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COP28:教育と気候変動のための共通アジェンダに関する宣言

 前回の投稿で取り上げたCOP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)では、期間中の12月8日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が主導する「グリーン化教育パートナーシップ」(Greening Education Partnership: GEP)の第1回年次総会(PDF)も開催されました(GEPについては神田和可子〈ESDと気候変動教育(その14) 地球規模課題への教育的アプローチ〉など参照)。

 総会の一環として「グリーン化教育に関するハイレベルセッション」も開催され、その成果として「COP28における教育と気候変動のための共通アジェンダに関する宣言」The Declaration on the Common Agenda for Education and Climate Change at COP28〔PDF〕)が採択されています。日本も41か国の賛同国(本稿執筆時点)に名を連ねていることもあり、以下に訳出しておきます。

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COP28における教育と気候変動のための共通アジェンダに関する宣言

 われわれは、コミットメントを有する加盟国として、COP26とCOP27における成果を踏まえ、ドバイ(アラブ首長国連邦)で開催される第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)を前に/において、教育と気候変動のための共通アジェンダに関するこの宣言を採択する。

● 気候危機が子どもたち、とくに女児および周縁化された集団に不均衡な影響を及ぼしているおり、気象関連災害がすでに学習を大規模に阻害していることを認識し、教育制度について、変化しつつあるこの世界で子どもたちと若者が生存しかつ豊かに成長できるようにするために緊急の適応が図られなければならない。

● 乳幼児期から生涯学習に至る質の高い教育についてのSDG4の一環としての持続可能な開発のための教育が、変化しつつある世界のために必要な知識およびスキルを提供し、かつ、持続可能な開発のための教育に関するベルリン宣言で強調されているとおり、より持続可能、衡平かつ公平で気候変動耐性の高い社会に向けた大規模な転換の原動力として不可欠な役割を果たすものであることを重視し、われわれは、すべての人を対象とする包摂的で質の高い教育を達成し、かつ環境持続可能性を前進させるための努力のコベネフィット(共通利益)を最大化しなければならない。

● 国連・気候変動枠組条約第6条およびパリ協定第12条を想起し、われわれは、各国に対し、低炭素で気候変動耐性の高い経済および社会への移行を支えるため、気候変動教育を強化するよう呼びかける。

● 気候教育および緊急事態準備計画における懸念すべき資金ギャップのため、気候緊急事態に対処するための十分な教育戦略の策定能力が阻害されていることを認め、われわれは、持続可能な教育制度を維持し、かつすべての学習者が気候変動の影響に備えられるようにすることを支える既存の国際教育基金および気候教育のしくみ――多国間開発銀行、教育のためのグローバル・パートナーシップ、Education Cannot Wait(教育を後回しにはできない)およびグリーン化教育パートナーシップのための国連マルチパートナー信託基金を含む――を歓迎する。

● COP28および将来のCOPsで教育、若者およびスキルに焦点が当てられることを認識し、われわれは、一貫性(cohesion)を促し、連携を深め、かつ世界規模で気候危機を緩和するための手段としての教育に関する実体的なコミットメントを確保することにより、上記の諸問題を是正するための機会を動員する。

 グリーン化教育パートナーシップの行動の4本柱(学校のグリーン化、カリキュラムのグリーン化、教員養成・研修および教育制度の能力のグリーン化ならびにコミュニティのグリーン化)を通じた気候変動対策に資する(climate-smart)教育を構築するための国際的努力をさらに進めるため、われわれは、次のものを含む、適応、緩和および投資のための焦点化された行動へのコミットメントを表明する。

コミットメント領域1:適応

1.1 われわれは、脆弱性を特定するとともに、気候危機に対処し、適応措置をとり、かついっそう耐性の高い教育制度を構築するための国家的教育戦略を実施することを誓約する。われわれは、自国の国家的適応戦略に教育を含めることによって、われわれのコミットメントを実証する。

1.2 われわれは、新たな気候現実に適応し、かつ持続可能な未来のための革新的解決策を発展させるための十分な知識、スキル、価値観および態度を発達させることに関してすべての学習者を支援することにおける教育の役割を重視することを誓約する。

コミットメント領域2:緩和

2.1 われわれは、気候緩和への積極的関与に向けてすべての学習者を準備させる、気候変動対策に資する耐性の高い教育制度を構築するための包括的な教育セクター戦略の策定を誓約する。われわれは、国が決定する貢献(NDCs)に教育を含めることを奨励することにより、われわれのコミットメントを実証する。

2.2 われわれは、教育セクターにおけるネットゼロ排出を達成するため、教育の役割にてこ入れすることを誓約する。

コミットメント領域3:投資

3.1 われわれは、教育復興を支援し、かつ教育制度におけるおよび教育制度を通じた気候適応・緩和措置を促進する目的で、教育のための世界的資金拠出の増額(気候基金および気候制度を通じて行なわれるものを含む)を支える強力なセクター間連携を誓約する。

3.2 われわれは、現在存在するギャップに対応する一助となり、かつ気候変動への備えを有する制度および学習者を生み出すことにつながる教育への資金拠出(国際的な教育基金、パートナーシップおよび革新的な資金拠出機構への投資によるものも含む)を、国内的にも国際的にも奨励することを誓約する。

 われわれは、教育と気候変動に関連する子どもたちおよび若者の要求に耳を傾けて対応していくことに対するコミットメントに関して一致団結するとともに、今後の締約国会議でこの宣言の実施状況について検討することを約束する。われわれは、他の国々/政府に対し、この宣言に賛同し、国レベルでの実施を加速させ、かつ、21世紀のニーズにふさわしい質の高い気候教育に対するすべての学習者の権利を確保することを通じてこの星をより公正、、安全、持続可能かつ豊かなものにしていくという共有された目的に向けた国際協力を増進させるよう、呼びかける。

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