アイルランド子どもオンブズマン、デジタルメディアを通じた子ども参加の推進に関する報告書を発表
アイルランド子どもオンブズマン事務所は、2021年9月23日、『デジタルボイス:ソーシャル/デジタルメディアを通じた、意見を聴かれる子どもの権利の前進』(Digital Voices: Progressing children's right to be heard through social and digital media)と題する報告書を発表しました。同事務所がダブリン工科大学(Technological University Dublin)の研究者に委託して行なった調査の結果をまとめたものです。
調査は、文献レビューのほか、子どもたちとの広範な協議(13~17歳の子どもを対象とする4回の参加型ワークショップ/8~17歳の子どもの参加を得た10のフォーカスグループ)、関係専門家へのインタビューなどを通じて行なわれました。国連・子どもの権利委員会が採択した関連の一般的意見(とくに、デジタル環境と子どもの権利に関する25号、意見を聴かれる子どもの権利に関する12号、思春期の子どもの権利に関する20号)や、意見・表現の自由に対する権利についての国連特別報告者が2014年に発表した「表現の自由に対する子どもの権利」についての報告書も参照・引用されています。
アイルランド子どもオンブズマンのナイアル・ムルドゥーン(Niall Muldoon)氏は、報告書の序文で、今回の調査の全般的知見を次のようにまとめています。
これらの点については、〈6.4 デジタル参加の成功のための原則〉として、報告書の後半(pp.90-93)でより詳しく述べられています。
また、参照すべきモデルとしては、ローラ・ランディ(Laura Lundy)が2007年に発表した論文「『声』だけでは十分ではない:国連・子どもの権利条約第12条の概念化」('Voice' is not enough: conceptualising Article 12 of the United Nations Convention on the Rights of the Child)で提唱したランディ・モデルが挙げられています。これは、子ども参加を「場」(space:意見表明の機会)、「声」(voice:表明された意見)、「受け取り手」(audience:子どもたちの声に耳を傾けるべき意思決定者)および「影響力」(influence:子どもたちの意見の実行)という4つの観点から捉えようとするもので、報告書ではpp.29-30で次のような図とともに説明されています。
ランディ・モデルについては、一般社団法人日本意思決定支援ネットワーク(SDM-Japan)による次の解説も参照してください。
報告書では、今後の取り組みとして、「子ども・若者のデジタル参加憲章」の策定をはじめとする、基盤整備のためのいくつかの方策を提唱しています(pp.93-95)。
アイルランドは2015年に「意思決定への子ども・若者参加に関する国家戦略(2015~2020年)」を策定したほか、今年(2021年)4月にはランディ・モデルを踏まえた「意思決定への子ども・若者参加に関する国家枠組み」(National Framework for Children and Young People's Participation in Decision-Making)も発表しました(これについてはあらためて紹介するつもりです)。オフライン・オンラインを問わず、日本での子ども参加のあり方を考えていくうえで示唆に富む点が多いと思います。
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