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ユニセフ、先進国の子どもの環境とウェルビーイングに関する「レポートカード」を発表

★ユニセフ(日本ユニセフ協会)-ユニセフ報告書「レポートカード17」発表 先進国の子どもの環境と幸福度 意思決定に子どもの声を
https://www.unicef.or.jp/news/2022/0110.html

 ユニセフ・イノチェンティ研究所による上記の報告書が発表されました(5月24日)。経済協力開発機構(OECD)/欧州連合(EU)加盟国39か国が子どもにとって健康的な環境をどれだけ提供しているか、さまざまな指標を用いてランク付けしたものです(報告書の原文はこちらを参照)。経済的に豊かな国々の子どもたちのウェルビーイング度(幸福度)を比較検討してランク付けし、日本の子どもの精神的ウェルビーイング度が37位と振るわなかったことで話題となった、レポートカード16(2020年)に続くものとなります。

 各国の状況の評価は、「子どもの世界」(World of the Child)、「子どもを取り巻く世界」(World around the child)、「より大きな世界」(World at large)という3つの観点から行なわれています。その概念図は次のとおりです。

● 子ども:身体的健康/精神的ウェルビーイング/スキル
● 子どもの世界:寒暖/有害物質/水質/農薬/大気汚染/光害/騒音公害
 -指標:大気汚染/水質汚染/鉛による汚染
● 子どもを取り巻く世界:家庭向けの基礎的サービス/校庭/住宅の質/家庭空間/遊びのための施設/公共交通機関/緑地/徒歩による移動のしやすさ/交通量
 -指標:過密な住環境/都市部の緑地/道路の安全
● より大きな世界:自然環境管理/住宅・交通運輸政策/気候変動・自然災害/廃棄物・リサイクル/再生エネルギー/CO2(二酸化炭素)排出量/食料安全保障
 -指標:現在の消費水準を維持するために必要な地球の個数/電子廃棄物の発生量/消費ベースのCO2排出量
(指標については報告書p.14参照)

 日本は、「子どもの世界」2位、「子どもを取り巻く世界」21位、「より大きな世界」25位で、総合順位は13位でした。

https://www.unicef-irc.org/places-and-spaces

 日本で暮らしている子どもたちは、環境面では相対的に良好な状況にあるようですが、ユニセフ・イノチェンティ研究所のグニラ・オルソン所長が前掲プレスリリースで指摘しているように、まだまだ改善の余地はあります。また、
「経済的に豊かな国の多くは、自国の子どもに健全な環境を整備できていないだけでなく、世界の他の地域で、子どもたちの環境を破壊することに関わっています。国内では比較的健全な環境を整備できている国が、国外の子どもたちの環境を破壊してしまう汚染物質の、主要な排出国になっているケースも見られます」(オルソン所長)
 という懸念すべき実態もあります。

 UN News の記事はこの点をより強調し、〈世界のもっとも豊かな国々が世界中で子どもの健康を害している〉という見出しを立ててユニセフの発表を奉じました。

-UN News - World's richest countries damaging child health worldwide: UNICEF
https://news.un.org/en/story/2022/05/1118902

 報告書でも触れられているように(p.6)、国連・子どもの権利委員会は、子どもの権利条約の締約国は自国の二酸化炭素排出が子どもたちの権利に及ぼす否定的影響について自国の領域内外で責任を問われ得るという見解を明らかにしています。このような認識を国内外で共有していくことが必要です。

 今回の発表を踏まえてユニセフは5つの提言を行なっていますが(前掲プレスリリース参照)、とくに次の2点はあらためて強調しておく価値があるでしょう(3との関連で〈気候変動計画における子どもへの配慮は世界的に不十分――ユニセフ〉も参照)。

3 環境政策を、子どもに配慮したものとなるようにすること。各国政府、政策立案者らは、意思決定の中に確実に子どものニーズが組み込まれるようにすべき〔で〕ある。
4 将来の主たる当事者である子どもたちに関与してもらうこと。子どもたちは、今日の環境問題と最も長い期間向き合うことになるにもかかわらず、及ぼすことができる影響力は最も小さい。親から政治家に至るまで、あらゆるおとなは、将来の世代により大きな影響を与えるような政策を立案する際には、子どもの意見に耳を傾け、考慮しなければならない。

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