見出し画像

オンラインの子どもの性的搾取・虐待に関する英国の暫定実務規範

 先日の投稿で紹介したとおり、英国政府は5月12日に「オンライン安全法案」を発表しました。

 同法案が可決されれば、関連事業者は、テロ関連犯罪CSEA(child sexual exploitation and abuse、子どもの性的搾取・虐待)犯罪などに関わる違法なコンテンツへの対応をさらに強化することを要求されます。

 とはいえ、これらのコンテンツは現行法でも違法なものであり、対応が必要とされています。英国政府は、2019年4月に発表した『オンライン危害白書』(Online Harms White Paper、PDF)を踏まえ、2020年12月15日、そこに掲げられた提言に対する政府としての対応と2種類の暫定実務規範(interim codes of practice)を発表しました。

 CSEA犯罪に関する暫定実務規範は、次の5つの分野に関わる12の原則から構成されています(原則の全訳は後掲)。

画像1

セクション1:CSEAの特定・防止およびCSEAに関する行動
-原則1:すでに存在する子どもの性的虐待表現物(CSAM: child sexual abuse material)への対応
-原則2:新たな子どもの性的虐待表現物への対応
-原則3:子どもの性的虐待を目的とするオンラインのグルーミング(勧誘)など、予備的な子どもの性的搾取・虐待への対応
-原則4:性的搾取・虐待を目的とする子どもの広告・募集・勧誘・周旋等への対応
-原則5:子どもの性的搾取・虐待を目的とするライブストリーミングサービスへの対応
-原則6:検索結果への表示や自動的な“おすすめ”への対応

セクション2:子ども・被害者・サバイバーのための専門的アプローチ
-原則7:子どもの保護のための安全措置の強化
-原則8:表面上は違法ではないかもしれないものの、適切な文脈および確認によっては子どもの性的搾取・虐待と関連している可能性がある表現物への対応

セクション3:連携
-原則9:十分な情報に基づくグローバルなアプローチの採用/変化しつつある脅威の状況の考慮
-原則10:関連の専門的知見等の共有
-原則11:自社の取り組みの公表・共有

セクション4:ユーザーによる通報
-原則12:通報・苦情申立て・救済のための効果的手続

セクション5:法執行/適切な公的機関への通報(原則1~5)

 このほか、次の資料(Appendix)も添付されています。

1:定義
2:CSEAと英国のデータ保護規則
3:脅威の背景
4:中小企業(SMEs)
5:オンラインのグルーミング(性的目的での加入)に関するガイダンス
6:通報ガイダンス
7:年齢確認手法
8:CSEA関連の、合法的ではあるが有害なコンテンツの例

「表面上は違法ではないかもしれないものの、適切な文脈および確認によっては子どもの性的搾取・虐待と関連している可能性がある表現物」(原則8)や「CSEA関連の、合法的ではあるが有害なコンテンツ」(資料8)に対してどのような対応をとるべきかについては、今後も議論になっていくのではないかと思われます。自撮り(自己生成)画像についても取り上げられていますが、この点については以前の投稿〈子どもの性的搾取・性的虐待に反対する欧州デー:子どもたちによるリスキーな行動の防止〉も参照。

 また、昨年9月に施行された「年齢にふさわしいデザイン:オンラインサービスのための実務規範」も参照。

 以下、今回の暫定実務規範に掲げられた12の原則の全訳を掲載しておきます(以下は有料とさせていただきます)。

ここから先は

1,180字

¥ 300

noteやホームページでの翻訳は、ほぼすべてボランティアでやっています。有用だと感じていただけたら、お気持ちで結構ですのでサポートしていただけると、嬉しく思います。