見出し画像

子どもの幸福度2020:身体的・精神的健康に着目して


2020年9月に発表されたユニセフ報告書「レポートカード16」では、高所得国(いわゆる先進国)の子どもの幸福度がランキング形式で示されました。※ちなみにレポートカードは通信簿の意。

日本の総合順位は20位(38カ国中)!(ん?思ったより順位低くない!?)

この幸福度は身体的健康、精神的健康、スキルの3つの観点から評価されていて、日本は、身体的健康(1位)、精神的健康(37位)、スキル(27位)となっています。

身体的健康1位ときくと、特に問題はないようにみえるものの、本当にそうかしら...?子どもが健やかに成長するためには心身ともに健康であることが生活の基盤であることから深掘りしてみたいと思う。

1.身体的健康(38カ国中1位)

まず、身体的健康は2つの指標(死亡率と過体重割合)から評価されている。

1.5−14歳の死亡率:0.73(1000対、41カ国中9位)

※Mortality rate per 1,000 children aged 5–14 years, 2018

※ルクセンブルクが1位で、次いでデンマーク、フィンランド、ノルウェー、アイルランド、スイス、スペイン、ドイツが日本よりも上位を占める。

※平成28年人口動態統計(第5表 性・年齢階級別にみた死因順位)によると、

5−9歳の死因順位:1)悪性新生物、2)不慮の事故、3)先天奇形、変形及び染色体異常、4)肺炎、5)心疾患

10−14歳の死因の順位:1)悪性新生物、2)自殺、3)不慮の事故、4)先天奇形、変形および染色体異常、5)心疾患

となっている。悪性新生物(いわゆる癌)や先天奇形、変形および染色体異常、心疾患は原因不明のことも多いけれど、不慮の事故や自殺はなんとか防ぎたい、減らしたい。また小学生の肺炎が4位なのも気になるところ。

コロナ前の研究では、子どもの傷害死(不慮の事故や自殺等)には季節性があって、不慮の事故(主に交通事故や溺死)は夏に、自殺は春に多いと報告されていることから、夏休みの交通事故や、海水浴や川での溺死、新学期や休み明けの自殺には特に注意したいところ。

2. 5−19歳の過体重・肥満(BMI >25 kg/m2)の割合:14%(41カ国中1位)

※Percentage of young people aged 5–19 years who were overweight or obese in 2016

※女子は、男子よりもbody imageと生活満足度が強く関連しているとする研究報告も。

※日本は1位だけれど、14%は決して少なくない。朝ごはんをきちんと食べていますか。主食・主菜・副菜が揃った食事を取れていますか。等、コロナ太りも心配な今日この頃、食生活を今一度見直したい。

2.精神的健康(38カ国中37位)

次に、精神的健康も2つの指標(生活満足度と自殺)から評価されている。

1.生活満足度が高い15歳の割合:62%(33カ国中32位)

※Percentage of children with high life satisfaction at 15 years of age 

2.15−19歳の自殺率:7.5(10万対、41カ国中30位)

※Suicide rate per 100,000 adolescents aged 15–19 years

いずれも思春期の子どもたち(中高校生・大学生)への支援がより求められている分野といえそう。

3.政策面:社会と健康

さらに政策面においても、社会・健康指標が国際比較され、心配な面が。それぞれ2つの指標:社会(両親の育休週数と子どもの貧困率)と健康(はしかワクチン接種率と低出生体重児割合)から評価されている。

<社会(7位)>

1. 母親・父親に認められる育児休業の週数:66.1週(2018年、41カ国中5位)

※Weeks of leave available to mothers and reserved for fathers in 2018, in full rate equivalent

※average 36 week full pay. 日本は、母親と父親あわせて認められているのが66.1週となっているものの、父親の育休取得率の低さ(雇用金等基本調査2019年度による育休取得率:男性7.48%、女性83.0%)を考えると、制度としては5位かもしれないけれど実態からはかけ離れている様子。

2. 子どもの貧困率:18.8%(2018年、41カ国中17位)

※Percentage of children living in households with income below 60 percent of the national median income in 2008, 2014 and 2018

※average 20%

※生活困窮世帯への支援がまだまだ足りていない。

<健康(34位)>

1. はしかワクチン(2回目)の接種率:93%(2018年、41カ国中16位)

※Percentage of children who received the second dose of the measles vaccine

※日本は、はしかの予防接種率が2010年から2018年にかけて低下した国の一つ。コロナ禍においても定期接種のワクチンは確実に打ちたいところ。

2. 低出生体重児(2,500g未満)の割合:9.4%(2017年、41カ国中40位)

※Number of live births weighing less than 2,500 grams as a percentage of total live births

※日本で非常に深刻な課題。特に30年前から悪化して現在高止まりしている。低出生体重児を減らすためには、妊娠中の栄養バランスと適切な体重増加がすごく大事。これについてはまた今度深掘りしたい。


個人だけでなく、地域や学校との繋がりや政策など、包括的な支援の必要性が概念図として提示されている。

画像1

♦︎参考URL

1. Worlds of Influence: Understanding what shapes child well-being in rich countries

2. ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング 日本の子どもに関する結果

3. 厚生労働省「平成30年我が国の人口動態」

4. Seasonality of child and adolescent injury mortality in Japan, 2000–2010




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?