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『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』チェリまほの優しい世界

■ Watching:

- 『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』12話

昨日で見終わりそうな勢いだったけれど、1日寝かせて今日最終話を見た。

最初から最後まで、本当に優しい物語だった。「傷つけないこと」に対して最大限に配慮されているということが節々から伝わってきた。

全体を通してすごく良かったと感じたのは、「男同士なのに○○」「男同士だから○○」という描写がほとんどされていなかった点。

私は『おっさんずラブ』が大好きでとても楽しく見ていたが、ひとつ気になった部分があった。特に物語の前半において、主人公が同性との恋愛に対してかなり強めに否定的な態度をとっているということだ。『おっさんずラブ』は演出がギャグに寄っており、その中で"同性からの愛情表現に大きな声でびっくり・否定する主人公"というのが、お決まりの芸のようになっているところがあった。自身はヘテロセクシュアルで同性に好かれた場合の対応の仕方が分からないという描写であり、同性愛そのものを否定する姿勢ではないと解釈しているが結構ゴリゴリに否定するのだ。

大衆が楽しむことが偏見が減ることに繋がりうると思うので、同性愛の物語にギャグを取り込むこと自体は悪くないと思う。ただ、ギャグにする箇所を慎重に検討する必要があるのではないか、ギャグに寄せようとする場合見る側にある程度リテラシーが求められるのではないか、と考えさせられたドラマだった。

『チェリまほ』にはそのような点において気になるところがあまりなかった。安達は黒沢から好意を寄せられることに対して困惑していたが、それは黒沢が男性だからではなく、自身の恋愛経験がほとんどないからという設定であった。また周囲の人の肯定の仕方が、「男性同士の恋愛も悪くないと思う」というような、「普通ではないかもしれないが」が裏に透けて見える「自分は肯定しますよ!」でなかったのも良かった。

それだけでも十分すぎるぐらい素敵なドラマであるのに、なおかつ面白く、何よりアツい!

特に湊に対する柘植の台詞はちょっぴりクサいぐらいに熱いけれどすごく胸に響いたし、少しずつでも変わろうとする安達に力一杯のエールを送りたくなった。

安達と黒沢はもちろん、柘植、湊、藤崎、六角。登場人物たちが相手を尊重し、前向きに自分らしく生きようとする姿に力をもらうことができた。見て良かったです。

■ Reading:

- 沼堕ち続出ドラマ“チェリまほ”の多様な世界はどうやって作られたのか【脚本家・吉田恵里香さん】

- “チェリまほ”脚本家が語る、面白さと配慮の共存方法「わかる人にだけ、では世界は変わらない」

脚本家・吉田恵里香さんのインタビューが本当に良かった。自分で感じ取っていた以上にたくさんの工夫がなされていたことが分かり、チェリまほの世界に対する愛が一層深まった。吉田さんの別の作品もぜひ見てみたい。

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