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英国の独立教育監査機関 Ofsted が活動のあり方に関する意見募集「ビッグ・リスン」を実施中

 英国の独立機関であるOfsted(オフステッド:教育・子どもサービス・技能水準監査院)は、あらゆる年齢層の学習者を対象とする教育・技能訓練機関や子ども・若者をケアするサービス機関の監査を実施し、その結果の公表などを通じてこれらのサービスの質の向上を追求する機関です。〈英国の学校評価機関、学校における性暴力についての報告書を発表し、さらなる対策を勧告〉(2021年6月12日)で紹介したように、特定の問題に関する調査を実施することもあります。

 そのOfstedが、自らの活動のあり方に関する意見募集「ビッグ・リスン」を実施中です(3月8日~5月31日)。

★ Ofsted Big Listen
https://www.gov.uk/government/consultations/ofsted-big-listen

 子ども向けの意見募集も3月21日から始まっており、案内動画も作成されています。

 Ofstedのマーティン・オリバー主任監査官(Chief Inspector)による子どもたちへの呼びかけを、動画から訳出しておきます。

 こんにちは、Ofstedのマーティン・オリバー(Martyn Oliver)です。
 子どもは誰でも、最善の教育、最善のケア、最善の機会を保障されるべき存在です。
 子どもたちがそれを手にしているかどうか確認するのがOfstedの仕事で、私たちは、この大切な仕事をできるかぎりうまくやりたいと思っています。
 つまり、私たちが保育園、児童養護施設、学校、大学などを監査するときに、正しい事柄に目を向けるようにするということです。子どもたち、若者たち、そしてその親や家族にとって大切な事柄に、です。
 そのために、私たちは「ビッグ・リスン」を始めました。これが、みなさん全員から意見を聴くための、私たちのやり方です。
 子ども・若者から直接意見を聴くために作られたバージョンもできました。あなた自身でも、あなたが知っている誰かでも、参加できます。もっと知りたい方は、gov.uk/ofstedbiglisten を見てください。

 意見募集では、主として次の4つの分野に焦点が当てられています。

  • (監査結果の)報告方法

  • 監査実務のあり方

  • 文化と目的

  • (子ども・専門家・機関・親の選択に監査が及ぼす)影響

 意見送信フォームには英国外からはアクセスできないのですが、教職員組合NASUWT回答のためのガイダンスページを設けており、内容を把握することができます(それによれば、上記の4分野のほか、「学校における安全確保(セーフガーディング)」および「特別な教育上のニーズと代替的教育」に関するセクションも設けられているとのことです)。

 子ども向けの意見募集については、SSS Learning: Children's Voices Shaping Education Inspection - Ofsted's Big Listen という記事(4月21日配信)である程度紹介されています。以下、抜粋します。

 調査の主要な設問群のひとつは、Ofstedの監査官が学校訪問の際に重視すべきだと子どもたちが考える優先的問題をめぐるものです。調査では、授業の質や、特別な教育上のニーズおよび障害(SEND)のある生徒への支援から、児童生徒の全般的ウェルビーイングおよび安全の問題に至るまで、子どもたちが、気になっていることや教育環境に望むことについて意見を言えるようになっています。

 調査ではさらに、教育体験に関する総合的な知見を得るためには生徒と直接やりとりすることが大切であるという認識のもと、どうすればOfstedが監査中に子どもたちの視点を効果的に集められるかについても掘り下げようとしています。加えて、社会的ケアの支援を受けている回答者がどのぐらいいるかも把握しようとしており、さまざまな状況で子どもたちが直面する多様なニーズや課題に対応していくことへのOfstedのコミットメントを明らかにしています。

 Ofstedは、オンライン調査と並行して、とくにケアを経験している子ども・若者(少年司法制度の対象とされている子ども・若者を含む)を対象として、一連の「ビッグ・リスン」フォーカスグループを実施する計画も発表しました。5月と6月に予定されているこれらのセッションでは、周縁に追いやられている声のためのプラットフォームを提供し、寄せられるフィードバックに多様な層の現実や懸念が反映されるようにすることが目指されています。

 アイルランドが今年4月に発表した新たな「意思決定への子ども・若者参加行動計画」では、今後の取り組みとして「学校監査/学校自己評価への子ども・若者参加を支援する」ことが挙げられています。日本の「学校評価ガイドライン」(2016年改訂)でも児童生徒へのアンケートや児童生徒との対話について言及されていますが、よりよい評価のあり方について、子どもたちの意見も踏まえてさらに検討していく余地はあるでしょう。

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