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欧州評議会:デジタル環境と子どもの権利――政策立案ハンドブック

 欧州評議会が2018年に採択した「デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のためのガイドライン」日本語全訳に加え、その内容を子ども・若者向けに解説したリーフレット(2020年)、ガイドラインを実施していくための政策ガイダンス(2018年)の概要について紹介してきました。

 2020年11月には、同ガイドラインを踏まえた『デジタル環境における子どもの権利に関する政策立案者向けハンドブック』も刊行され、同年12月10日にその公式発表を兼ねたウェビナーが開催されています。

★ "All on board - all online": Council of Europe launches a new Handbook for policy makers on the rights of the child in the digital environment
https://www.coe.int/en/web/children/-/-all-on-board-all-online-launch-of-the-new-council-of-europe-handbook-for-policy-makers-on-the-rights-of-the-child-in-the-digital-environment

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 ハンドブックでは、▼国内的枠組み(第2章)、▼実務における運用上の原則(第3章)、▼国際的な協力および調整(第4章)、▼企業との連携(第5章)について、ガイドラインの規定を法律・政策・制度に落としこんでいくための指針が提示されています。第2章~第4章はそれぞれガイドラインの独立した章に対応したものですが、企業との連携について述べている第5章は、ガイドラインの各所に散らばっている企業への言及を整理してまとめたものです。このほか、「人工知能(AI)の進歩と子どもの権利にとっての意味合い」に関する補章も設けられています(ガイドラインではAIには直接言及されていません)。各項目について、欧州評議会加盟国政府が検討すべき設問/チェックリストも作成されており、参考になります。

 政策立案者向けのクイックガイド(pp.7-8)がわかりやすいので、その概要を紹介しておきます。

 まず、ガイドライン全体に適用される原則および権利として、以下の4つが挙げられています。子どもの権利条約との関連では、それぞれ▽子どもの最善の利益(第3条)、▽子どもの発達しつつある能力(第5条)、▽差別の禁止(第2条)、▽子どもの意見の尊重(第12条)の各原則に対応するものです。

1)すべての行動・決定において、子どもの最善の利益は何かが指針とされなければならない。
2)すべての行動・決定において、子どもの発達しつつある能力が考慮されなければならない。
3)すべての行動・決定において、子どもに対する差別が行なわれないことが確保されるべきである。
4)子どもたちは、自分たちに影響を及ぼす事柄について意見を聴かれる権利を有する。

 さらに、運用上の重要な原則として、次の6つが挙げられています。

1)デジタル技術へのアクセスは、子どもの一連の権利を遺漏なく行使できるようにするために、またとくに子どもの教育、包摂および発達にとって、必要である。
2)表現の自由には、子どもが創作して発表する権利や多様な範囲の情報にアクセスする権利が含まれる。
3)結社・集会の自由は、遊ぶ権利と並び、子どもたちがシティズンシップをどのように学習して発達させ、どのようにその他の基本的権利を行使するかにとって、きわめて重要である。
4)子どもの短期的・長期的利益および発達を守るため、個人データを含む子どものプライバシーが保護されなければならない。
5)教育に対する権利は、現在では、デジタルリテラシーや、デジタル環境で学ぶための機会とリソースに対する権利を含むものである。
6)デジタル環境における保護および安全に対する権利は、子どものすべての権利の土台である。デジタル環境における危害のリスクは、子どものウェルビーイングにとって現実の影響を生じさせるためである。

 クイックガイドではこのほか、▼権利を侵害された子どもが救済措置を利用できるようにするべきであること、▼主要な国際機関および企業との協力が重要であることなども強調されています。デジタル環境における子どもの権利について日本で考えていく際にも参考にしたい資料です。

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