮するための取り組みを行なっていることなどを説明しました。他方、基本法改正については、
「今後、このような憲法改正を実行に移すためのさらなる努力が行なわれるものと確信しております。そして、私もそれを引き続き唱道してまいります」
 として、将来的な実現の可能性を示唆しています。

 ドイツで行なわれた最近の法改正については、〈ドイツ、デジタル環境における子ども・若者の保護および参加を強化〉〈ドイツが子ども・青少年福祉の改革を目的とする「子ども・青少年エンパワーメント法」を制定〉なども参照。日本でも、まずは子どもの権利について包括的に保障する「子ども(の権利)基本法」が必要です。

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