アイルランド政府、子ども・若者のための新たな国家政策枠組み「若きアイルランド」を策定
アイルランド政府(子ども・平等・障害・統合・若者省)は、11月21日、「若きアイルランド:子ども・若者のための国家政策枠組み(2023~2028年)」(Young Ireland: the National Policy Framework for Children and Young People 2023-2028)を発表しました。
2014年に策定された「よりより成果、より明るい未来:子ども・若者のための国家政策枠組み(2014~2020年)」(Better Outcomes, Brighter Futures: The National Policy Framework for Children and Young People, 2014-2020)についてはnote〈アイルランド「子ども・若者参加戦略」〉で簡単に触れましたが、「若きアイルランド」はその後継文書という位置づけになります。対象は、0~24歳までの子ども・若者です。
ロドリック・オゴーマン子ども・平等・障害・統合・若者相が序文(Forward)で述べているところによると、「若きアイルランド」は、2021年にアイルランド全域で実施されたプロジェクト「私たちが思うこと」(What We Think)に参加した、1,200人以上の子ども・若者との協議を踏まえて作成されたものです(民族的マイノリティの若者やヤングケアラーとの協議も行なわれており、それらの結果も報告書として公開されています)。
表紙の裏には、「子ども・若者の権利を全面的に尊重・実現するアイルランド」というビジョンが大書されています。
「若きアイルランド」の発表ページでも、次のように説明されています。
このようなビジョンのもと、「若きアイルランド」は次のことを目指しています(pp.15-16)。
● 子ども・若者の権利のためのプラットフォームを提供すること
● 子ども・若者のニーズがすべての人のアジェンダの中心に位置づけられる環境を醸成すること
● 諸課題にスポットライトを当てること(とくに子ども・若者の貧困/メンタルヘルスとウェルビーイング/障害サービス)
● 5つの国家的アウトカム(成果)を達成するための子ども・若者の支援
2番目に挙げられている、子ども・若者の権利保障に資する環境(Enabling Environment)づくりのために構想されている施策は、次のとおりです(p.23以下)。
(1)子ども・若者の参加(note〈アイルランド「意思決定への子ども・若者参加に関する国家枠組み」〉参照)
(2)データおよび調査研究の発展
(3)子ども・若者影響評価(「子ども影響評価」についてはnote〈国際的動向を踏まえたよりよい「こども大綱」に向けて:「子どもの権利影響評価」をめぐる議論と取り組みなど〉およびそこに記載のリンクを参照)
(4)子ども予算
(5)法律の見直し
(6)能力構築
(7)意識啓発
(8)子育て支援
〈9)若者サービス
(10)機関間調整
(11)労働力
日本でもこども基本法を踏まえた「こども大綱」のとりまとめが進められており(マガジン〈国内動向〉の関連記事参照)、子どもの権利保障の向上に向けた第一歩となることが期待されますが、アイルランドの政策などと比べるとまだまだ「権利」の視点が弱いと言わざるを得ません。今後、その視点をいっそう強調していく必要があります。
「子どもの権利が尊重される、本当の意味で子ども・家族にやさしいフィンランドをつくる」ことを目指すフィンランド国家子ども戦略(2021年2月)なども参照。
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