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大人になるとできなくなってくること。あなたは大丈夫?



「大人になるとね、自分の気持ちを自分の言葉でだんだん言えなくなってくるんだ」


こどもは正直だ。自分を守るすべをみんなちゃんと知っている。
初めての場所で"危険だ""怖い""不安だ"と思うと、家の中でひっきりなしにおしゃべりしている子でも、途端に借りてきた猫のようにおとなしくなり、中には一言も喋らなくなることも珍しくない。(大体そういうお子さんはあとからInstagramやLINEで"かめきちせんせー、ありがとー!"という満面の笑みの動画を送ってくれる。バチボコかわいい。)


特別支援学校に通う14歳の脳性麻痺の女の子がかめきちのリハビリを受けに来てくれた。とても印象的で、心がひりひりした1時間を過ごした。
真っ直ぐな目で、必死に生きている一人の女子だった。

ーかめきち
『はじめまして、(中略)〇〇さんとはじめて会うので、よかったらあなたの一日のことを教えてほしいな。』

ー彼女
「はい。よろしくお願いします。」

ーかめきち
『朝起きたら、どうやってリビングにいくのかな?』

ー彼女
「自分で起き上がることは難しいので、お父さんかおばあちゃんに朝は起こしてもらっています」

ーかめきち
『そうなんだ。朝ごはんはこの椅子で食べるの?』

ー彼女
「そうです。」

ーかめきち
『(中略)学校から帰ってきたらどうやって過ごすの?』

ー彼女
「うーん、勉強するかな。アイパットとかでやってる。」

ーかめきち
『宿題やるんだ、エライねw』

ー彼女
「うん、勉強、好き。」

ーかめきち
『学校、とっても疲れると思うんだけど帰ってから"はぁー、つかれたぁー"ってmベッドに横になったりしないの?』

ー彼女
「。。。うん。一人だと(横になるの)難しいから。でも、勉強が好きだから。そのまま座ってることが多い。新しい椅子にしてからはそんなにお尻も痛くないです。」


などと一日の流れを聞いていき、探りながら本題に入っていく。

ーかめきち
『〇〇ちゃんは、やりたいこととか出来るようになりたいこと、ある?』

ー彼女
「うーーーーん。。。」

ーかめきち
『難しかったかな。ごめんね。〇〇ちゃんは体をどういう風に動かして、どういうことをしたいな、とかあるかな?』

ー彼女
「とにかくいっぱい体を動かしてみたいです。思いっきり動かしていろんなことをしてみたいです。そうしたら楽しいと思う。腕とか、、指とか、、もう少しよく動いたら宿題もやりやすいと思う、、」

ーかめきち
『そうか。教えてくれてありがとう。したいこと、言ってくれてありがとうね。〇〇ちゃんは自分の気持ちを言葉にすることができて、とても素晴らしいね。私思うんだけど、大人になるとね、自分の気持ちを自分の言葉でだんだん言えなくなってくるんだ。だからエライよ。』

彼女は首をちょっとかしげてはにかむ。聡明な子なので、私の言っていることは理解しているがまだ身近ではない、そんな印象だった。

ひとつひとつの現象を言葉にしてくれる子だった。
それも14歳とは思えないくらい、周囲を気遣う言葉だった。
場の共通言語でないものは、きちんと周りにわかる言葉に瞬時に言い換えている子だった。

あぁ、素敵だなぁと思った。私はこうやって思いを言葉にできているかな。この子のように、まわりの形に合わせてなめらかに言葉を紡げているかな。尖った言葉の刃で誰かを傷つけてないかな。そう思いながら彼女の献身的な周囲への気遣いに心がひりひりと傷んだ。

最後、介入が終わり、『またねー!ありがとうねー!』とさよならの挨拶をしたのもつかの間、玄関まで行った彼女が踵を返し、ルームに戻ってきたのだ。

ん?どうしたんだろう?と思うわたしの目をまっすぐと見た彼女は私に、


「かめきち先生、ありがとうございました。先生の足の動かしかた、今までで一番よく自分の足がわかりました。こうやって自分の足を動かすんだって思いました。」

その後くるっと村上さんの方をみて

「エアマットでストレッチしてもらったの、今までで一番リラックスができました。気持ちよかった。ありがとうございました。」

と伝えて、さよならをしてくれた。


そのとき私は『理学療法士、冥利に尽きます!ありがとう!!』なんて言ったんだけど、心のなかでは感情が抑えきれなかった。


彼女のひとつひとつの言動が、ただの「大人びている中学生」ではなかった。体が「不」自由であるもどかしさや、周囲への配慮や、自分が置かれている様々な環境などのすべてが彼女を作っているのだ。
その上で、人に具体的に気持ちを伝えられる。人に具体的に感謝を伝えられる。なんて、なんて、なんて素晴らしいことなんだろう。


臨床後、村上さんが『あの言葉は、一生残るね。』と言った。

私は人に「ありがとうございます」を伝えるときに具体的な内容を言えているだろうか。適当な挨拶になってやしないだろうか。自分がしてもらって嬉しかったことをちゃんと言葉にできているだろうか。

どのこどもにも、毎回毎回本当に頭が上がらない。
彼達、彼女たちの生命エネルギーは素晴らしすぎる。
いっぱいに生きている。いっぱい教えてくれる。



今日もありがとう。



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