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韓国・子どもの権利保障院、オンラインコンテンツにおける子どもの人権保護のためのチェックリストを発表

 韓国国家人権委員会が芸能界で働く子どもの人権保障の強化を勧告したことについて以前の投稿(2022年5月16日付)でお知らせしましたが、韓国・子どもの権利保障院(保健福祉部)はこのほど、オンラインコンテンツにおける子どもの人権保護のためのチェックリストPDF)を発表しました(1月13日)。

 このチェックリストは、「子どもが出演するオンラインコンテンツの制作準備、制作および流通前の過程で子どもの出演者の権利侵害を予防」することを目的として、子どもが出演するオンラインコンテンツのクリエイター向けに作成されたものです。次の11項目の設問が用意されており、それぞれについて解説と「根拠基準」の説明が付されています。

【制作準備段階】
1.「インターネット個人放送に出演する子ども・青少年の保護指針」*を読んでみましたか?
* 韓国放送通信委員会が2020年に策定した、子ども・青少年コンテンツの制作者が考慮すべき一般原則、制作過程における注意点およびインターネット個人放送事業者の義務などを明らかにした指針。
2.子ども・青少年出演者と保護者に対し、コンテンツの制作趣旨や性格、リスク要素などをわかりやすく説明して同意を受けましたか?
3.コンテンツの流通プラットフォームおよび収益の創出方法・配分方式などについて、子ども・青少年出演者と保護者にわかりやすく説明して同意を受けましたか?

【制作段階】
4.法律で定められた子ども・青少年の制作・撮影時間を遵守していますか?
* 大衆文化芸術産業発展法第22条および第23条により、15歳未満については1週間に35時間、15歳以上については1週間に40時間を超えてはなりません。また、午後10時から午前6時までの夜間撮影は禁止されています。
5.子ども・青少年の健康権、学習権、睡眠権、休憩権を保障したうえで撮影を行なっていますか?
6.子ども・青少年を身体的・情緒的・心理的に安全な形で保護したうえで撮影を行なっていますか?
7.子ども・青少年を性的対象化して描写していませんか?
8.子ども・青少年を不当な差別の対象として描写していませんか?

【流通(公開)前段階】
9.子ども・青少年の個人情報や私生活が本人と保護者の同意なしにさらされている場面はありませんか?
10.子ども・青少年が成長後に気まずい思いや恥ずかしい思いをする場面はありませんか?
11.コンテンツについたコメントで子ども・青少年が心理的に傷つかないよう、適切な措置をとっていますか?

 たとえば、〈7.子ども・青少年を性的対象化して描写していませんか?〉については次のような解説が添えられています。

 子ども・青少年が出演するコンテンツを制作する者は、「大衆文化芸術産業発展法」第21条により、児童・青少年出演者に過剰な露出行為や煽情的な表現行為をするようにさせてはいけません。子ども・青少年出演者を性的遊戯の対象として描写したり、性的羞恥心を起こさせる可能性があるほど身体を露出させたりする行為などは、「児童福祉法」第17条(禁止行為)や「青少年保護法」第30条(青少年有害行為の禁止)等に該当するとして刑事処罰を受けることがあります。

〈8.子ども・青少年を不当な差別の対象として描写していませんか?〉という設問の解説は次のとおりです。

 子ども・青少年はあらゆる種類の差別から保護されなければならず、不当な扱いを受けてはなりません。子ども・青少年が出演するコンテンツを制作する人は、子ども・青少年出演者の性別、容貌、地域、年齢、障害の有無、宗教、国籍、人種、特定文化などについて誤った固定観念を持たないように注意してください。また、特定の集団に対する侮蔑、差別、偏見、嫌悪を助長するコンテンツを作成しないようにしてください。

〈10.子ども・青少年が成長後に気まずい思いや恥ずかしい思いをする場面はありませんか?〉の解説では、2022年7月に発表された「子ども・青少年個人情報保護基本計画」で子どもの「忘れられる権利」の制度化方針が打ち出されていることにも言及したうえで、アップロード前によく考えることが促されています。

 韓国政府は、2020年8月に発表した第2次子ども政策基本計画(2020年~2024年)で、インターネット放送などに出演する子ども(キッズ・ユーチューバーなど)の権利保護のための指針を策定する方針を打ち出していましたが、今回のチェックリストはその一環として策定されたものと考えられます。同基本計画ではあわせて韓国版「クーガン法」(子役などが稼いだ収益の一部を本人のために残すことを義務づけた米・カリフォルニア州法)の制定推進も表明されており、今後動きがあるかもしれません。

【追記】(2023年8月19日)
 本件に関連して、子どもの権利保障院の院長を務めるチョン・イクチュン氏の連続インタビュー記事が KOREA WAVE に掲載されましたので(いずれも8月18日付)、紹介しておきます。

-〈「短時間のユーチューブ撮影も児童にとっては『労働』だ」…韓国の専門家がこう訴える深刻な理由
-〈「短時間のユーチューブ撮影も児童にとっては『労働』だ」…韓国専門家インタビュー〉


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