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教育制度における子ども参加に力を入れようとするアイルランド:新たな「行動計画」より

 先日の投稿で紹介したとおり、アイルランド政府(子ども・平等・障害・統合・若者省=DCEDIY)が4月12日に発表した「意思決定への子ども・若者参加行動計画(2024~2028年)」では、今後焦点を当てていく8つの行動領域それぞれについて、詳細な行動項目・担当機関・時間枠などを掲げたチェックリストが作成されています。

 そのうち2つの行動領域について、どのような行動が予定されているかを紹介しておきます(要旨;太字は平野による)。


1.政府全体を通じて、意思決定ならびに政策、立法および調査研究の発展に子ども・若者の声を組みこむ。

1.1 必要なときはDCEDIYの支援を得て、政策、立法、調査研究およびサービスの発展に際して子ども・若者と適切に協議する。参加プロセスの結果について適時にフィードバックを提供する。
 -1.1a アイルランド全国若者会議(National Youth Assembly of Ireland)のもと、村落部若者会議(Rural Youth Assembly)を毎年開催する。
 -1.1b 全国若者気候会議(National Youth Assembly on Climate)を毎年開催する(そこで出された意見をアイルランドの気候行動計画に反映することも視野に入れる)。
 -1.1c 全国経済対話(National Economic Dialogue)プロセスに若者を包摂する。
 -1.1d コーラナノーグ(子ども評議会)およびアイルランド全国若者会議を、協議のための機構のひとつとして活用する。
 -1.1e 委員会や助言グループに若者を含める際には、コーラナノーグ/アイルランド全国若者会議などの若者フォーラムを通じて代表者を探す。
1.2 政府省庁の戦略声明(Statements of Strategy)の目的のひとつに子ども・若者参加を掲げるとともに、年間事業計画にそのための具体的行動を含める。
1.3 公的資金を得て行なわれる子ども・若者関連プログラム等の資金拠出基準に、子ども・若者と協議しなければならないという要件を含める
1.4 政府省庁および政府資金を得ている機関が子ども・若者向けのサービスを提供する際、フィードバックおよび苦情申立てのための子ども・若者にやさしいしくみが整備されていることを確保する。
1.5 子ども・若者の生活およびウェルビーイングに関連する国際文書について報告するプロセス(子どもの権利委員会・障害者権利委員会への報告、普遍的定期審査〔UPR〕など)の一環として、子ども・若者と協議する。
1.6 「アイルランドで育つということ」(Growing Up in Ireland)研究その他の調査研究プロジェクトのために、幅広い子ども・若者との協議が行なわれることを確保する。
1.7 EU若者対話(EU Youth Dialogue)プロセスにおいて、自己の生活に影響を与える決定について意見を言う機会が引き続き若者に提供されることを確保する。
1.8 早期学習・ケア(ELC)/学童保育(SAC)庁を設置するという政府の計画の一環として、子ども・若者と協議する。
1.9 すべての省における意思決定への子ども・若者参加に関する国家枠組み」の効果的実施を確保する目的で、意思決定への子ども・若者の包摂の促進および能力構築を図るための全庁型作業部会を設置する。
1.10 若きアイルランド:子ども・若者のための国家政策枠組み(2023~2028年)の実施にともなう、子どもの貧困およびウェルビーイングに関するスポットライト行動について子ども・若者に周知し、かつそれらの行動および主要なアウトプットに関するチャイルドフレンドリー版の作成に関して子ども・若者が直接意見を表明できるようにするため、すでに設けられている政府の子ども参加の体制を活用する。

4.教育制度における意思決定に子ども・若者の声を組みこむ。

4.1 教育省の政策の策定・実施への子ども・若者参加を確保するため、教育省内に生徒参加課(Student Participation Unit)を設置する。
4.2 教員、学校上層部、管理委員会および生徒の間で、意思決定への生徒参加の重要性および利点に関する意識を高める。
4.3 学校における参加体制(生徒評議会の役割および意味のある影響力を含む)を強化し、かつ参加を妨げる障壁を取り除くことにより、すべての子ども・若者の声が全面的かつ公平に代表されることを確保する。
4.4 学校監査/学校自己評価への子ども・若者参加を支援する。
 -4.4a カリキュラムの開発・改訂に関して国家カリキュラム・評価審議会(NCCA)が実施するすべての協議に、子ども・若者との協議を含める。
 -4.4b Oide(教員職能学習支援サービス機関)が、教員職能学習支援の開発との関連で学習者の意見を求めるようにする。
4.5 教職審議会の関与を得て、教員・幼児教育職員の継続職能開発ならびに着任前の要件・認定に合わせた、「意思決定への子ども・若者参加に関する国家枠組み」に関する無料のオンラインモジュールを作成する。

 実のところ、4.1に挙げられている生徒参加課(Student Participation Unit)は、昨年(2023年)4月に発表された「キネオルタス(思いやり):いじめ行動計画」実施計画の一環として、すでに設置済みです(追記「キネオルタス」の概要を紹介しました)。同課の活動について助言するため、ランディ・モデルの提唱者であるローラ・ランディ教授(クイーンズ大学ベルファスト/アイルランド国立大学コーク校)を座長とする専門家グループも設けられています。

 学校における子ども参加に関しては、コーラナノーグの全国大会であるドーンナノーグで出された要望を踏まえ、DCEDIYが2019年12月にリソースサイト Our Voices Our Schools(私たちの声・私たちの学校)も開設しています。今回の行動計画を踏まえ、今後さらなる取り組みが進められていくことになりそうです。

 なお、スコットランド(英国)教育省が2018年に策定したガイダンス教育現場における学習者の参加(3~18歳)なども参照。


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