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水族館のあり方を考える。

関西滞在中に行った、兵庫県の城崎マリンワールドの話。
ここの水族館の敷地内にある日和山海岸ミュージアムには、水族館として、地域として「命を考える」取り組みが紹介されていた。


私は一部メディアから、日本でも問題になっているイルカ漁や、イルカショー含む海洋哺乳類の餌付けによる飼い慣らしと技の訓練、その裏にある水族館のビジネスに関する問題を少し見聞きして、水族館に対して複雑な気持ちを抱いていた。
そもそも人間が野生の動物を取ってきて、飼い慣らすことに関して、少し抵抗を感じ始めていた。
最近では、国際的な圧力から、国内でもイルカ漁からの取引が厳しくなったことで、JAZA(日本動物園水族館協会)から脱退した水族館が数多くあるとか。単純な気持ちで水族館に行っていいのか分からず、しばらく避けていた。

なんだかんだ私の活動を尊重してくれる父に誘われたから、とりあえず、この水族館のJAZA加盟を確認して、行ってみたら、少し違う視点から水族館のあり方を考えさせられた。

水族館は特に子供たちに、中々日常生活で知ることができない水中世界に少しでも興味を持ってもらうことにおいて重要。研究所と提携してることが多く、水中生物の研究においても重要。


ここではその従来の水族館のバリューも大切にしつつ、より自然に近い環境や、お世話の仕方を追求していた。

主に取り上げていたのは、この地域(兵庫県豊岡市)で行ってきたコウノトリの野生復帰プロジェクト。コウノトリは従来、稲の害虫を食べるとして、田んぼの生態系では大事な役割を果たしていた。しかし、戦後、経済と効率を優先させた結果、農薬や舗装工事などで絶滅に瀕した。
「いつか空に帰すから」と、コウノトリと交わした約束のために、豊岡市では、コウノトリの人工繁殖から環境の整備まで、市民一丸となって取り組み、ついにコウノトリを自然に返すことに成功した。今では農薬不使用の米の生産のために、コウノトリがせっせと田んぼで働いている。
水族館からの帰り道に通った田んぼ風景には、優雅に歩き、空を舞うコウノトリの姿を見た。

環境を人の手で壊してしまったのなら、人の手で再生する義務がある。それを物語る代表例となるだろう。

その他にも、イルカやアザラシなど、海洋哺乳類の繁殖、子育てについて、あえて人の手を加えずに、自然の本能に任せる取り組みなどが紹介されていた。

水族館を見学していて、やはり、野生の状態には程遠い展示もたくさんあった。しかし、水族館も生き物を扱っている以上、色々な問題があることを認識していて、ひとつひとつ解決に向けて、試行錯誤してるんだなと感じた。

水族館は動物にとっても、人間にとっても素敵な場所であって欲しい。だからこそ、まずは動物たちの居心地の良さを追求して欲しい。それから、動物たちの能力や自然の素晴らしさを伝える場所であって欲しい。
従来の「水族館」という形が正解なのかわからないが、動物の保護機関であり、彼らをもっとよく知るための研究施設であり、子どもたちに正しい形で人間/動物共存の夢を与える場所であるためには、どうすればよいか。その問いが晴れるわけではなかったが、同じように考えている水族館があることを知れただけで、足を運んだ意味があったと感じた。


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